課題は選手同士で改善。イーグルス中村駿太、「どれだけチームのために行動できるか」。
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光を掴もうとしている。
ジャパンラグビーリーグワン1部の横浜キヤノンイーグルスは3月2日、東京・秩父宮ラグビー場で第10節に挑む。
昨季まで2季連続4強以上も、今季は目下3連敗中で12チーム中6位。内容的に支配しているように映ったゲームで窮地に追い込まれたり、黒星を喫したりしていた。
2日前の第9節(三重交通G スポーツの杜 鈴鹿)では、昇格2年目の三重ホンダヒートに17-20で屈した。相次ぎ得点機を逸したとあり、CTBの梶村祐介主将は潔かった。
「本当に言い訳なしの負けゲームだったので。1回、矢印が自分たちに向いた。修正しなくてはいけない点がかなり明確だったので、次の試合へのフォーカスに(チームの視線を)持ってきやすいです」
具体的には、接点の質にこだわりたいとした。献身ぶりと動きの多彩さを貴ぶ従来のスタイルを保ち、かつ、必要な調整を施すつもりだ。
HOの中村駿太もまた、「歩んでいる道は間違いじゃないと100パーセント思える。やり続けるだけ。全員が信じてやり切れるか(が大事)」。チームは2月26日、都内の本拠地で第10節へのトレーニングを始めた。
3月2日に会場の東京・秩父宮ラグビー場へ立つまでの約1週間を、梶村はこう展望する。
「結果が出ない時にやることを変えるんじゃなく、やってきたことにフォーカスする。自分たちが『こういうラグビーで勝つ』と認識することが大事だと、(部員内で)共有した。今週は、変われるチャンスだと思います」
再浮上を目指す。2020年就任の沢木敬介監督が打った手は、あえて動かないことだった。
ヒート戦のレビューを選手だけでおこなわせた。
「選手が本音で話さないといけない。何と言うのか…。(最近では)お互い思うことがあっても正直に言えないようになっているんじゃないか、と。例えば家族だったら、自分の子どもが何かの規律を乱したら『だめなものはだめ』とストレートに言うじゃない? (普段)『ファミリー、ファミリー』と言っておきながら、(最近のイーグルスは)そういうところだけファミリーじゃないんじゃないの? …と、俺は思った。だから、『きょう(第9節の振り返り)は選手同士でやれ』って言ったの」
沢木監督は週に1度、全選手との個人面談を実施する。
それぞれが仲間のプレーや判断について意見を発しているのを聞いているうちに、「じゃあ、それを本人と直接、話せばいいんじゃないの?」と首を傾げた。部員同士での解決へ導いたのはそのためだ。
最近の課題のひとつがラインアウトだったのを踏まえ、指揮官は続ける。
「ラインアウトが獲れないとラグビーが成り立たない。…それをサインチョイスのせいだとか、ああでもない、こうでもないとか言うんだったら、お前らで直接、話せよと」
ラインアウトで球を投げ入れるのはHOの役目だ。
その位置を担う中村は、サインを出して捕球位置を決めるメンバーと再びよく対話した。当日までの7日間も連携を深め、それを精度アップに繋げたいという。
「サイン出しのところをもっと工夫して、一緒に作り上げていければいいなと。(出場するFWの) 8人が同じことを思ってラインアウトに入って行けば、自ずと(自軍ボールの)獲得率は上がる。ただ、いちばん(話し合ったこと)は、マインドセットの部分です。グラウンド内外で、どれだけチームのために行動できるか。そこにもう1回こだわろうよ、と」
今度ぶつかるのは東京サントリーサンゴリアスだ。2シーズン連続で3位決定戦を争った名門で、いまはそれぞれの順位を6、7位とする。上位6傑によるプレーオフ行きをシビアに争う間柄である。
何より沢木、梶村、中村ら複数のスタッフ、プレーヤーはサンゴリアスに在籍歴がある。だから中村は「絶対に勝ちたい相手です。この1~2年で成長した姿を見せたいですし」と言い切る。
ただし沢木は、「どの試合だって大事」。どの対戦カードにも等しく、自軍のスタンダードを示すスタンスで臨みたい。
週ごとに更新されるチームのテーマにも、自分たちと向き合う意思をにじませた。中村が明かす。
「Love for the team! これを今週だけではなく、シーズンが終わるまで出せればいいなと」
移籍2シーズン目の中村は、身長176センチ、体重100キロの30歳。前所属先のほか、明大時代に選ばれた年代別代表でも沢木の指導を受けてきた。
サンゴリアス時代の‛22年、雇用形態を社員からプロに変えている。その時に誓った。
「40歳まで(現役生活を)やりたい」
目標達成のため、コンディション維持に余念がない。今季からは、全体練習がない日は低酸素ジムでのランニング、マシントレーニングで汗を流す。積極的休養で身体のきれを高める。
利用する施設が休館日で使えなかった翌日は、身体が重くなった気がする。そのことからも、新習慣の効果を実感する。
「(低酸素ジムに出向いた翌日からは)本当に、感覚がよくて。(チームスケジュールに沿って)週2で行く時と週1で行く時があります。バイウィーク(リーグの休息週)の練習がない日は、毎日、30分くらい。動かない日を、作らない」
第10節までの期間では2度、その場所へ出かけられるらしい。キックオフが楽しみな80分へ、よい兆しが垣間見える。