コラム 2024.01.11

【コラム】スーッとハード

[ 藤島 大 ]
【コラム】スーッとハード
かわごえ・こうき。花園には高校3年時に出場。副将を務めた(撮影:松本かおり)

 

 このコラムの締め切りは全国大学選手権決勝の数日前に定められた。そこでファイナルに臨む両校の最後のバトルには触れず、ここに2023年度のわが大学ラグビーのヒーローについて書きたい。
 
 天理大学の背番号6。川越功喜。なんと新人だ。天理高校から昨春に入学した。

 タックル。あら、もういっぺん。ずっとタックルを決めている。タックルという青春、もしかしたら人生。よしっ。出てきたぞ。またひとり日本列島のフランカーが。

 帝京大学に挑んだ準決勝の公式記録の身長・体重は「180/87」。ちなみに関西大学リーグ発行の公式プログラム掲載のそれは「178/80」。若き肉体の突然の成長か。はたまた「戦略的表記」か。なんて実はどうでもよい。

 黒衣をまとう6番はサイズを意識させない。変な書き方だが、大きくても小さくても、高かろうが低かろうが、あー、君はこの決戦においていつだって「天理の川越功喜」なのだ。スポーツライター失格の表現なら「凄かった」。相棒の7番、こちらも1年の太安善明も全身これタックル弾のごとし。放送解説しながら、ふたりの姿にしばしば心を奪われた。このコンビはしばらく他校を悩ませる。

 知る人はとっくに知っていた。でも白状すると、いまこの行をキーボードに打っているラグビー解説者は帝京戦を凝視して、はじめて「川越、ここまで力があるのか」と気づいた。高校ジャパンなど代表歴がないのが、とたんに不思議に思えた。これ、セレクターでなく、自分に向けて告げるのですが「節穴か」。

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