【連載】プロクラブのすすめ⑨ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] リーグワン、これからどうなる?
日本ラグビー界初のプロクラブとしてスタートを切った、静岡ブルーレヴズの運営面、経営面の仕掛け、ひいてはリーグワンについて、山谷拓志社長に解説してもらう連載企画。
9回目となる今回は、リーグワンの将来像について語ってもらった。
リーグワンは次の次のシーズン(2024-25シーズン)から「フェーズ2」に突入し、現行のフォーマットや試合数、制度などを見直す。いまがその議論の佳境だ。リーグはこの秋までに、新たなフォーマットなどを発表する方向で動いている。(取材日6月5日)
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――はじめにブルーレヴズのニュースから。元NZ代表で現トンガ代表のチャールズ・ピウタウ選手の加入が発表されました。
これだけ実績のある選手が加わってくれたことを嬉しく思います。リクルートはご縁とタイミング。いまは清水建設でプレーしているお兄さん(シアレ)が、以前ヤマハに在籍していたこともあって、本人もこのチームに親和感を感じてくれていました。ちょうど日本でプレーをしたいというタイミングに当てはまったということもあります。
FWはうちの強みですが、BKに関しては個人技で戦わなければいけないところがどうしても出てくる。そうした時に彼のスキルが必要です。ランスキルやオフロードの技術、キックパスも器用。ユーティリティな選手でもあるので、他の選手たちのケガを含めいろんな状況にも対応できる。
われわれのチームにフィットするだろうと、コーチングスタッフと議論し判断しました。
合流はワールドカップ後の11月を予定しています。ブルーレヴズとしては、プール戦のトンガ代表×南アフリカ代表は熱いカードですね。クワッガ(スミス)との対戦が見られますから。
――今回はオフシーズンに入りましたので、あらためて「リーグの将来像」を山谷さんに解説していただきたいと思っています。
はい。まずはじめに、リーグの将来像を話す上で前提となる、「スポーツとは」というところまで掘り下げて話そうと思います。
スポーツは「競争、競い合い」です。それを見て、楽しむことに価値があるので、そこにお金が発生する。
なので、プロスポーツで一番大事なのは「試合」がおこなわれることです。この試合の価値が高ければ高いほど、見たい人が多くなる。見たい人が多くなれば、チケットがたくさん売れるし、高く売れる。放映権も広告費も高くなります。これがプロスポーツの原理です。
◾️価値の高い試合とは
では、見る側にとって、価値の高い試合かどうかは何で決まるのか。大きく分けて3つで決まると思っています。
ひとつは、「スポーツは競い合い」なので、どっちが勝つかわからない、予定調和がない、ハラハラ、ドキドキする試合であるか。それは中学生の野球でもプロ野球でも、競技レベルに差があっても変わりません。
2つ目は、選手がベストパフォーマンスを出せる状況にあるか。この時の試合が一番面白いはずですよね。これにはレフリングも関わってきます。
3つ目はどういう環境で見るか。どんなスタジアムで、どんな天気で、どんな季節で見るのか、です。
◾️リーグがやるべきこと
これらを踏まえた上で、主催者であるリーグは何をしなければいけないのか、3つの段階に沿って、進めていくことが考えられます。
まずはじめは、当たり前ですが「試合の組み合わせ」を作ること。何チームで、どういうフォーマットで、何試合やるのか。
試合の面白さや選手のコンディションに直結するところです。
その次に求められるのは、試合の価値を高めるための「ルールや制度」を作ることです。
例えばドラフト制度やサラリーキャップ。これは勢力を均衡させて、より面白い試合にするため。
レフリーを育てる仕組みを作ったり、1万5000人以上収容できるスタジアムを確保しなければいけないといったライセンスを設けることも、このルール作りにあたります。
最後は、高まった価値をしっかりお金に変えて、さらなる成長に回していく「循環」を作ること。放映権のまとめ売りが、その一例です。
◾️リーグワンが次にやること
ここまで説明して本題です。これらの内容をリーグワンに照らして、「試合の組み合わせ」から見ていくと、まずそこでつまずいている。
現状のフォーマットは変なわけです。D1は12チームで戦うのに、16試合しかない。ホーム&アウェーでやるなら、最低でも22試合。ある一定のチームとしか2試合を戦わないのは、公平ではありません。
次のフェーズ(2024-25シーズン〜)で変えていくのは、まさにこのスタートラインからです。いまは試合数を増やす方向で議論していて、何試合になるかを詰めている状況。
「ルールや制度」、「循環」については、次のフェーズ以降の話になるでしょう。それだけ未成熟、未発達ということです。