国内 2023.07.04
【連載】プロクラブのすすめ⑨ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] リーグワン、これからどうなる?

【連載】プロクラブのすすめ⑨ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] リーグワン、これからどうなる?

[ 明石尚之 ]

――2つ目にあたる、ライセンスの導入は、フェーズ2では間に合わないということですね。リーグ創設時はそうした事業面での審査が主な対象となってディビジョン分けをしたので、てっきり設けると思っていました。
*東海林一専務理事はラグマガ8月号のインタビューで、フェーズ2ではライセンスを設けないことを明言

 本来はあるべきですが、チームの運営形態が企業チームもあれば、われわれのように独立分社化してるチームもある。不揃いであるのは事実です。そこが揃うまでは、共通のライセンスは作れないのではないのかと思っています。

 ただ、BリーグやJリーグとは違う、もう少しライトなライセンスは作った方がいい。というのも、ライセンスを作るとチームの首を絞めると思われていますが、逆の考え方もできるんです。
 ライセンスがあれば、チームにとっては大義名分ができる。リーグのルールで決まっているので、「これが実現できなければリーグから離脱してしまう」と話せば、行政の皆さんも耳を傾けてくれるし、協力してくれるはずです。納得感が生まれやすいですから。
 自分たちがより高い価値を発揮するために設けられたハードルなので、いかに地域と乗り越えるか、とか、その解決策を考えていくポジティブな手段としてライセンスは見たほうがいいと思います。

――2026-27シーズンから始まる新フォーマット*に向けて、準備を進めるBリーグの各チームの進捗を見ると、その成長速度に驚かされます。
*「新Bリーグ」はこれまでの競技成績による昇降格を廃止する

 B1に入るためには、スタジアム内のVIPルーム設置義務や、今季と来季の平均観客数4000人以上、売り上げ12億円以上など、かなり高いハードル(審査基準)があります。アリーナスポーツで4000人はかなりレベルが高いです。
 ただ、これによってBリーグはこの2年間めちゃくちゃ成長しています。観客動員数は正直、びっくりするくらい増えている。(2020年度まで社長を務めた)茨城ロボッツも1000人くらい増えていました。
 乗り越えなければいけない壁や目標があると、各チーム努力するんです。ファンやスポンサー、行政が、それならば応援しようという動きにもつながる。

 なので、リーグの成長のためにはライセンスは欠かせません。
 リーグはクラブの集合体なので、何をするかはクラブの集まりで決まる。あるチームは儲けたい、一方であるチームはそこまで儲けなくていいという状況では、当然意見はまとまらない。ある方向性を定めるという意味でも、ライセンスはその役割も果たします。

――東海林専務理事は喫緊の課題のひとつとして、「スタジアムの確保」を挙げていました。ブルーレヴズだと、どのくらい苦労しているのでしょうか。

 われわれが使うヤマハスタジアムは、一緒に使うのが同じグループのジュビロ磐田ですし、社長は元ヤマハ(HO)の浜浦(幸光)さんなので、とても協力してくれます。ただ、シーズンが被る時期(2月中旬〜)になると、やはり調整は必要です。例えば、土曜にラグビー、日曜にサッカーだと難しい。芝生の状態はサッカーの方が敏感で、荒れた中でのサッカーは厳しい。
 Jリーグの日程が決まるのは年末で、リーグワンの開幕は12月初旬なので、開幕前には2〜4月の予定は決められない状況です。自分たちを好意的に思ってくれているスタジアムでさえそうしたことが起きているので、他のチームが苦労するのは間違いないでしょう。

 しかも、Jリーグは現在、秋春制(7月末から8月初旬に開幕し、12月末から約1か月の休止期間を挟んで、7月末から8月初旬に閉幕する)への移行を議論しています。そうすると、ラグビーとほとんど被る。リーグ同士で協議しないといけないですし、ラグビー側にもライセンスという”武器”がないと説得ができないと感じます。自治体にも訴えられない。
 そうなることも見据えながら考えていかないと、サッカーの方が優先順位が高いまま、スタジアムの確保はさらに難航する。対等に話し合って、お互いに試合ができる状況を作っていかなければなりません。

――そのほか、山谷さんが変えたい、変えてほしいルールはありますか。

 シーズン中にも移籍ができるようになってほしいですね。今できないのは企業チームの名残りが残っているだけだと思うので(社員選手は移籍しないのが当たり前のため)。
 選手のモビリティ(流動性)が上がれば、年俸が高騰するという課題も出てくるのですが、プレータイムを得られない選手が違うチームに移ったり、他のチームで成長を促すためにレンタル移籍させることもできる。
 われわれは将来的に、選手の育成と選手層を厚くするため、サテライトチーム(2軍=D3に所属することなどを想定)を作ろうと、真剣に考えています。いまでも(ノンメンバー同士の)B戦はありますが、下部リーグであっても、順位争いをして、結果を出さないといけないという中でプレーするということがすごく大事なんです。
 サテライトができれば、ケガ明けの選手や疲労度の高い選手を下で調整させることもできる。試合数が増えるのであれば、これは必要なことだと思っています。

PROFILE
やまや・たかし
1970年6月24日生まれ。東京都出身。日本選手権(ラグビー)で慶大がトヨタ自動車を破る試合を見て慶應高に進学も、アメフトを始める。慶大経済学部卒業後、リクルート入社(シーガルズ入部)。’07年にリンクスポーツエンターテイメント(宇都宮ブレックス運営会社)の代表取締役に就任。’13年にJBL専務理事を務め、’14年には経営難だった茨城ロボッツ・スポーツエンターテイメント(茨城ロボッツ運営会社)の代表取締役社長に就任。再建を託され、’21年にB1リーグ昇格を達成。同年7月、静岡ブルーレヴズ株式会社代表取締役社長に就任

静岡ブルーレヴズ立ち上げの際の記事はこちら(ラグビーマガジン2021年9月号)
リーグワン2022を振り返った記事はこちら(ラグビーマガジン2022年7月号)

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