【ラグリパWest!】 高校ラグビー激戦区・大阪。 同志社香里に注目だ!
同志社香里が充実している。同志社大学の系列校は超高校級BKラインを軸に、激戦区大阪で20年ぶりの花園出場を目指す。
5月の大阪府総体は前年度全国4強の大阪桐蔭を39−19で破り5位。7月の第1回7人制全国大会府予選では決勝に進む。東海大仰星には5−38と敗れたが、仰星は全国ベスト4になった。毎年11月にある全国府予選決勝にはここまで4年連続で進出している。
FBには183センチ、92キロの山口修平(3年)、WTBには184センチ、91キロの江金駿(2年)が立つ。トップリーグ並みの体格を持った2人は他校の脅威。パススキルの高いCTB日浦奨が巨漢を縦に入れる。山口は高校日本代表候補。日浦とともに国体のオール大阪にも選ばれた。江金はU17日本代表だ。
率いるのは清鶴敏也。同大ではSHとして1982年度からの大学3連覇に貢献する。高校日本代表での指揮経験や全国大会シード校選考委員長もつとめる。監督には手応えがある。
「いろいろな局面で慌てへんようになった。生徒の理解度はいつもより高い。何をしたらよいか、の判断ができている。それは結局、1人1人に自信があるからやろうね」
長野・菅平での夏合宿は8月1日から計2回、12日間に及んだ。練習内容はランパスなどを中心にしたフィットネス系を従来の60%程度に落とし、相手をつけた試合形式に重点を置いた。FLの平野幹典主将(3年)は「ぼくたちが目指しているボールを動かすことができました」と笑顔を浮かべる。
ラグビー部は1951年創部。今年64年目を迎える。これまで全国大会には4回出場。最高位は最後となる1994年度の第74回大会だ。4強に進出して準優勝の長崎北陽台に12−18で惜敗した。早慶付属の早大学院、慶応志木とは定期戦を組んでいる。
日本代表は5人を輩出する。直近では神戸製鋼FBで1999年の第4回ワールドカップに出場した平尾剛史(現名 剛、神戸親和女子大学講師)。キャップ11を持つ。
高い戦績もあり、偉大なOBもいる。
男子校だった同志社香里は2000年に男女共学になった。1学年約300人の男女比はおおむね半々。ほぼ全員が同大に進学する。中高一貫に近いシステムのため、高校時の外部入学は約60人。中学校の内申書は10段階の9が必要なため、門は狭い。その上、半数は女子。新入生の入部は毎年3人程度と非常に少ない。現在の部員数は3年生10人、2年生17人、1年生15人の42人である。
それでも公式戦で供用される専用グラウンドは府内では珍しい人工芝。片側のサイドでは中学生が練習する。入学難の反面、部員たちはほぼ6年間をともに過ごすため、気心は知れ、コンビネーションはなめらかだ。
トレーナーは7人制日本代表にも帯同する理学療法士の吉村直心氏。同大、ワールドでFLとしてプレーし、京都市内で整骨院2院を経営する。その助言はトレーニングから食生活にまで及び、実際的でチームには心強い。
京都では同じ系列校で全国V8回を数える同志社が5月の総体決勝に進出。17−31で京都成章に敗れたが、名門復活をアピール。初の全国アベック出場に周囲の期待は高まる。
今秋の全国大会府予選はBシードとして戦う。順調にいけば全国連覇を狙うAシードの仰星と決勝で対戦する。中2から4年連続で全国寸前での敗北を見続けた主将は言う。
「入学前からずっと勝てないことを意識させられてきました。今年こそは全員気持ちを統一させて、なんとしても勝ちたいんです」
BKを機能させるにはFWの力は不可欠。ボールに絡みまくる元サントリーFLのジョージ・スミスを目標にする平野を中心に、前8人が低く、素早く動けるか。5回目の聖地を目指し、ここから濃密な3カ月を送りたい。
【筆者プロフィール】
鎮 勝也(しずめ・かつや) スポーツライター。1966年生まれ。大阪府吹田市出身。6歳から大阪ラグビースクールでラグビーを始める。大阪府立摂津高校、立命館大学を卒業。在阪スポーツ新聞2社で内勤、外勤記者をつとめ、フリーになる。プロ、アマ野球とラグビーを中心に取材。著書に「花園が燃えた日」(論創社)、「伝説の剛速球投手 君は山口高志を見たか」(講談社、14年10月発売予定)がある。