ジェームス・ロウが日本のサンゴリアスで初の実戦。「ここにいることにわくわく」
ルーツは持たない。それでもアイルランドは故郷だ。プロラグビー選手のジェームス・ロウは言い切る。
「妻と10年ほど住んできました。ですから、ホームと呼んでいます」
母国のニュージーランドではチーフスの一員として、国際リーグのスーパーラグビーで活躍。2017年にアイルランドのレンスターに移り、20年からはアイルランド代表としてのキャリアをスタートさせた。
身長188センチ、体重107キロの34歳。端側のWTBを主戦場としながら、左右に動き回ってチャンスメイクをしたり、ピンチを阻んだり。陣地合戦では左足のキックが冴える。緑の11番は、しばらくこの人が手中に収めていた。
23年10月15日。パリ郊外のスタッド・ド・フランスで、ワールドカップフランス大会の準々決勝に挑んだ。相手はオールブラックスことニュージーランド代表である。
アイルランド代表は複層的なアタックで黒い壁へチャンレンジ。24-28。ラグビー王国といわれる出生地の代表チームに挑んだ80分を、長髪を後ろに束ねたロウは「世界でベストな選手と戦えるのはいつだって楽しい」と述懐する。ここでも「ホーム」と添える。
「ニュージーランド代表には、小さいころから一緒にラグビーをしてきた選手もいました。ただ、アイルランドがホームです」
現在は日本にいる。東京サントリーサンゴリアスに入ったばかりだ。旧トップリーグ時代に5度日本一になった名門で、リーグワン初制覇を目指す。
26年10月10日は、千葉県内のフィールドにいた。浦安D-Rocksとの練習試合へ先発。来日後初のプレータイムを得た。
存在感を示した。持ち場とは逆の右サイドへのバッキングアップ、その後の起き上がりと迅速なポジショニング、防御を引き寄せながらのパス、穴場に先回りしてのトライ…。途中交代の末、45-14で勝った。
タッチライン際では、D-Rocksの呼ぶチアガールが音楽に合わせて声をあげていた。トレーニングマッチにあっては非日常的な空間について聞かれ、ロウは「アウェーゲームでは(スタンドから)色んな事を言われるもの。ただ、応援してくれるひとがそこにいるというのはいいことです」と笑った。
「クール。素晴らしいです」
ここから続けるのは、サンゴリアスで戦う価値についてだ。
「それまでと比べると、キャリアの終わりまでの時間が短くなってきていることはわかっています」と切り出し、積み上げた知的財産を新天地で活かしたいと説く。
「日本で(特有の)速いラグビーをしたい思いもあります。ただこれまでに、ニュージーランドからアイランドに行ってラグビーの異なるシステム、知識、定義を学んでいます。試合のなかでの小さな瞬間が大きな結果に繋がることも知りました。そのことで、サントリーに貢献したいです。ここにいることにわくわくしています。キャリアを『遠回り』した感覚があって、ニュージーランド、アイルランドでプロフェッショナルとしてプレーし、今回、サンゴリアスでプレーするチャンスを掴みました。年を重ねるごとに『そこに行きたいか、ラグビーがしたいか』を考えるようになる。日本でも知られたクラブでプレーできることに感謝しています」
8月下旬に来日してから、新しい生活環境にも前向きな印象を抱く。
「食べ物! 日本に来る前からそのうわさは聞いていました。実際にそれを経験すると…。異なるローカルなレストラン、定食屋へ行くたびにおいしいものがでてきます」
好きな料理の名前はもう覚えたのか。
「…トンカツ? そう。寿司、ラーメンも。もともと刺身が好きではありませんでしたが、日本ではおいしいですね」




