サンゴリアスの竹内柊平、今季のプレーオフから作りたい物語
まず切り出したのは、先輩の話題だ。
東京サントリーサンゴリアスの竹内柊平が6月4日、2日後に控えたジャパンラグビーリーグワン1部・プレーオフの3位決定戦を展望する。自身と同じ右PRのスターターが、今季限りで引退する垣永真之介になったのを引き合いに出す。
「やり切るだけ。プライドをぶつけるところです。しかも、念願のカッキーさんとの試合で…」
浦安D-Rocksから移籍初年度にしてレギュラーシーズン全18試合に出場の28歳は、当日、リザーブスタートである。どんなゲームにあってもライバルと競争してスタメンを勝ち取りたいから、今季最後のゲームでそれができないのは残念だ。
もっとも、今季2度目の出場となる34歳には、ともに日本代表に選ばれていた時期からサンゴリアス入りを勧められていた。
時を経て、昨季オフの海外挑戦を断念し、いまいるクラブと正式に契約した。
果たして、旧トップリーグ時代に5度優勝の名門の一員として、初めて国内最高峰の舞台のノックアウトステージに立っている。
今回、浅からぬ縁がある実力者からバトンを引き継ぐのは、得難い経験だと自覚する。
’24年以降にジャパンに定着したと言える身長183センチ、体重115キロの通称「TK」は、自身と同じようによく走り、よく叫ぶ身長180センチ、体重115キロの「カッキーさん」への思いを次戦のストーリーに据える。
「(当日は)あの人が走り切れるところまで行ってくれたらいいし、1分でも、80分でも、あの人の後を引き継ぎたい。ワクワクしています。(3位決定戦は)自分たちの望んだ場所ではないですけど、ストロングフィニッシュして次に繋がるゲームにしたいです」
目指していた日本一は叶わなかった。5月30日、3位決定戦と同会場の東京・秩父宮ラグビー場でプレーオフ準決勝を落とした。
コベルコ神戸スティーラーズに23-69で大敗。「めちゃくちゃ悔しいっすね」と切り出し、試合展開を振り返る。
「(スティーラーズは)めちゃくちゃ強かった。完敗です。うちがやりたかったアタックを、上回られた。この準備じゃ勝てないんだとも、自分たちが思っていたスタンダードに到達していないこともわかりました。(持ち場の)スクラムも、(怪我などで)メンバーが代わった時にいい形で組めたわけではないです。その時、(緊急出場した味方に)密にサポートできたわけでもない。セミファイナルではそういう細かいコミュニケーションも大事になると思うのですが、それがまったくうまくいっていなかった。(空中戦の)ラインアウトでもプレッシャーをかけられた」
手をこまねいていたわけではない。
13点差を追う後半4分だ。自身の突進でペナルティーキックをもらうと、倒れていた地面から球を持って起立。そのまま駆け出した。
反応の遅れた防御を横目に、自陣10メートル線付近20メートルほど進んだ。
ゲーム主将を務めた味方SHで元日本代表の流大から「行っていい」と言われていたのもあり、持ち前の推進力を躊躇なく活かせた。
ところがどうだ。対するFLで、ジャパンでも共闘するティエナン・コストリーに進路を先回りされた。倒され、手元の楕円球に腕を絡まれた。攻守逆転。
すかさず反攻のスティーラーズへサンゴリアスが反則を犯し、16-29だったスコアを8分までに16-36に広げられてしまった。
コストリーの妙技を「終わってからビデオで見たんですけど、うまかった」と称えながら、自身と自軍に厳しい矢印を向ける。
「モメンタム(勢い)を作ろうとしたんですけど、孤立してしまって…。あそこでもっと(倒れずに)時間を作れたら流れが変わった。逆に、完全に神戸に流れが行った。あれがファイナルに行くチームのスタンダードで、あそこで(ボールを)獲られるのが僕たち。そこを真摯に受け止める(べき)」
話をするうちに、サンゴリアスと自らの未来予想図に話題が及ぶ。スティーラーズとともにファイナリストとなったクボタスピアーズ船橋・東京ベイの名を挙げ、こう続けた。
「大きすぎる傷ではありますが、学びにもなりました。『通用したところは通用したよね』じゃなく、個々人で(勝負どころでの動きなどを)振り返り、2年目に入る僕もチームが勝つためにどうするかを皆と話していきたいです。マジで同じ方向を見ないといけない。(サンゴリアスでは)コーチ陣はたくさんプランを用意してくれていて、選手も能力が高い。そこで、阿吽の呼吸ではないですけど…(無形の繋がりが必要)。それができているのは、まさにスティーラーズとスピアーズです」
両軍が立ったままパスを繋ぎ続けられる理由は、各々が自分たちの仕組みと互いの特徴を把握し、かつ、有機的に動いているからだと言いたげである。
「オフロードパスの成功率、ブレイクダウンの緊急性(サポートやスティールの速さ)で、あの2チームが上。来年は、そこに絶対に勝ちたい。そのために何をすべきかを、考える。これから(招集されれば)代表チームなどでたくさんのことを吸収し、それをチームに持ち帰り、もっと強い竹内柊平に、もっと強いサンゴリアスの一部になれたらと思います」
竹内の真骨頂は、壮大な物語を描いて具現化する力にある。
出身の宮崎ラグビースクールで周りの選手よりキャリアで見劣りしながら、全国的に無名と言われる宮崎工高、九州共立大ではグラウンド内外でのトライアルアンドエラーを肥やしに進歩。トライアウトを経て旧トップリーグに参入し、いまに至る。
痛恨のセミファイナルを栄光の序章にしたり、敬愛する年長者との3位決定戦を黄金の思い出にしたりするのが性分のはずだ。




