コラム 2026.04.20

【ラグリパWest】恩師のためにも…。田口煌大 [金沢学院大学/ラグビー部/HO]

[ 鎮 勝也 ]
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【ラグリパWest】恩師のためにも…。田口煌大 [金沢学院大学/ラグビー部/HO]
金沢学院大でHOを任されているのは3年生の田口惺大だ。卒業後はリーグワンでプレーしたい。そのため、ウエイトの目標数値をクリアできるよう、日々練習に没頭する。田口の出身高校は福岡の浮羽究真館。吉瀬晋太郎監督の薫陶を受けた

 高校時代の恩師の素晴らしさを世に知らしめる。その思いがあり、田口煌大はラグビーを続けている。名は「せいだい」と読む。

 田口は石川にある金沢学院大の3年生だ。178センチ、102キロのHO。出身高校は浮羽究真館である。福岡にある県立校だ。

 ラグビー部監督で保健・体育教員の吉瀬晋太郎は3月末で職を辞した。不惑でうきは市の市会議員選挙に打って出る。この高校があり、育った街の繁栄に直接乗り出す。

 吉瀬から言われたことがある。
「せいだい、名を馳せてくれ」
 田口自身が世に出て、認知される存在になる。それは同時に師としての勲章にもなる。3年間の教育の成果を可視化できるからだ。

 忘れられない思い出がある。高2の5月、右ひじを脱臼骨折した。大ケガに医師からは退部を勧告された。吉瀬は尋ねた。
「すぐ、諦めるんか? チャンスはある。待っとけ」
 その秋、吉瀬は田口をメンバーに入れた。教え子を見捨てなかった。

 田口は話す。
「吉瀬先生のようになりたいです。いっぱい学ばせてもらいました」
 一筆で書かれたような細い眼にはアニメのキャラクターのように「いい人」感が漂う。

 田口は吉瀬と同じ保健・体育の教員免許が取れるスポーツ科学部に在籍する。九州から北陸の金沢学院大に飛んだ理由を明かす。
「野村さんが熱心に勧誘してくれました」
 野村倫成(みちなり)。45歳。監督であり、修士号を持つ大学職員でもある。

 田口は進学において第一志望があった。そこから色よい返事はもらえなかった。事情を分かった上で野村はアプローチをかけた。吉瀬とその教え子への評価はゆるぎない。

 吉瀬はもちろん、拾ってくれた野村のためにも名を馳せたい。田口は力を込める。
「リーグワンに挑戦したいです。高校の時は高いレベルは無理だと思っていました」
 勝手に線を引くも、高校の同期だった立石飛鳥や手嶋風碧(ふあ)に触発される。立石は天理大のPR、手嶋は流経大のFBだ。

 田口は心境の変化に合わせて、お手本にするHOも具体的になってきた。
「佐藤健次さんです。性格もいい、って聞いています」
 埼玉WK所属の佐藤は3学年上である。日本代表キャップは8を持つ。

 田口の属する金沢学院大は東海学生のAリーグに属する。大学選手権に出場した朝日大や中京大には及ばないが、直近3年は3位を堅持する。この年末年始は76回全国地区対抗に初出場した。地区対抗は大学選手権の下に位置するセカンドの全国大会である。

 金沢学院大は4強戦で優勝する山梨学院大に10-48で敗れたが、HOで先発した田口は2試合連続でトライを決めた。初戦は東北大を47-7と降している。田口はスコアへの道筋を五感で感じ取れる。

 金沢学院大で試合に出続け、さらに上のステージにゆくための個人練習も怠りない。
「時間があれば筋トレをしています」
 ウエイトができるトレーニングセンターにこもる。最高はベンチプレス150キロ、スクワットは240キロを記録している。

 田口はこの夏までに達成すべき、すべてのトレーニング数値をすでに上回っている。それはまた努力のたまものだ。持久力を測定するブロンコは5分15秒。大学生のフロントローとしては上々のタイムである。

 北島孟(たけし)は例を挙げる。
「ボーデン・バレットは4分30秒と言われています」
 バレットはSO。過去、東京SGとトヨタVに在籍した。ニュージーランド代表キャップは144を誇る。北島は金沢学院大のストレングスコーチである。31歳だ。

 北島は同志社大の大学院で修士号を取り、田口の在籍するスポーツ科学部の助教になった。専門はトレーニング科学だ。
「彼は授業ですら、競技力向上につなげられないか、と探る姿勢があります」
 その向上心を高く評価している。

 そのラグビーを田口が始めたのは小3。福岡のブランビーヤングラガーズである。
「最初はイヤイヤでした。2か月くらいして、トライを獲れて楽しくなりました」
 父の知人の導きでチームに入った。

 浮羽究真館への進学は、吉瀬やチームの広報宣伝的な担当をしていた佐々木隆太郎の熱に引かれた。3年間、5時前に起きて、筑紫野市の自宅を出る。JRを乗り継ぎ、7時からうきは市の学校で始まる朝練習に通った。

 県大会の最高は8強だったが、その練習や試合を通して人間的な成長がある。
「両親には感謝しかありません」
 母は先に起きて、弁当や捕食を作り、夜遅く帰宅しても、温かい料理を出してくれた。父は最寄り駅まで車で送迎をしてくれた。

 今は大学近くのアパートに暮らすため、両親の直接的なサポートのありがたみが余計にわかる。その金沢での生活は悪くない。
「寒いけど、住みやすいです」
日本海の海鮮に目を開かれる。
「特にのどぐろはここで初めて食べました。脂が乗っていて、美味しいです」
 のどぐろの正式名称はアカムツである。

 その金沢での生活は4月で3年目。ラグビーにおける今年の個人的な目標を挙げる。
「東海リーグのベストフィフティーンです」
 選ばれれば、最終的な目標であるリーグワンは視界に見えてくる。

 金沢学院大のOBとしてリーグワンに在籍するのはひとりだけ。ディビジョン3(三部)のLR福岡に所属するPRの野田麟太郎である。田口より5学年上だ。

 田口は野田に続きたい。ラグビーが上達すれば、チームの最終目標である「大学選手権出場」を引き寄せることになる。北陸の大学として初の快挙を実現させるためにも、まず東海を制せねばならない。

 それらはすべて吉瀬への恩返しにもなる。

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