D-Rocksの武内慎、「特別な才能はない」としながら示すプライド。
隙を見せてはいけないと実感した。
ジャパンラグビーリーグワンで1部昇格2年目の浦安D-Rocksは、2月28日、第10節でコベルコ神戸スティーラーズに大敗した。19-78。局所的に激しさやしぶとさを示しながら、こぼれ球の処理や攻守逆転後の反応でやや後手を踏むうち大差をつけられた。
今季好調の向こうが9勝目を飾る一方、自軍は6連敗で通算7敗目。
明朗に振り返るのは武内慎だ。
「いいところもありましたけど、トータルすると不甲斐ない結果になってしまった。歯車がかみ合うか、かみ合わないかのところでなかなかうまくいかない。それは、自分たちがもっとハードワークしないと(よいほうへ)転がってこないものだと思っています。至らないところが、まだまだあるなと」
この日LOで先発フル出場の25歳は、このほど5連敗もただただ後ろ向きでいるだけではない。
元イングランド代表でかつてアイルランドのマンスターを率いたグラハム・ラウンツリー新ヘッドコーチのもと、確たる土台を作れているからだ。
プレシーズンからタフに追い込んだ。シーズン中も毎週火曜は「テストマッチチュースデー」と銘打ち高強度のセッションを重ね、走行距離の数値が公式戦並みとなる人も出るという。
「しんどいけど、相手より走れていて、それが強みになっている。…何とも、言えないです!」と笑い、こう続ける。
「ウィッグ(ラウンツリー)はシンプルに、基礎的なことをやり続けようと言ってくれています。それを全員が信頼している。いまは我慢の時ですが、ウィッグへは100パーセントの信頼を置いています」
開幕からの4戦で3勝。レギュラーシーズンの勝利数は、入替戦に出た前年度のそれと並んだ。
「フィットネスを長いこと積み上げてきて、最後の20分で戦う体力にめちゃくちゃ自信があります。ウィッグ(ラウンツリー)が『ラストクォーターチーム』と言うくらい。ただ、そこまでの間に拮抗したゲームを作っていけるか(が肝)。勝っていた試合もラスト20分までなかなかどうなるかわからないような展開にできていました。このブロック(連敗中)は、なかなかそれができなかった。(状況を変えるには)いかに泥臭く飛び込んでいくか、ビッグゲインされた時に他(の選手)が(自陣に)帰ってこられるかです」
古今東西。負けが込むと選手の心中に他責思考が芽生えがちだが、いまのD-Rocksであれば結束は保たれるはずだと武内は言う。
「ウィッグ、藤村琉士さん(HOで主将)、田村煕(SOで攻撃リーダー)から『目の前の1試合を戦おう』と口を酸っぱくして言われている。一体感を持ってやれています」
大阪府出身。小学2年でラグビーを始めた。少年時代は、好きなドラマがあった曜日以外は9時までに就寝。競技者だった父の方針に倣ったためで、そのおかげもあってか身体が大きくなった。現在は身長191センチ、体重110キロだ。
島根の石見智翠館高へ越境入学し、2年時から2季連続で高校日本代表となった。恵まれたサイズのほか身体能力と器用さを長所にしたが、明大を経て2023年に入ったD-Rocksでは地を這う泥臭さが際立つ。
刺さる。起き上がる。後方にある球の争奪戦へ駆けつける。接点に指をかける。
ボスのリクエストと重なる。タフであることだ。
「メンバーに選んでいただいているのは、運動量と、泥臭いことをやり続けることがあるからです。僕、特別な才能はないので」
NTTグループの再編で’22年にできたばかりのクラブは、発足以来、毎年ヘッドコーチを代えている。その間、ずっとアシスタントコーチを務めてきた元日本代表の栗原徹は、武内の黒子に徹する様に目を細める。一線級の現場で揉まれ、自身の生きる道を掴み取りつつある様子が嬉しいという。
スティーラーズ戦後は休息週を過ごし、3月15日には愛知・パロマ瑞穂ラグビー場でトヨタヴェルブリッツとぶつかる。高い位置の腰を地に沈めて踏ん張る武内は、「勝ちに貢献できるよう、頑張っていかないと」と勇ましい。



