期待の若手が憧れる存在。スピアーズ・末永健雄が「サイズ」論に見解。
思わぬ形で光が当たった。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイの末永健雄は、今年からチームに入った山村亮アシスタントコーチと声が似ているのではと囁かれた。
クラブが注力するSNSコンテンツ内で、どちらかの発言した録音データを他のメンバーに聞かせ、話者が誰なのかを当て合うクイズ特集が組まれた。当の末永の所感は。
「誰が言い出したかわからないんですけど。…似てましたか?」
新コーチが固いパックのスクラムを教える一方、31歳の強靭なFLは相変わらずのハードさ、シャープさをアピールする。
12月20日、国内リーグワン1部の第2節で7番をつけた。前半10、13分頃に続けて接点でのターンオーバーを決めた。
心がけたのは「相手とのレースに勝つ」。対するリコーブラックラムズ東京側の援護役よりも速く密集へ潜り込む意識で、ボールをもぎ取った。
1人の走者を2人で狙撃するチームの防御システムの延長で、持ち前の嗅覚と瞬発力を活かす。
「基本的には(1人の走者に)2人でディフェンスを。(2人目の場合は)球出しを遅らせるように」
後半19分で交替した。50-28で開幕2連勝を飾った。相手より11も多い15の反則(フリーキックを除く)があったため「自分たちで自分たちを苦しめた。規律、コミュニケーション…。試合の中で、もっと早く修正しないと」と反省も、いまの組織の充実ぶりを感じてもいた。
「練習の時期から激しくいい準備ができ、(秋までチームを離れていた)代表選手が入ってきて、少しずついい感じにビルドアップできています」
身長178センチ、体重98キロ。一線級のFW第3列にあっては大柄ではないものの、世界中から来日してきた大男たちに刺さり、絡み、なぎ倒す。
選手の国際化、大型化の進むリーグワンで、それも2メートル級の戦士を複数擁するスピアーズにあって、昨季はプレーオフを含む全21試合中欠場は1回のみ。いまや若きプロ志望者のロールモデルとなっている。
佐藤椋介。関東大学リーグ戦1部に加盟する流経大で2年にして主力のFLとなったこの人は、身長177センチ、体重98キロ。自身と似た体型でリーグワンを沸かせる末永に憧れる。
本人に会えたのは今年10月下旬だ。学内のスポーツ健康科学部で履修した「プレビジネスプログラム」というクラスで、憧れのスポーツ選手にインタビューする課題があった。担当教員がスピアーズの通訳経験者だった縁から、対面が叶った。千葉県内にあるスピアーズのクラブハウスで話を聞いた。
「ワークレート(仕事量)の上げ方、ウェートの数値、試合中のタックルの数、体調管理の仕方…。色々なことを聞きました」
ちなみに「ワークレート」を高める秘訣は、「自分の仕事だけに集中し、目の前の敵にタックルし続ける(意識を持つこと)」のよう。筋肉を作るためのたんぱく質は、例えば「肉と魚」といったように一度に複数の種類を摂るのがよさそうだと学んだ。
目標とする人がいかにしてハイパフォーマンスを維持しているのかを知り、もともと抱いていたリーグワン挑戦への思いをさらに膨らませた。
「プロの後(現役引退後)を見据え、教職の授業も取っています」
若者の眼差しを、当の末永はどう受け取っているのだろうか。
「(末永と)似たような学生が目標にしてくれているんだったら、嬉しい。『(身体の大きさに関係なく)上でやれるんだぞ』と勇気がわくプレーを見せられたら」
…と、語る前段には、こう切り出していた。
「僕は、あまり(サイズについては)気にしていないですけど」
そうだ。もう、この業界で貴ばれる「小柄な日本人選手の矜持」のような物語に己を重ねるのを、とっくにやめている。
「そうですね。そこは、気にしだすときりがない。でかいやつはなんぼでもいるので」
3季ぶりの優勝を目指すクラブの主軸として、渋い声色で展望する。
「試合に出続ける。一貫性を保って、相手からしたら嫌なプレーヤーだと思われるように、ブレイクダウン(接点)でしつこく」
27日は東京・秩父宮ラグビー場で第3節に臨む。東京サントリーサンゴリアスとの全勝対決だ。向こうの得意な連続フェーズを断つことで、ゲームに絶大のインパクトを残したい。




