会心の一撃。帝京大のカイサ・ダウナカマカマが誇るタックル特訓。
帝京大ラグビー部は、わずか5点リードで後半ロスタイムに入った。
対する早大は、向こう側の22メートルエリアから攻め上がってくる。スタンドから声援がわく。
スペースでパスを繋ぐ早大の前には、帝京大のカバー役が懸命に回る。
そのうちのひとりが、強烈かつ決定的なタックルを放った。
カイサ・ダウナカマカマだ。
走者を枠外に弾き出し、まもなく白星に喜んだ。
「(いい)フィニッシュを。その目標を持っている」
11月2日、東京・秩父宮ラグビー場。加盟する関東大学対抗戦AのビッグマッチにNO8で先発し、筋肉のぶつかり合う鈍い音を鳴らし続けた。
前半24分には、自陣10メートル線付近におけるラインアウトからの1次防御で相手司令塔の服部亮太の手元へクラッシュ。落球を誘った。
ハードな防御の秘訣を聞かれる。
「ディフェンスは、毎朝、ずっとやっている」
東京都日野市内のレスリング場でおこなわれる、タックル強化セッションのことだ。接戦を勝ち切る心構え、技術をものにする。
「低さが一番、大事。あとはバインドなどの細かいところもしっかり」
身長184センチ、体重115キロの3年生。大分東明高出身のフィジアンは、大学選手権4連覇中のクラブで長らく主戦級を張る。
同級生でパワフルな右PRの森山飛翔は、この人に「刺激を受けています」。自身は早大戦で見事なランを披露しながら、「僕、毎日、タックルの練習をしているのに、きょうはタックルが全然よくなかった」。取材エリアでは、自身の守りについて反省した。
かつ、ちょうど隣で記者と話していたフィジアンに視線を向ける。
「彼がすごいいいタックルをしていた。…カイサ君が輝いたら、面白くない。やっぱ、僕が輝いたほうが面白いと思うので、頑張っていきます」
朗らかに軽口を叩けるほど仲がよいわけだ。
昨年、日本代表となった3年生の大器は、ダウナカマカマら自軍の海外出身者についてかくも語る。
「留学生だから強いというより、ちゃんと努力しているから強いので。いつも留学生という枠で、そいつのポテンシャルだけを評価されがちですけど、こいつらはしっかりやってきている。それを知っているからこそ、負けられないな…って」
友と切磋琢磨。今季しばらく戦列を離れていたダウナカマカマだが、その詳細に関して本人は「覚えてないです」と微笑むのみだ。
「もう大丈夫。やるしかない」
10月26日、栃木・足利ガスグラウンドでの復帰戦では、筑波大に14-18と敗れるも「次の早大戦へ」と切り替えて濃密な準備ができた。おかげでよい守備ができた。
対抗戦の残り2試合、12月からの参戦が見込まれる大学選手権でフル回転するつもりだ。



