日本代表 2025.10.07

日本代表、始動。タフなキャンペーンに向け、セットプレーを突き詰める。

[ 向 風見也 ]
日本代表、始動。タフなキャンペーンに向け、セットプレーを突き詰める。
取材に応えるPR竹内柊平(筆者撮影)

 ラグビー日本代表が秋のスタートラインを切った。

 10月6日からの4日間はポジション別で動く。FWの多くはまず大分で始動し、初日は夕方の練習を公開した。地元メディアらを前に、宮崎県出身の竹内柊平が微笑む。

「別府市はラグビーを温かく迎え入れてくれるし、設備がよい。何より、リカバリーの温泉が最高です! 大分でキャンプがあることにわくわくしていました」

 まずはS&Cセッションとブレイクダウンスキルを交互におこない、ラインアウトとモールの技巧も突き詰めた。特にラインアウトの時間には、担当の伊藤鐘史アシスタントコーチが趣向を凝らす。

 ゴールポストを境に攻撃側、防御側がわかれ、前者が投げ入れられたボールを捕ってバーの上から逆の芝へ落とす。

 伊藤が、現役選手として関わっていた2015年までの日本代表でしていた練習をアレンジしておこなっているようだ。

「ファン要素があり、ラインアウトのためのいい準備になる(取り組み)」

 身につけたいのは「Iフレーム」と「ハグフィニッシュ」。上空にいる間も、着地の瞬間でも、ジャンパーとリフターがぴったりと密着するのを目指す。最大限の高さを出し、着地後にスムーズにモールへ移行したい。

 そのモールは、9月までのパシフィック・ネーションズ(PNC)で複数のスコアを生んだ。組みこむ瞬間の「パンチ」が効いたからだと伊藤は説く。

「パンチ」とは、リフターがジャンパーと繋がったまま相手側へ身体を差し込む動きだ。攻防の境界線を先んじて制する。

 今度のトレーニングでは、この「パンチ」を決めてからの流れをゆっくりとした動きで確認。前衛が進行方向へ下半身を軸回転させるさまを「ヒップロール」と、その動きに後衛がついてゆく様子を「フェイスシフト」と伝えていた。
 いずれも、メンバーが一丸となって前に出るための要素である。説明すれば冗長になりがちな基本や原理原則が、ワンフレーズに集約されているのも肝だ。

「キーワードってすごく大事。(設定すれば)試合中も簡単に(必要項目を)伝達できます」

PNCで好ラン連発の竹内は、最前列で組むスクラムを含めたセットプレーについて述べた。

「僕たちが世界で戦ううえで強みにしないといけない部分です。それを突き詰めるのが今回の(ポジション別)合宿です。FWが勝つか負けるかで勝敗が分かれている。行くしかないという感じです」

 チームは10日以降に宮崎に集まり、12日には予備軍のJAPAN XVも迎えて鍛錬に励む。約9年ぶりに発足して2季目のエディー・ジョーンズヘッドコーチ体制は、この秋のツアーで強豪国とのテストマッチを控える。

 25日に東京・国立競技場で世界ランク7位のオーストラリア代表とぶつかるのを皮切りに、欧州へ渡って同1位でワールドカップ2連覇中の南アフリカ代表、同3位のアイルランド代表、さらには、同13位の日本代表にとって接近した関係にある12位のウェールズ代表、11位のジョージア代表と順に戦う。

 竹内は「めっちゃ楽しみです。めっちゃ緊張しますけど!」。昨秋はニュージーランド代表などに大敗。当時のキャンペーンにも参加した経験を踏まえ、タフな旅路でへこたれぬためにもいまを大事に過ごしたいという。

「南アフリカ代表に胸を借りるという選手がひとりでもいたら勝てないですし、そう思わないようなチーム作りはできている自信があります。(ツアーを乗り切るには組織内の)コネクションが一番。ここまで築き上げたものをゼロにするんじゃなく、この合宿でぐっと(引き)上げる」

 メディアに応じていると、別の選手がどんどん帰りのバスに乗り込んでゆく。「速く!」と急かされ、「待って! 待て! 裏切るなよ!」と叫び返した。

PICK UP