【ラグリパ×リーグワン共同企画】わずか数メートル先から聞こえた温かい声援。それにお返しとして見せた自らの強み。

ナンバーエイトのポジションで加入後公認試合公式戦初となる先発出場を果たした日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)の高城喜一が、上昇中の勢いを日野市のファンの前で披露した。
「自分のアピールできるところはコンタクトプレー。外国人選手にも負けないような体の強さをアピールできればいい。ボールキャリーやタックルでの激しいプレーでチームを勢いづけたい」と、高城は試合開始直後から気持ちのこもったプレーを連発。
「僕の役割はフッカーに良い状態でボールを渡すことで、頭をホットにし過ぎずに落ち着いてその役割を果たせた。チームにリズムをもたらすことができた」
前半は14対0。清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)を完封した。守備だけでなく、攻撃面での活躍も見逃せない。
「フォワードコーチのダズさん(ダリル・マクナマラコーチ)とは、僕の役割をまずは明確にして、低さを意識して押し込んでいこうと話し合っていた。そのとおりにプレーできたし、それをトライにつなげることができた」。高城は前半の二つのトライに絡んだ。
高城らしいプレーが光ったのが、後半10分に日野RDがトライを挙げた一連のシーンだ。左サイドでモールを押し込んで相手の守りを崩し、最終的にはウイングの小島昴がトライエリアに飛び込んだプレーである。
「左サイドのモールから攻め込む中で、僕自身はリッパーという立ち位置でボールを押し込む役割でした。自分が直接トライを奪ってはいませんが、間接的にトライに関われた良い形だった」と、このプレーには高城自身も納得の表情を見せた。
法政大学在学時にはセンターでもプレーしていたが、日野RD入団時にチームとの話し合いで「フォワード1本で行く」と決意。そこからはフォワードで試合に出るため、徹底的にトレーニングを積み重ねてきた。
「大学時代と比べると一番大きく変わったのは体重。8キロアップして、ウェイトトレーニングの数値も伸びている。フィットネスが落ちがちになるところを木村耕S&Cコーチに厳しく指導してもらい、しっかりキープすることができている」。今季はフランカーで登録されている高城だが、この日担ったナンバーエイトでもロックのポジションでも、チャンスがあればどのポジションでも戦える準備はできている。
「それぞれのポジションでは、サインプレーでかなり違いがあると思っている。ロックでは、ラインアウトをしっかり遂行すること。ナンバーエイトやフランカーだとフィールドでの最初のコンタクトプレーが一番重要になる。複数のポジションをプレーできたほうがコーチ陣からの評価もされやすいと思うので、もっともっと自分を高めて、それぞれの役割を明確にしてシーズンに挑みたい」
久しぶりとなる日野自動車総合グラウンドでの試合はタッチラインから数mのところに観戦スタンドが設けられた。ファンにとっては、選手の息遣いすら聞こえる近さ。「ファンのみなさんの温かい声が聞こえてきて、それがとても自分の力になったと思う。コンタクトプレーは絶対に通用すると思っていたので、そこを見ていただけたのは本当にうれしかった」と高城は語る。
苑田右二ヘッドコーチもこの日の高城のプレーについて「ポテンシャルの高い選手だが、スターターでプレーして非常にいい学びをできたと思う。こういう経験を積んでさらに成長してもらえれば」と評価。フォワードのユーティリティープレーヤーとして、高城喜一がしっかりその存在感をアピールした。
(関谷智紀)