![一般の星。今村颯汰&東島和哉[筑波大/CTB]](https://rugby-rp.com/wp-content/uploads/2025/09/IMG_2807.jpg)
一般の星。今村颯汰&東島和哉[筑波大/CTB]

3年生の今村もまた、昨季までの主戦場はジュニアだった。
ほとんどの試合で東島とCTBコンビを組んだ。
「ガーシーさんはディフェンスがエゲツないので、僕のところで取り逃してもガーシーさんのところまで追い込めばどうにかしてくれる。隣にいてくれるだけで安心感があります」
先の明大戦も、東島と同じく初めて踏んだ対抗戦の舞台だった。
堅いエリアに何度も身を投じる姿を見てか、試合を中継したJ SPORTSの矢野武アナウンサーから「元気な今村」と連呼された。
「テレビで見ていた人たちが目の前にいました。めちゃくちゃ緊張しましたが、後悔しないように自分がやれることを精一杯やろうと」
福岡高校出身。はじめは高校で競技人生を閉じる予定だった。
しかし、最終学年で膝の前十字靭帯を断裂。引退試合となる花園予選にも出られなかった。
不完全燃焼だった。地元の大学としていた志望校を変更。福高OBで前主将の中野真太郎に憧れ、筑波大を目指した。
ただ、一般入試を通過した後は「楽しみよりも不安の方が大きかった」。同期は11人(選手)と前後の学年と比べてうんと少ないから、相対的に推薦組のメンバーが多かった。
「一般組のBKにも水澤(雄太)や廣瀬(研太朗/ともに茗溪学園)など花園を経験したメンバーがいて、そんな人たちと同じレベルでラグビーができるのかと」
1年の夏にかけてSO、FBからインサイドCTBにコンバートしてからも、他人と比べて悩む日々を送った。「自分がどういうプレーをすればいいか、なかなか見出せなかった」と振り返る。
転機となったのは夏の菅平合宿。ケガ人が相次いだことで、繰り上がりでBチームの試合に出られた。そこで覚悟を決めた。
「それまでは周りが上手なので、自分もうまくやろうと考え過ぎていました。でも、筑波の12番は最初にキャリーするオプションが多いので、とにかくコンタクトしようと。その仕事を果たそうと思えてからは、やることがクリアになりました」
しかし169センチと小柄なうえ、入学当初は70キロとCTBで戦うにはあまりにも軽かった。Cチームの練習中でさえ、コンタクト局面で差し込まれるシーンがあった。
「このままだと何もできずに終わると思いました。とにかく食事量を増やして、ウエートもして…。1年の冬にはジムにも入会して回数を増やしました」
その甲斐もあって、「まだまだ足りない」としながら78キロまでは増量できた。
加えてボールキャリーのスキルも磨いた。
「正面でコンタクト勝負をしても負けてしまうので、最後の最後まで相手を見ました。常にパスのオプションを持ちながら相手が迷うように。潜って、潜って、低く、低くコンタクトしました」
謙虚な姿勢は東島と似る。その意味でCTBはハマり役なのだろう。
「人に迷惑をかけたくないという感覚はシンパシーを感じます。1年生の頃は上級生に迷惑をかけないように、無理せずプレーしようとずっと考えていました。負けず嫌いなので試合には勝ちたい。でも、チームとして勝てればよくて、自分が活躍したいとは思いません。自分は少しでも前進してクイックにボールを出せれば、他のメンバーが絶対にやってくれますから」
堅実な二人がいるから、外側のランナーが引き立つ。
一般の星は、渋く輝く。
