国内 2025.09.24

現役ジャパンに師事。グラウンド外でも生き生き。筑波大・茨木海斗の充実。

[ 向 風見也 ]
現役ジャパンに師事。グラウンド外でも生き生き。筑波大・茨木海斗の充実。
筑波大2年PR茨木海斗(撮影:福島宏治)

 自分にぴったりな場所を選んだ。

 茨木海斗が筑波大ラグビー部に進んだのは昨年のこと。2歳上の兄でFLの颯を追って入部した。

「兄と同じ道を追いかけてきたので。それと…」

 自身が強化に貢献できると感じたのも、チョイスした理由のひとつだ。

 身長182センチ、体重113キロとサイズに恵まれた右PRは、もともと全国屈指の東福岡高に在籍していた。大学日本一になったことのない進学先で、特に持ち場のスクラムで違いをもたらしたいと感じた。

「…強いチームを倒すのが、わくわくするなと思って」

 道のりは簡単ではなった。すぐにレギュラーになったが、加盟する関東大学対抗戦Aの上位校を相手に苦しめられたのだ。

 恩人に助けられた。

 筑波大では、日本代表の右PRとして目下売り出し中の竹内柊平が客員コーチを務める。昨秋は、海外遠征から帰国した翌日にも練習に訪れていた。その「TK」の愛称で知られる元気印のコーチングで、茨木は正しい姿勢とマインドセットを体得してゆく。

「目標としている選手。無茶苦茶タフです。自分がダメだと思ったら、竹内さんに相談します。どの選手にも、同じ熱量で接してくれる。僕、最初は本当にくそみたいなスクラムを組んでいたんですけど、それに対してもつきっきりで教えてくれて、自分以外の選手にも…。皆、竹内さんの組み方になっています!」

 茨木の場合、姿勢の取り合いの際に少し「つんのめる」形になりがちだったのを、低い構えで自立できるよう正してもらったようだ。

「身体の使い方から、教えてくれました。しかも、簡単には教えてくれないんです。『考えてみろ』と言われ、他の3番(右PR)と話し合って、『こうですか?』『違う』みたいな感じで」

 2年目の対抗戦初陣では、前年度の順位で3つ上回る3位の明大を28-24で下した。途中で壊れたスパイクを新品に履き替えるというアクシデントに見舞われながら、白星発進を決めた。

「ずっと使っているやつでボロボロになっていたので、『危ないかな』と思って準備をしていた。よかったです!」

 おりしも竹内は渡米中で、パシフィック・ネーションズカップのトンガ代表戦へ出るタイミングだった。それでも茨木は遠方から、明大とのバトルについて「楽しみにしているから」「筑波大のスクラムを日本に知らしめよう」とエールをもらっていた。

 試合が終われば、「明大さんは夏合宿(の練習試合)で対戦した頃よりも何倍も強くて。僕らもやってきたことは出せましたけど、それだけではなく勝たないといけない。まだまだ」。対面に立つHOと左PRの間に頭を差し込み、突き上げるようにプッシュすることもあったが、「それは柊平さんに教わっているスクラムじゃない」。改善を誓う。

 貪欲なのは、グラウンド外の活動でも然りだ。地元の子どもたちへのラグビークリニックには「自分も竹内さんと同じようにコーチングに興味があるので」と積極的に加わり、部の公式SNSの運用にも関わる。ライバル校と違って寮がないなか、主体性を磨く。

「僕たちは、地域の応援がなければ成り立たない。コーチや監督に言われるからではなく、自分たちで決めて自分たちで積極的に活動に参加します」

 今季から、大学のラグビー部のジャージーにスポンサーロゴをつけられるようになった。筑波大が選んだのは一誠商事。茨城県内の不動産業者である。自分たちに地縁のある企業とともに戦いたい意向が、クラブにはある。体育学群所属の背番号3はこうも頷く。

「僕たちは一人暮らしをしている。一誠商事さんのもとで部屋を借りている選手も多いです。身近なスポンサーさんの支えで戦うのだから、頑張らなきゃいけない」

 これからも、自分にぴったりの場所で輝く。

 今季の目標は勇ましく、「スクラムで湧かせる。これまで筑波大のスクラムの場面になると『…うわ、スクラムか』となっていたのを、『よっしゃ、スクラムだ!』にする」。1本、1本の積み重ねで、人の抱く印象を変える。 

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