ワールドカップ 2025.09.20

【女子W杯】いざ、運命の大一番へ。フランスが準決勝イングランド戦のメンバーを発表

[ 福本美由紀 ]
【女子W杯】いざ、運命の大一番へ。フランスが準決勝イングランド戦のメンバーを発表
アイルランドとの死闘を制し準々決勝を勝ち上がったフランス。厳しい状況だが、準決勝でもこの喜びを味わいたい(Photo/Getty Images)



 女子ラグビーワールドカップ(W杯)の準々決勝、フランス対アイルランドの一戦は、激しい雨が降り、選手のジャージーが風ではためくほどの強風が吹き荒れるエクセターで行われた。

 コイントスで風下に立ったフランスは、アイルランドのキックオフからいきなり試練を迎える。風に流されたボールを処理しきれず、トライゾーンでグラウンディングしてしまい、アイルランドに5mスクラムを与えてしまう。その後のトライで、試合開始わずか6分で先制点を許した(0-5)。

 風の影響でキックは押し戻され、パスをすれば落としてしまう。フランスは前半の約半分を自陣22mライン内でのディフェンスに費やした。前半のアイルランドのポゼッションは80%、テリトリーは70%と、圧倒的に支配される。タックル数はアイルランドの105本に対し、フランスは273本。さらにイエローカードを受け、14人で守る時間帯もあった。

 40分、モールで20m押し込まれゴールまで5mというところで崩して止めるしかなかった。共同キャプテンのLOマナエ・フェレウがイエローカードで一時退場し、再び14人になった。それでもレ・ブルーの戦士たちは猛烈に守り抜いた。

 43分、再びペナルティからアイルランドがゴールを目指す。35フェーズ続いた。ボールが落ちた。FLレア・シャンポンが素早く反応してボールを確保。SHポリーヌ・ブルドン=サンシュスからボールを受け取ったFBモルガンヌ・ブルジョワがスタンドに蹴り出す。この状況で前半の失点を13点に抑えられたのは、彼女たちの意地と団結力とディフェンスの賜物だ。

 ハーフタイム、ダヴィッド・オルティス ヘッドコーチは選手たちを鼓舞し、後半は追い風になることを伝え、アグレッシブなディフェンスと規律を保つことを指示した。

 後半、ブルジョワのPGとNO8シャルロット・エスクデロのトライで少しずつ点差を縮めていく。そして試合を決定づけたのは、HOマノン・ビゴによる見事なスティールだった。

 交代で入ったばかりのビゴがアイルランドのボールを奪い返すと、ボールはWTBジョアンナ・グリゼに渡った。グリゼは70mを走り抜き、3人のディフェンスを振り切ってトライ。ついに逆転に成功した(15-13)。その後、PGでさらに3点を追加し、18-13とリードを広げた。

 試合終了間際、アイルランドは猛攻を仕掛ける。場内はアイルランドコール一色になる。フランスゴールまであと5m、アイルランドがラインアウトのボールを投げ入れる。高くジャンプしたマナエ・フェレウがボールを指先で弾いた。

 ボールは地面に転がりフランスの選手に入った。レフリーが笛を吹いた。アクションが止まる。さらに長い笛が吹かれた。フランスの選手はすぐに状況を把握できない。レフリーの方を二度見してから歓声をあげた。青いジャージーが抱き合って喜ぶ。涙を浮かべている選手もいる。一方、グリーンのジャージーは呆然と立ち尽くしている。地面に崩れ落ちている姿も見られた。

 まさに薄氷を踏む勝利を収めたフランスだが、準決勝進出に向けて不安が残る。この試合でフランスは18ものペナルティをおかしており、特に強みであったはずのスクラムで6つも取られた。モールのディフェンスも相変わらずの弱点として露呈した。

 準決勝で対戦するイングランドは、ペナルティからのラインアウトモールでトライを奪うのが得意だ。大会前のイングランドとの準備試合で奪われた6トライのうち、4本がそうだった。意地だけでは太刀打ちできない。対応策は準備できているのだろうか。ハンドリングエラー、ブレイクダウンのサポートの遅れも目についた。

 さらに、悪い知らせがフランスを襲った。試合後、2人の選手のプレーが独立危険行為審査委員会にかけられた。FLアクセル・ベルトゥミューが密集内でアイルランドのFLイーファ・ウェイファーの腕に噛み付いていたことが確認された。そして共同キャプテンのLOマナエ・フェレウは、アイルランドSHエイヴィーン・ライリーへの危険なタックルが指摘された。

 ベルトゥミューは12試合、フェレウは3試合の出場停止を受け(それぞれ9試合と2試合に軽減)、もうW杯に参加することはできない。特にキャプテンであるフェレウは、さらに高いステージへ挑むにあたって失いたくない存在だ。

 この危機的な状況を受け、フランスはフェレウの穴を埋めるため、LOにイナ・イカエエギ(23歳、6キャップ)を起用した。フェレウは貴重なラインアウトのジャンパーだったため、ラインアウトの見直しも必要だ。

 また、脳震盪から復帰できないSOレア・ケロワに代わり、初戦のイタリア戦で先発していたカルラ・アルベスが再び10番をつける。外の守りを強くするためにCTBにブラジル戦、南ア戦で起用したナシラ・コンデを戻し、マリーヌ・メナジェをWTBに配置した。

 ベンチには、逆転トライのきっかけを作ったHOマノン・ビゴの名前はなく、終盤でのボールの争奪戦やスクラムでフィジカルの強さでチームに貢献してくれることを期待されたエリザ・リフォノー(21歳、19キャップ)が選ばれた。走れて運動量が豊富なベンチになることを狙ったFW5+BK3の構成だということだ。

 今大会で国内でのフランス女子代表への注目は、ますます高まっている。アイルランド戦のテレビ中継は、平均視聴者数340万人を記録し、開幕のイタリア戦で打ち立てた320万人という記録をさらに更新した。この盛り上がりを受け、プロリーグ運営団体のLNRは、中継局のカナル・プリュスの承諾を得て、フランス時間16時30分開始の準決勝とほぼ同時刻に行われる予定だったトップ14の4試合の開始時刻を18時30分に変更した。

 さらに多くの人が女子フランス代表をテレビの前で応援することが予想される。彼らの祈りがブリストルに届くだろうか。

【追記】9月18日にフランス協会からメンバー発表された翌日の準決勝前日に、WTBジョアンナ・グリゼの欠場が発表された。太ももの筋肉に問題を抱えていたため、水曜日の練習で様子を見ていたが、最終的に試合を断念せざるを得なくなったと伝えられている。彼女は9月7日の南アフリカ戦でもすでに右脚にサポーターを着用していた。

 共同キャプテンのLOマナエ・フェレウ、FLアクセル・ベルトゥミュー、SOリナ・ケロワが不在、その上トライゲッターのグリゼまで失うのはさらに大きな打撃だ。グリゼの代わりにケリー・アーベイが先発メンバーに入り、エミリー・ブラールがリザーブとしてベンチ入りする。ミディ・オランピックによるとPRアナエル・デエも首に不安を抱えているという。

フランス代表チーム準々決勝アイルランド戦メンバー

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