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【連載】プロクラブのすすめ㉗ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] ラグビーの未来を考える勉強会を立ち上げます!
――ブルーレヴズのようにすでに法人化しているクラブと、例えばディビジョン3のクラブでは、目指している先が違うように映ります。
実業団チームという形態が悪いということではまったくありません。
プロ化している野球でも、サッカーでも、バスケでも実業団リーグはあります。
会社の社内活性化のためにスポーツを活用していくことは素晴らしいことですし、むしろ選手の雇用などスポーツの底辺を支えるという意味ですごく大事です。
ただ、その目的と対外的に価値を生み出していかに拡大再生産していくかはまったく別の仕組みです。
実業団チームのままでいたいクラブと、リスクを取りながら市場を拡大しチャレンジしていきたいクラブとは基本的には相容れない。護送船団のようにリスクを取ってリターンを求めることにフタをしてしまうと、リーグが発展していかないからです。
そうした考えのもとで、リーグの階層構造を変えたのがJリーグとJFLであったり、Bリーグと社会人バスケリーグだったりするわけです。野球でもプロ野球がある一方で、都市対抗も大いに盛り上がっています。
話が少し過去に遡りますが、明確なビジョンを示さなかったせいでリーグの分裂が起きてしまったのがBリーグ以前のバスケットボール界でした。
僕も当事者としてその時代を経験しました。
2000年代初頭に日本バスケットボール協会が、最高峰のリーグがどうあるべきかというビジョンを示さなかった。リーダーシップの欠如がもたらした分裂でした。
それにしびれを切らし、プロ化していくべきだと考えた人たちと仲違いしたわけです。当時協会はプロ化すべきではないという実業団チームの意見に耳を傾け過ぎていました。
本来的にはリーグの分裂などすべきではないですし、いまのラグビー界ではそんなことに労力や時間をかけるべきではありません。
いまではプロ化して大成功したバスケとコストのかかるラグビーとでは、見え方が違うかもしれません。
とはいえ、このままでいいのか。実業団スポーツにすべてを依存しても限界は必ず来ると、過去のシーガルズやバスケ界での経験、事実から分かっています。
そのことが、今回のNECさんの件で垣間見えたのではないでしょうか。
――法人化はこの連載の初期から訴えてきたことでもあります。なかなか潮目が変わりません。
リーグを責めているわけではありません。リーグ事務局の中ではやはり直近で考えていかなければいけない目先の課題が数多くあり、カテゴリの変更やプレーオフをどうするかといった議論をしています。なかなか先々のことを議論する時間や余力がないと感じます。
ただ、われわれとしてはものすごく危機感を持っているし、これだけ価値のあるラグビーが長期的な目線でどうあるべきかという議論をいますぐに始めないと遅いと思っています。
サッカー、バスケ、バレーと、他の競技のリーグがどんどん発展していく中で、ラグビーだけが遅れを取るわけにはいきません。
そうした事情もあり、埼玉パナソニックワイルドナイツの粟屋さん(悟GM)をはじめとする有志の皆さんで「ラグビー最高峰リーグ研究勉強会」を9月末に立ち上げることになりました。
リーグワン関係者の有志で集まり、日本における最高峰のリーグはどうあるべきかを考える勉強会です。
リーグの公認ではありませんが、リーグにはこうしたことをやるというのは伝えていますし、議論の経過をリーグに共有したり、対外的にも発表していこうと思っています。
来年の6月には提言書という形でまとめ、勉強会としてはこうあるべきだと思う、というものを協会やリーグワンに示そうと。オープンイノベーションですね。
まずは様々な有識者の皆さんに話を聞く場にしたいと思っていて、JリーグやBリーグ、SVリーグの関係者にアプローチをしています。
それぞれのリーグがどういうリーグになっているのか、リーグができた経緯、独立法人化がなぜ必要なのか、といった話をしていただく。
他のスポーツ業界の経験ある方々からいろんな情報や意見をもらい、ラグビーにも当てはまるのか、ラグビーであればどうアレンジすればいいのかなどを考え、メンバーで議論していきます。
これで革命を起こすということではまったくありません。われわれが一石を投じたり、シンクタンクのようにいろんな情報を集めて、しっかり検討して提言を出す。これが大事だと思っています。
かつてトップリーグ時代にはいろんなチームが集まってワイガヤでいろんな議論をしていたと聞きました。それを復活させましょうと。
リーグにも責任者が集まる実行委員会があるのですが、時間を多く取って議論するということはなかなかできません。
9月25日を初回にその後はオンラインではありますが、月1回~2回のペースでおこなっていこうと思っています。
現時点で10人ほど集まっていますが、オープンにしていきたいので、クラブの代表者でなくてもリーグに関係する人であれば多くの方に参加してほしいと思っています。
PROFILE
やまや・たかし。1970年6月24日生まれ。東京都出身。日本選手権(ラグビー)で慶大がトヨタ自動車を破る試合を見て慶應高に進学も、アメフトを始める。慶大経済学部卒業後、リクルート入社(シーガルズ入部)。’07年にリンクスポーツエンターテイメント(宇都宮ブレックス運営会社)の代表取締役に就任。’13年にJBL専務理事を務め、’14年には経営難だった茨城ロボッツ・スポーツエンターテイメント(茨城ロボッツ運営会社)の代表取締役社長に就任。再建を託され、’21年にB1リーグ昇格を達成。同年7月、静岡ブルーレヴズ株式会社代表取締役社長に就任