リーチマイケル不在の日本代表で原田衛が考えること。

大事を取った。
原田衛は8月23日、17日から参加しているラグビー日本代表の宮崎合宿中のハードセッションをグラウンドの外で眺めた。コンディションを踏まえ、個人で調整した。
普段はハードワーカーで鳴らすだけに、他の仲間が息を切らし、身体をぶつけ合うのを見守ったことで若干の気まずさを覚えたのではないか。ひとまず頷く。
「声がかけづらいと思いましたけど、そこで静かなのも意味がわからないので、できるだけチームにアドバイスしようと思ってはいました」
周りに声をかけ、組織を引っ張る立場にある。
7月中旬までの活動期間で主将だったリーチ マイケルは、今回、招集されていない。
タフなFLとして、何より視野の広いリーダーとして頼られた36歳の代役は誰か。それが最近の焦点となっていた。
26歳の原田とリーチは、今年6月まで東芝ブレイブルーパス東京で同僚だった。ここでは副将、主将の間柄だった。
このほどクラブを退団し、まもなくニュージーランド挑戦が濃厚な原田は、リーチ不在で臨む今度のキャンペーンで重責を担いそうなひとりだ。
対外的にも、チーム内においても、主将が誰なのか発表されていない。
その前提のもと、指名された場合の覚悟はできていると原田は言いたげだ。別の場所ではこうも述べている。
「そこまでリーダーをやりたいわけじゃないですけど、チームがどうやったらよくなるか、日本ラグビーにどれだけ貢献できるかを考えている。リーダーであれ、他の役職であれ(尽力する)」
指揮官のエディー・ジョーンズは、約9年ぶりに現職に戻った昨年からずっと原田をスコッドに選んでいる。非代表戦で共同主将を任せたこともある。
今度の新しい船頭役選びについても、心は決まっているのだと匂わせる。ショートスリーパー特有のジョークで締める。
「そのことで悩んで眠れないということはありません。しっかり4時間は寝ています」
このグループのターゲットは、パシフィック・ネーションズカップ(PNC)での優勝だ。8月下旬からのPNCにはアメリカ大陸、環太平洋の国々が集う。日本代表は前回、準優勝だった。決勝でフィジー代表に敗れた。その折も参戦の原田は説く。
「PNCを通して、(従来とは)違ったジャパンの攻め方を見せられればなと」
ジョーンズ体制が磨くラン、パスを軸にした攻めを、さらに多彩化させる。
「まずはボールを動かすところを、見て欲しいなと。そこが僕たちのアイデンティティーなので」
ポジションはHOだ。先頭中央で組むスクラムに進歩を感じる。アシスタントコーチのオーウェン・フランクスとともに、地道に取り組む。
「去年からよい形で組めていて、それがさらにパワーアップしたのかなと。毎週月曜は、どんなにきつくてもオーウェン・フランクスさんとセットアップ(スクラムの予備動作や姿勢)を確認しています。それが、積み重なっている」
所持するスマートフォンは、いつも20時にはアプリケーションが切れる設定にしている。睡眠の質を保つべく、遅い時間に液晶を見ないようにしているのだ。厳しいと知られる代表のスケジュールがない時も、朝から計画的にトレーニングを重ねる。
「あまり、苦じゃないからだと思うんです。ラグビー、好きなので。好きなことをやらせてもらっているのは、苦じゃないかなと」
人間は楽な選択をしがちなのではと水を向けられても、「怠けたい時もありますけど、僕は人より鈍感というか、あまりそういうの(疲弊)を感じなくて…」。どんなグループの象徴にもなりうる勤勉さが魅力だ。
「続けることが、得意なほうなので。それは自分の強みでもあるかなと」