帰還を待ちわびる加藤幸子、サクラフィフティーンでコーチの言葉に時間差で納得。

久しぶりにホームへ戻る感覚だろうか。
サクラフィフティーンこと女子15人制ラグビー日本代表の加藤幸子は、8月22日開幕のワールドカップを心待ちにする。
今度の開催国のイングランドで、トップ選手として楕円球を追った時期がある。2020年からの2シーズン、現地にある女子プレミアシップのエクセターに在籍したのだ。雨が多く湿度の高い現地の環境にも慣れている。
何より31日の予選プール2戦目が、かつての拠点であるエクセターのサンディーパークで開かれるのがよい。その日のカードはニュージーランド代表戦。突進とタックルの激しい左PRは、顔をほころばせた。
「芝の感じ、雰囲気がわかっているので、そこはちょっと安心できるところです。まさかエクセターでできるとは思っていなかったのですが、すごく嬉しいです。イングランドでは試合数も多く、そのたびに成長できたと思っていて。大きな相手とたくさん(プレーが)できたので、ワールドカップでも恐れることなく戦えるかなと」
出国前にあたる7月下旬の対スペイン代表2連戦は欠場も、8月9日に敵地でおこなった大会前最後のテストマッチへは先発。イタリア代表を向こうに45分間、プレーした(●15-33)。さかのぼって7月27日の壮行会では、本番への意気込みをこう述べている。
「FWが重点的にやってきたセットプレー(で力を発揮したい)。個人としてもボールキャリーとディフェンスで体を張りたいです」
身長164センチ、体重90キロの25歳。宣言通り、サクラフィフティーンのセットプレーには手応えがある。
ラインアウトを起点に組むモールは、向こうから圧をかけられてからも第2波を生んで押し返せるまでに鍛えた。ポジション練習に労力を割いた成果だ。
「(ゲームではルール上、レフリーによる)『ユーズイット』の声でボールを出す。でも、練習ではマークが笛を鳴らすまでずっと押し続けなくてはいけない」
ここでの「マーク」とはマーク・ベイクウェル。昨年就任したFWコーチだ。
指摘の細やかさと普段の明るさが評判のオーストラリア出身指導者に、加藤はある一言を告げられた。
時間が経つほどに、納得感が増した。
「1年目に『腰が痛くなるのは、修行が足りないからだ』と。そんなことないだろうと思ったのですが、2年目に入ると、そうだ、と実感します」
大会開催年は、全国各地で長期キャンプを連発した。
「本当にきつくて、長かったです。正直、帰りたいと思うこともありましたけど、その時は周りの皆も一緒にやっているし、ワールドカップという目標があったから、やり切れました」
ハードワークしてきた実感、切磋琢磨した仲間やスタッフへの信頼感がある。初陣は24日。アイルランド代表が待ち構える。