ルーティーン注目の日本代表・竹内柊平、勝利翌日の練習にも笑顔。

結果が出れば注目度が変わる。
ラグビー日本代表の竹内柊平は、昨夏から、右PRとしてスクラムを組む際のルーティーンを定めていた。
腰を落とす。左肩、右肩と順に、それぞれ反対の手を添える。次に左の指先をおでこにつける。最後は右腕を身体の正面へ立て、伸ばした背筋の向く方角を定める。
「相手の顔は見ていない。自分の世界に入っている」というこの動作が注目されたのは、導入から1年弱が経った7月5日だ。福岡・ミクニワールドスタジアム北九州で、世界ランクで1つ上だったウェールズ代表を24-19で倒した日のことだ。
たくさんのメディアにその動作について質問されるのは…。
「…恥ずかしいですね」
この午後は、トップレベルの最前列にあっては異例の80分フル出場を果たした。スクラムの強い伝統国を押し込み、強烈なタックル、モールの支柱役を引き倒す動きでも活力をもたらした。
「(最後までのプレーは)予想はしていませんでした。それは自信がないからではなく、高強度のテストマッチで80分というのは、他の国でも見ることがないんじゃないかと…。また自分たちのフロントロー(先頭中央のHOとその両脇を固めるPR)は、誰が出てきても強い。だから(中盤以降にリザーブへ)繋ぐのかな…と思っていました。ただ、(終盤の)ウォーターブレイクか何かで水を飲もうとしてちらっとベンチのほうを見た時に、タメ(リザーブの右PRだった為房慶次朗)がまだビブスを着ていた。『…あれ?』とは思いました。もちろんそれ以外の瞬間は、めちゃくちゃ集中していました。そして70分になり、79分になり、『あ、終わるな…』と!」
身長183センチ、体重115キロの27歳は、9日、ファンにお馴染みの元気な様子でタフな80分について振り返った。
「身体のダメージはありました。3~4キロくらい落ちました。ただ、その日は(ホテルで)お肉が出たので、(体重は)戻りました!」
喜んでいるだけではない。序盤にリードを許していたため、「課題は明確。前半の入り。今週はファーストスタート(を意識)」。12日の同カード2戦目を見据え、先のゲームの翌日から全体練習を再開させた。
「勝った喜びは当日だけにして、次の日は『対ウェールズ代表2戦目の週』と位置付けました。ゲームの長かったメンバーは強度のコントロールをしていたのですが、足りない部分を重点的にやり(改善し)ました」
見せ場となるスクラムにおいては、あくまでジャパンらしさを貫きたい。
「お互いの手の内がわかっていて、向こうもこちらがどういう押し方をするかがわかっている。そこで『相手がこうしてくるだろうから…』と付け焼刃でやるのではなく、こだわってきたことを全面に出す。ここでウェールズ代表をスクラムで叩けたら、試合の流れはこっちに向く」
昨秋の代表活動を終えて合流した浦安D-Rocksでは、首脳陣の方針もあってリーグワンでの先発機会を得づらくなった。
それとは無関係に海外挑戦を志し、所属先を決めないままクラブを退団。代理人を通してフランスの複数クラブへアプローチする。
宮崎工高、九州共立大と、この世界では無名と呼ばれる学校のチームを経て国内トップに躍り出て、さらには世界トップの舞台で揉まれたいと願う。
いまは自称「無職」の立場でナショナルチームに参加する。信頼され、ジャージィを託されるのは嬉しい。兵庫・ノエビアスタジアム神戸での一戦では、ベンチで出番を伺う。