【コメントで振り返るリーグワン決勝戦】東芝ブレイブルーパス東京(2)/「このチームの一員であることが誇らしい」 リッチー・モウンガ

6月1日、リーグワンプレーオフ決勝戦が国立競技場でおこなわれ、レギュラーシーズン1位の東芝ブレイブルーパス東京が同3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイとの接戦を18―13で制し、リーグワン史上初の連覇に輝いた。
ここでは、SOリッチー・モウンガ、SH杉山優平、FB松永拓朗のコメントを紹介する。
■SOリッチー・モウンガ
この試合自体すごく特別なものでした。ただ勝利の味というのは変わらないです。何度勝ってもうれしいですし、なによりも今日の選手たちの働きぶりがすごく誇らしいですし、1年を通して振り返っても、素晴らしいものでした。
(試合が終わった瞬間、どんな思いになり、どんな光景が目に入りましたか?)
まず見たのは(リーチ)マイケルさんの顔でした。彼は自分にとってお兄さんみたいな存在で、特に自分だけじゃなく、東芝にいる外国人選手全員の面倒を見てくれて、日本での生活をすごくやりやすくしてくれています。だから、彼が喜ぶ姿がいつも一番うれしくて。それと同時に誇らしいですね。
連覇したということはもちろんなのですが、それよりもまず、試合の前から手のケガがあって、試合前の1週間、一度も練習ができませんでした。そのとき、メディカルチームやスタッフ、チームのみんながサポートしてくれて、その障害を乗り越えることができました。それで試合ができたというところにぐっときました。
優勝できるというのはすごく大事。何度もできることじゃないので。「この瞬間、瞬間を噛みしめて」とチームの皆に言いました。
人が喜んでいるのを見るのがすごく好きなので、スタッフも含めてチームの人たちみんなが努力したことが報われて、すごくうれしいです。
東芝のことが大好きです。クルセイダーズと似ている部分もあって、特に謙虚というか、そんなに派手なチームではないのですが、みんながすごくハードワークをしていて、スタッフ全員が協力し合っている。チーム全体でこうやって勝つことができて、すごくうれしいですし、その一員になれていることは本当に誇らしいです。
(手の甲を骨折したのは、準決勝の)神戸戦の76分のシーンでした。骨折したことは仕方がない。ラグビーではよく起こることですし、運が悪かったなと思いましたが、そういったことを飲み込んで、しっかり準備してプレーできました。
(今までスーパーラグビーやオールブラックスのときにこのような状況はありましたか)
右手の骨折がトータル3回、左手も1回で、特に1回は試合の序盤で骨折したんですけども、そのときの試合も全部プレーすることができました。今回は決勝という特別な機会でしたし、出ることは不可能じゃないというのが分かったので、プレーするつもりで常にやってきました。
手の骨折はプレーに影響はなかったです。少し痛いくらいで。ただ、全体的なプレーの幅としてはあまりとれなかったかなと思います。
また、プレーの判断自体が特に変わることもなかったです。(手の骨折について)あまり考えないようにしていましたし、(手の骨折に影響するような)プレーもなかったので。
シンプルにラグビーをしていました。何度も同じシーンがあり、何度も同じ経験をしています。だから自分の感覚に従ってプレーをしていました。
(痛みを抱えてもいいパフォーマンスができる理由は)
子供の頃からラグビーが大好き。スーパーラグビーやヨーロッパラグビーなどすべて観るくらいラグビーは本当に大好きです。いま、夢に見ていたような状況でグラウンドにたち、ラグビーへの情熱をもったままプレーをしているので、ケガをしていようが関係なくできたのだと思います。
■SH杉山優平
最後の試合で「BE US」という「自分たちを表現する」というところを目標に掲げていました。その目標もひとつ達成できたのではないかなと、個人的には思います。
(追加点となった後半7分のトライでショートサイドを攻めたのは相手が見えていた?)
相手のディフェンスの絵が見えていて、そこに対して(のアタックは)今シーズン通して結構やってきた形だったので、スムーズにシンプルにボールをそこに運んだ、という感じですね。 あとはリッチーモウンガがいるので、そこにボールを運んだだけで、特に仕事はしていないと思っています。
(ずっとボールを動かして攻撃できていたように見えましたが)
そうですね。どのエリアにいても、スペースが見えた時点で自分たちの形でしっかりボールを運ぶ。それをやるためには、やはり一人ひとりがスペースを見て、全員が同じ認識でボールを運ぶっていうところができないと、うまくボールが回らない。
今日は特に汗などでボールが結構スリッピーだったので、ミスも絶対起こるだろうなと思ったのですが、思い切って自分たちらしさを出すために、うまくボールを回すことができた。それができたことが、自分たちとしてはよかったかなと思います。
(今シーズン、チームで一番成長したという部分はどこですか)
敵のディフェンスの絵を見るというのが、9番、10番だけじゃなくて、その他の選手、特にBKだけじゃなく、FWも含めて全員が前を見て、どこにスペースがあり、どこへボールを運ぶというのが、各々が見れるようになったというのが成長したところです。 僕たちは前を見るということを「スキャンする」と言うのですが、それがすごくできたんじゃないかなと思います。
■FB 松永拓朗
うれしいです。このために努力してきましたし、家族や周りのサポート、応援してくださった人たちに本当に感謝しています。
昨シーズンの方が、感情としてはうれしかったと思います。今回ももちろんうれしかったのですが、先にホッとしたという気持ちが湧いてきました。
このチームは本当に強いなと思いながらシーズンを過ごしてきました。勝てるのだろうな、という雰囲気もありました。だからこそ余計に、やっと終わったと感じた試合でした。
(レギュラーシーズンでは負ける試合もあった。苦しいなかでも最後に勝ち切れた要因は)
勝つ文化が根付いてきていると思います。苦しい場面でもみんな冷静ですし、しんどい顔もしてないし、ハードワークをしていた。その強みが出ているのではないかと思います。
(アタックの時間を長く確保できて効果的なゲインがいくつもありました)
僕たちのアタックが機能していたと思います。フィニッシュのところで簡単にはトライをさせてくれませんでしたが、相手にはプレッシャーをかけることはできました。
大きいFWに対してボールを動かそうと。それを徹底できました。よりダイナミックに、という意識はありました。
(試合終盤も迫られていたが落ち着いていた)
残り5分ほど苦しい時間帯はありましたが、みんな同じ方向を向いていましたし、焦るよりも自分たちのシステムをしっかり守ろうと全員が意識できていたと思います。
(リーチ)マイケルさんも「一瞬、一瞬、5分、5分をしっかり戦おう」と話していましたし、空いた時間ができたら、皆で集まって一丸となってセームページを見よう、と話せていました。それを試合中に体現できたと思います。
(リッチー・モウンガが右手を骨折していたことについて)
リッチーは今週の練習に一度も入っていなかったので、僕がずっとSOで準備して、ドキドキしながら過ごしていました。もしプレーできたら「ラッキーやな」と思っていました。アピールチャンスだと思っていましたし、リッチーがいなくてもできるんだぞ、と。
でも今日は本当に骨折しているのかと思うようなパフォーマンスで、ボールキャリーも多くて…⋯さすがやなと思いました。これからケガしても痛いとは言えないです(笑)。チームにとっては彼が帰ってきてくれたことは大きかったと思います。
*取材中に天理大同級生でハーフ団を組んでいた藤原忍選手にちょっかいをかけられて
(彼とのバトルは楽しかったですか)
楽しかったです。天理(OB)の多いクボタに負けていたら、ほんまに悔しかったと思いますし、それは彼らも同じ気持ちだと思います。それでも「ナイスゲーム、おめでとう」と言ってくれた。うれしく思います。