自分らしく。自分たちらしく。ブレイブルーパス松永拓朗、ファイナルまでの道のり。

辿り着いた。松永拓朗は6月1日、ジャパンラグビーリーグワンのプレーオフ決勝に出る。2連覇が期待される東芝ブレイブルーパス東京で、最後尾のFBとして先発する。
身長172センチ、体重82キロのきれのあるランナーは言う。
「(当日は)どんどんボールを動かして、自分たちのテンポでアタックしたいです」
レギュラーシーズン首位で臨んだノックアウトステージには、準決勝から参加した。同ファイナルでは、同3位で準々決勝からスタートのクボタスピアーズ船橋・東京ベイとぶつかる。
相手のSHでスターターを張る藤原忍とは、出身の天理大で4年間、司令塔団を組んできた。ラストイヤーの2020年度は、夏に新型コロナウイルスの感染拡大に伴う活動休止を強いられながらも史上初めて大学選手権を制覇した。
それぞれ別々の道に進んで約2年後、一昨季のリーグワンのプレーオフ決勝を観戦した。今回と同じ国立競技場で、盟友の藤原がスピアーズにとって初の日本一に輝いていた。
現在26歳、松永の述懐。
「かっこいいな、この舞台に立ちたいな、忍とできたらいいな…と。それが叶ったのは、すごく嬉しいです」
前年度は自身が頂点に輝き、昨秋には日本代表へ初選出された。藤原とも一緒だった。
12月にいまのシーズンが始まると、持ち前のランニングスキルを披露。一時は、本調子でなかったSOのリッチー・モウンガに代わってゴールキッカーも務めた。
シーズン終盤戦は故障での離脱も、復調の過程でまた光った。部内の競争力を保つ「K9」という控えグループで日々のトレーニングへ参加すれば、パフォーマンスはもちろん周囲への声掛けで集団の士気を保った。
おもに「K9」を教える藤田貴大アシスタントコーチは、その様子にブレイブルーパスの成長を見た。
「誰かに言われて『あっ』となるより、自分で何か発見した時の方が印象に残ったりするじゃないですか。だから、どうしたら選手たちから発言してもらうように導けるかなと考えています。そんななか拓朗がK9の練習に入って、ハドル(円陣)ですごくいいことを言っている。コーチ(からの発信)が悪いわけではないですが、試合に出ている拓朗が言うと、いい! (同じ内容でも)選手から伝えたほうが力、意味がある。…それに、こうやって、選手が考える環境になっているのがいまの一番いいところです」
当の本人は涼しい顔だ。
「K9がいるから試合のメンバーはいい準備ができているのは事実。それを感じたので、自然と、もっとこのチームを引っ張りたいと思ったのかもしれないです。意識的に何かをしたことはないです。逆に、刺激をもらってやっていた」
自分らしくいることで人のためになった。学生時代に見学した練習の雰囲気が好きで入ったという府中のクラブで、攻撃面のリーダーを担う。
「自分たちにフォーカスして、いいラグビーをしたいなと。2連覇(を狙う)というより、(次の)1試合へのフォーカス。周りに気を散らさず、集中するのが大事かなと」
プレーオフ突入から定位置の背番号15へカムバック。ファイナルの舞台は復帰2戦目だ。チームが掲げた攻撃面のテーマは「Be us」。自分たちらしく。
旧友とのバトルを心待ちにするチャンスメーカーは、堅守で鳴らすスピアーズとの80分を「自分たちのアタックをすれば(防御は)絶対に突破できる。エリア(の管理)、ペナルティ(をしないこと)も重要になる」と展望した。