SNS企画でも話題。スピアーズ為房慶次朗はプレーオフ準決勝で「自分たちのスクラムを」

自分の作るぶり大根はうまい。クボタスピアーズ船橋・東京ベイで実質1年目の為房慶次朗は、周りに強調してきたようだ。
「ぶりを煮込んだらおいしくなくなるとYouTubeで見ました。たれを絡めるだけにしたら、すごくおいしいです」
某日。クラブのSNSで流す「為房王」という企画に協力した。様々な質問へ為房がどう答えるか、同僚に当ててもらうことになった。
使っているロッカーが近いため回答者となった江良颯は、「好きな食べ物」という問いの回答を「ぶり大根」と予想した。
隣に座った紙森陽太は「ラーメン」とするなか、本人は「焼肉」。両者が崩れ落ちる様子がファンを楽しませた。
その後のラリーでも不正解が重なり、為房と同期入団の江良は「(動画を)広めてください。常に謎な人」と笑顔。2人の2学年先輩である紙森陽太も、「意外と難しかったですね。想像の斜め上でした」と応じた。
為房、江良、紙森のほか、山本剣士、玉置将也、梁本旺義が同じ「ロッカー会」。よく食事に出かけるそうだ。紙森は続ける。
「たまたま、関西地区のFWの選手だけ。皆、優しいですし、仲良くやっています」
件の企画について、為房自身は「反響が大きく、嬉しかったです。『面白かった』というDMもいただいて」。選手同士の絆を誇るスピアーズにあって、いまは参戦する国内リーグワン1部の大勝負を見据える。
5月25日、東京・秩父宮ラグビー場でプレーオフ準決勝に挑む。
レギュラーシーズン12チーム中3位のスピアーズは、2季ぶりのノックアウトステージに準々決勝から挑戦。18日、東大阪市花園ラグビー場で6位の東京サントリーサンゴリアスを20-15で下した。
2位で次戦からシード参戦のワイルドナイツとは、レギュラーシーズンの第17節で29-29と引き分けている。
再戦の注目度が増すなか、右PRのリザーブとなった為房は淡々と意気込む。
「去年のプレーオフに行けなかった悔しさもありますし、パナソニックには今シーズン、1回も勝てていない(1分1敗)。絶対に勝ちたい気持ちは、強いです。(相手は)ワイドに降ったり、逆サイドへ(パスを)回したりするのがうまい。それを封じたら、勝ちが見えてくる。あとは、フィジカルで負けない。自分たちのFWの強さには自信があるので」
身長180センチ、体重108キロ。昨年度は明大卒業前からアーリーエントリーの制度を使い、リーグワンデビューを果たした。シーズン終了後は日本代表に初選出され、テストマッチを経験した。
自軍でも世界を味わう。スクラムで隣同士となるHOの位置には、マルコム・マークスがいる。南アフリカ代表としてワールドカップ2連覇の30歳に心強さを覚える。
「自分(単独)でもどんどん押して行ける。破壊力は一番です」
HOと言えば、同級生の江良の名も挙がる。身長189センチのマークスがパワフルである一方、身長170センチの江良は為房がスクラムの姿勢を合わせやすいという。
「颯とは自分のポジショニングで組める」
江良はレギュラーシーズン第18節に怪我を負い、サンゴリアスとの準々決勝を欠場。復帰戦となる今度のセミファイナルでは、為房とともにベンチスタートとなった。
「戻ってこられたのはトレーナーの方、S&Cの方、準々決勝を勝ってくれた仲間のおかげ。その気持ちを体現したいです。クボタの雰囲気は変わらなくて。(プレーオフに突入したら)もっと堅苦しくなるイメージもありましたけど、全然、そんなこともなく、クボタのラグビーをやって楽しもうという空気が練習から出ている。いい緊張感でできる」
紙森は左PRで先発する。スターター同士となるマークス、途中出場しそうな江良とも首尾よく連携を図り、強力なパックを編みたいという。
「マルコムにも颯にもスクラムの形がある。2人が交替した時もすぐにフィットできるようなコミュニケーションを取り、自分が下がる時は海士さん(広大・リザーブの左PR)に伝えるようにします」
向こうの最前列には、日本代表として3度のワールドカップに出た左PRの稲垣啓太ら実力者が並ぶ。力と力が温かく繋がるスピアーズにあって、為房は「(対面を)警戒しつつ、自分たちのスクラムを組むだけです」と決戦を心待ちにする。