「これぞノックアウトラグビー」。プレッシャーゲームを制し、スピアーズが2季ぶりのトップ4へ。

勝利こそすべて。それがプレーオフだ。
だからどのチームもあらゆる手を尽くして目の前の一戦に臨んでくる。徹底的に相手を分析し、起こりうるさまざまな事象を想定して、特別なゲームプランと特別なサインプレーを準備する。そんな別次元の戦いでは、リーグ戦の結果はほとんど意味を持たない。
5月18日の東京サントリーサンゴリアスとの準々決勝を20-15の勝利で終えた後、クボタスピアーズ船橋・東京ベイの選手やスタッフは口々にこう発した。
「絶対に前回と同じようなゲームにならないことはわかっていました」
4月13日の第13節では同じ花園ラグビー場で30-10の完勝を収めた。しかし5週間後の再戦ではサンゴリアスの渾身の攻守に終始苦しめられた。鋭い出足でプレッシャーをかけにくるディフェンスに攻めあぐねる場面が続き、ラインアウトからのスペシャルプレーでトライを許して、後半20分過ぎまで10-12と先行された。
「何かスペシャルなことをしてくるというのはわかっていたんですけど、そこになかなか対応できなかった。ずっと居心地の悪い感じがしていました」(SH藤原忍)
それでもスピアーズは踏みとどまった。サンゴリアスのPG失敗によるドロップアウトから相手陣22m線内へ攻め込み、自慢のFWのパワープレーで24分にLOルアン・ボタが逆転のトライを挙げる。32分にはCTB廣瀬雄也が約35mのPGを通し、ワンチャンスでは追いつかれない8点差に。37分にPGで20-15と詰め寄られたものの、重圧が覆うピッチで残り時間をきっちりと使いきった。
「これぞノックアウトラグビー。ものすごいプレッシャーを受ける中で勝てたことをうれしく思いますし、プレッシャーに対応した選手たちに感謝しています。完璧な試合ではなかったけれど、勝ててよかった」
フラン・ルディケHCの記者会見での言葉だ。スーパーラグビーでの経験を通じて、プレーオフでひとつの勝利を挙げることがいかに大変であるかは熟知している。しかも相手はここ一番の勝負強さに定評のあるサンゴリアスだ。チームの真価を問われる第一関門を突破し、表情にも手応えがにじむ。
困難を乗り越えた経験は、スピアーズに貴重な自信と勢いをもたらすだろう。4月26日の第16節から休みなしの連戦が続きダメージは心配されるが、SH藤原は「それはまったく気になりません」と即答する。
「準々決勝からできているのは、自分たちにとってむしろプラスになると思います。特に僕は場数を踏んで成長するタイプなので。ダメージよりもレベルアップできることのほうが大きい」
5月25日の準決勝では、埼玉パナソニックワイルドナイツと激突する(14時30分キックオフ@秩父宮ラグビー場)。あるいはその試合では、コンディション調整のため今週欠場した複数のメンバーが復帰できるかもしれない。そうなれば、この準々決勝を乗り越えた意味はさらに大きくなる。
5月3日の第16節はラストプレーでのWTB山田響のトライで同点に追いつくという死闘になった。3週後の再戦はその決着をつける大一番となる。激戦必至だ。