賢さと信念。ハリー・ホッキングス、サンゴリアスで制空権握る。

東京サンゴリアスの堀越康介が「いい感じに、お願いします」と会釈したのは3月27日。2日後のジャパンラグビーリーグワン第13節で復帰する、ハリー・ホッキングスの凄さを語った直後のことだ。
タッチライン際の攻防の起点にして空中戦のラインアウトにおいて、身長206センチ、体重118キロの26歳は自身のジャンプ、キャッチはもちろん、捕球位置を選ぶうまさにも定評がある。競り合いを試みる相手の陣形を読み、狙いを外してサインを出す。
投入役で29歳の堀越は、ホッキングスのセンスに助けられるという。
チームメイトになって5シーズン目になるから、言葉がなくとも意思疎通ができる。
いわば、メンバー表に名を連ねるかが大きな影響を及ぼすタレントのひとりなのかもしれない…。
主将という立場上、その意が伝わることで不要なハレーションが起きないようにと考えたからか、「いい感じに、お願いします」と去ったわけだ。
本人はどう述べるか。堀越が去ったその場でラインアウトへの思いを問われ、誠実に言葉を選ぶ。
「他の選手にも素晴らしいリーダーがいて、ラインアウトは十分に機能していました。そこへ自分が加わることで、またコーラーとして引っ張り、防御でも圧力をかけたい」
戦前まで3試合続けて欠場。コンディション不良のためだ。その間は全敗。重要局面におけるラインアウトのエラーに泣いていた。その様子をスタンドなどから見守ってきたうえで、チャンスの1本を確保する秘訣を語った。
どんな作戦を練るかより、どれだけ作戦を徹底できるかが大事だと説く。
「試合後に見直して、『このオプションのほうがよかった』などと振り返ることは出てくるかもしれません。ただ、試合中は決まったことを最後まで信じ、100パーセントコミットし、精度高く遂行する気持ちが大事です」
29日、東京・秩父宮ラグビー場でカムバックを飾った。注目のラインアウトで優勢を保ち、好調だった静岡ブルーレヴズを22-17で下した。
「自分だけではなくFWパックの1~8番全員がディフェンスでは競り、アタックでは自分たちのドリルで獲得する方向で意思統一できた。(攻撃中は)相手が競りに来ることを想定し、どこが空くのかを考えて(捕球位置を)選択しました」
シーズンの最終局目に突入した。第15節終了時点で12チーム中6位。昨季と比べて枠の増えたプレーオフ行きへ、ボーダーライン上にいる。誰もが万全の状態とは限らない満身創痍の状態で、マストウィンのゲームを3つ、残している。
かねて今季終了後の日本代表初選出を目指す大きな賢人は、「正直、いまはサントリーのことで精いっぱい」。まずはシーズンを充実させるつもりだ。
ブルーレヴズ戦後の取材エリアで、こう言い残していた。
「必死に臨まないと。どのチームが勝つかわからないなか、毎回、必死に、全部にコミットしてやり続ける」
「悔しい試合も続き、順位的にもいたい場所にいられていない。ただ、毎回勝ちにこだわり、乗り越えていかないといけない」
「結果がついてくれば、どんなに疲れたって関係ない!」