大器の谷山隼大がワイルドナイツで上々デビュー。本人の感想は?

その時は突然、訪れた。
埼玉パナソニックワイルドナイツの谷山隼大が4月5日、国内リーグワン1部でデビューを果たした。
本拠地の熊谷ラグビー場での第14節でリザーブ入り。通常ならハーフタイム以降の出番が想定されそうな中、前半27分にグラウンド入りした。先発選手の脳震盪検査のためだ。
タッチライン際でのウォーミングアップが一段落したところでお呼びがかかり、慌ててベンチにあった水色のヘッドキャップをかぶった。約1万人の愛好家が見守るなか、ピッチへ入った。
「まさかあのタイミングと思っていなかったので、正直びっくりしました。アップが終わった後でバタバタだったんですけど、なんとか…」
身長184センチ、体重95キロの23歳。主将を務めた筑波大から加わって実質1季目のシーズンを過ごしている。ジャンプ力、ストライドの大きさ、懐の広さを兼備するこの人は、早速、攻めで魅了した。
32分頃、敵陣中盤右で球をもらうと、目の前のタックラーの芯から逃れる。前に出ながら体勢を保ち、右脇にいたFLのベン・ガンターに繋ぐ。前進させる。
持ち前の資質を活かしたように映った。しかし、本人の実感は違った。
「もっと、いい感じにキャリー(突進)できたらよかったです。相手(の人数)が多かったように見えたので、『どうしよう、どうしよう』と迷いながらプレーしてしまっていた。もっと強気にやれればよかったです」
正式に交代がアナウンスされたのは35分。対するトヨタヴェルブリッツを55-17で下すまでフィールドに立ち、特に守りで光った。
後半開始早々には、自陣10メートル線付近右の接点でターンオーバーを成功させた。
その後も相手と間合いを詰めたり、突破を許した箇所をカバーしたりして、そのたびに鋭いタックルを決めた。持ち場のアウトサイドCTBを全うした。
「(接点から見て)外側のディフェンスをうまくやっていくのはテーマでした。周りと繋がりながらやっていくことは少しでもできたのかなと。タックルした後のファイトは、意識しました。最初から出ていない分、走らなきゃ! と、思っていました」
後半20分に向こうのコンタクトを頭部に受けたが、それとは無関係に「夢中でやっていたので(詳細をあまり)覚えていなくて…」。明日以降を見据える。
「また振り返って、(改善点を)修正していきたいです」
ワイルドナイツは、リーグワン初年度からプレーオフの決勝へ進む強豪だ。各ポジションに様々な国の代表選手をずらりと揃え、横幅の広い防御ラインを軸に一枚岩となるのを目指す。
組織の強さの秘訣は。谷山が述べる。
「他のチームとは比べられないですが、(ワイルドナイツには)ひとりひとりが自立して、自分の成長、チームの成長を考えてやっている…そんな文化が根付いていると思います」
限られた練習機会へ、良好な状態で、かつ、チームに求められるサインプレーやシステムを把握して出てくる先輩方を見たら感じるところがある。
「多分、僕が見えないところでも頑張っているんだろうなと」
綺羅星の集合体とも、ひとつの惑星とも取れるこのグループにあって、己をアップデートさせる。
「(自身の)パナのラグビーへの理解度は、上がっていると思います。最初は全体的に課題が多かったのですが、それをひとつひとつ底上げできていたらいいかなと、思っています。練習で、それまで抜かれたところが止められるようになるなど、日々のよしあしを確認して…という感じです」
ハイボールキャッチも得意な万能型は、7人制、15人制、いずれの領域でも代表入りが待たれる。もっとも本人は、「チームの優勝が一番の目標です」と決意する。
「そのために、ひとつでも自分が役に立てるようになりたいです」