国内 2025.03.15

チェスエリン・コルビの「父親に刷り込まれた」という哲学。

[ 向 風見也 ]
チェスエリン・コルビの「父親に刷り込まれた」という哲学。
クラブハウスで取材に応じるチェスエリン・コルビ(撮影:向 風見也)

 チェスリン・コルビが帰ってきた。

 南アフリカ代表としてワールドカップ2連覇の31歳はいま、東京サントリーサンゴリアスに加わり2季目に突入。いまは昨年12月からの国内リーグワン1部へ挑む。

 3月16日には、休息週明け1試合目の第11節へWTBで先発。今季4戦ぶり6度目の出場となる。

 本番2日前にオンラインで話した。

「小さな受傷があってシーズンの頭にイライラしたこともあった。ただ、いまは復帰しています。ここにいるということは、プレーする準備はできているのです」

 身長172センチ、体重80キロ。国際的には小柄も、ばねと速さと執念で世界の頂点を知った。

 このほど自国で昨年の年間最優秀選手に輝いた。その名誉を「過去に表彰された選手の名前を見ると、それが特別なことだと感じます」としつつ、「(受賞は)昨季を通して一緒にプレーした選手たちの存在があってのこと。南アフリカの若い選手たちにも、自分を信じてハードワークしてもらえたらなと思います」。手柄を誇らない。

「年も取ったので、リカバリーには時間がかかるかな。ただ、気持ちはまだヤング。その時々の所属先には貢献できる。怪我は予測できず、そこがラグビーにおけるネガティブなところではあります。ただもし故障しても、復帰に向けて頑張る」

 その「ヤング」な「気持ち」を保つ秘訣は…。

「家に子どもがいる。だから走らなきゃいけない! 日本には観光地も多く、どこへ行っても歩く距離が増えてくる。だから、フィットネスは落ちない!」
 
 サンゴリアスは現在12チーム中7位。旧トップリーグ時代から通算して7季続けて4強以上(不成立のシーズンは除く)という名門はいま、序盤の躓きを順位に反映させてしまっている。

 巻き返しが待たれる中、コルビは「いい選手はたくさんいる」と仲間のポテンシャルを信じる。

 その「いい選手」のうち「自国で生まれ育っていたら、南アフリカ代表に選ばれてもおかしくない選手はいるか」と聞かれた。間を置いて答えた。

「松島(幸太朗=FB)は実際に南アフリカ(シャークスアカデミー)にいたことがあるし、きっとうまくいくでしょう。(SOの高本)幹也もいい。…ただ、才能がある選手はたくさんいるので『この人』とは挙げられないですね」

 今度はたけびしスタジアム京都で、三菱重工相模原ダイナボアーズとぶつかる。向こうへは同じ南アフリカ代表でFBのカートリー・アレンゼがいる。ファンが期待するワールドクラスのランナー同士のバトルについて、コルビはこう話す。

「そこまで意識していなかったですが、彼とは初めて対戦することになる。楽しみにしています。ダイナボアーズでいい働きをしていて、全体的にいいラグビー選手でもある。…でも、彼ひとりにフォーカスせず、対戦相手全体にフォーカスしたい。(自身は)どのポジションでも、チームに貢献していきたい。自己中心的にならないようにベストを尽くす」

 何をしたいかより、チームの一員として何をすべきかを口にするのが常だ。

「自分の個人のゴールや成功させたい目標もありますが、チームスポーツをやるうえでは自分のゴールの前にチームのゴールを置く。それはクラブレベルでも国際レベルでも、です。(その考えは)ずっと変わっていないです。父親に刷り込まれたのです」

 サンゴリアスの枠組みをどう彩るか。「自分の内、外にいる選手がトライを獲れる状況を作り出したい。自分がトライを獲れるチャンスにいたら、確実に取りたい」と淡々と応じた。

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