各国代表 2025.02.22

リザーブはFW7人+BK1人の大胆布陣に。前節敗戦のフランスがイタリア戦へ大幅にメンバー変更。

[ 福本美由紀 ]
リザーブはFW7人+BK1人の大胆布陣に。前節敗戦のフランスがイタリア戦へ大幅にメンバー変更。
先発復帰したFBレオ・バレ。22歳の気鋭の大型BKだ(Photo/Getty Images)



「イタリア戦で最高のパフォーマンスを発揮し、質の高い試合をするためのチームだ」とフランス代表のファビアン・ガルチエ ヘッドコーチ(以下、HC)はメンバーを発表した。前節のイングランド戦での敗戦を受け、大きくメンバー構成を変えてきた。

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 スターティングの第1列は、先の2試合に引き続き、左PRジャン=バティスト・グロ、HOペアト・モヴァカ、右PRウイニ・アトニオで変わらないが、リザーブは右PRジョルジュ=アンリ・コロンブに代わってベテランのドリアン・アルデゲリが入り、左PRシリル・バイユ、HOジュリアン・マルシャンと、トゥールーズトリオがベンチで控える。

 第2列はウエールズ、イングランド戦と連戦していたエマニュエル・メアフーが肺感染症で欠場となり、リザーブだったミカエル・ギヤールがスタートし、負傷から戦列復帰するチボー・フラマンとコンビを組む。ベンチには今大会初選出のロマン・タオフィフェヌアが控える。

 第3列は前節からの継続で、FLフランソワ・クロス、FLポール・ブドゥアン、NO8グレゴリー・アルドリットがスタートし、FLオスカー・ジェグーと、LO/FL/NO8のアレクサンドル・ルマットが控えに。さらにパワフルな仕事人FLアントニー・ジュロンも復帰してきた。

 SOにはトマ・ラモスが選ばれ、SHアントワンヌ・デュポンとのコンビでゲームをコントロールする。CTBのヨラム・モエファナとピエール=ルイ・バラシのコンビは継続。両翼にはルイ・ビエル=ビアレとテオ・アティソグベの若手コンビが並び、最後列にはレオ・バレが復帰した。

 注目されるのはベンチ構成だ。BKの控えはSHマキシム・リュキュ1人で、FW7人+BK1という布陣。南アフリカを思わせる、フランス代表史上初の試みだ。

 会見では、WTBダミアン・プノーの不選出についての質問が続いた。負傷期間、または意図的に休養させた時期を除き、これまで全試合で先発出場していただけに話題を呼んでいる。

 ガルチエHCは、メンバー選考は様々なオプションを考慮した結果、最もパフォーマンスの高いチームを選ぶということ、プノーへのスタッフの信頼は揺るがないこと、そして本人とは2時間に及ぶ話し合いを行ったことを明らかにした。

「今回の選考は、もちろんイタリア戦にフォーカスしたものだが、2027年までの長期的なビジョンも含まれている。チーム内の全てのポジションの競争を活性化させたい」

 そう語る指揮官は、アティソグベのパフォーマンスを高く評価する。

「テオ・アティソグベは昨夏の南米遠征以来、質の高いパフォーマンスを見せており、代表でも、彼の所属するポーでも私たちの期待に応えている」

 昨年11月の日本戦では、FLシャルル・オリヴォンがメンバーから外され、CTBガエル・フィクーがリザーブになった。NO8グレゴリー・アルドリットはアルゼンチン戦をスタンドから観戦した。1期目ガルチエ体制では考えられなかったことだ。マネージメント方法が変わったのだ。

「1期目は、チームを作り上げ、集団としての経験を積み、能力を高め、組織やノウハウを構築し、自信を築き、フランスで開催されるワールドカップ(以下、W杯)に行ける可能性のある選手を中心にプロジェクトを展開した。4年間で既に良い基盤が築けており、これをさらに強固にしたい。今はより競争、切磋琢磨というモードになっている。このチームでプレーするためには、パフォーマンスを発揮する必要がある」とガルチエHCはマネージメント方法の変化を認めた。

 今回、再びラモスが背番号10をつける。ウエールズ戦でレッドカードを受け、3試合出場停止になったSOロマン・ンタマックだが、講習参加により出場停止は2試合に軽減された。代表スタッフは前節のイングランド戦(2月8日)で1試合、さらに2月15日のトップ14の試合でもう1試合を消化することを目論んで、ンタマックを代表チームからリリースした。

 しかし、シックスネーションズ側はこれを認めなかった。「代表チームは14人の選手を『プロテクトされた選手』として指名でき、指名された選手はトップ14に出場しない」というフランス協会とトップ14の間で結ばれた協定があり、これまでンタマックは常に『プロテクトされた選手』だったこと、1月25日のトップ14開催時もリリースされるメンバーに入っていなかったこと、さらにプレミアシップはこの時期休止しており、フランスの選手がトップ14の試合を出場停止処分のカウントに入れるのは公平性に欠けることが理由だと『ミディ・オランピック』が報じている。

 また、「マチュー・ジャリベールがチームに定着できない状況で、今後どのように彼をプロジェクトに関与させるのか?」と記者から問われると、ガルチエHCは「ふっ」と笑みを浮かべながら答えた。

「これはフランス代表チームだ。フランスにはおよそ30万人の競技人口がいる。30万人全員を入れたいところだが、それは不可能だ。選ばれた選手は皆、選ばれるに値する実力とポテンシャルを持っている。レオ・バレは11月のアルゼンチン戦で素晴らしいパフォーマンスを見せ、そしてクラブ(スタッド・フランセ)でも活躍している。脳震盪で離脱していたが、先週末(2月15日)のスタッド・フランセの試合で戦列復帰し非常に良いゲームをした。レオは12番もできる選手なので、必要に応じてオプションにもなる。これらは選択であり、オープンな決断だ。重要なのはマチュー(ジャリベール)をケアすること。ローテーションに慣れる必要がある」

 そして、FW7人+BK1人のベンチ構成については、

「リスクがあるが、戦術的な理由によるものだ。イタリア代表のゴンザロ・ケサダHCはチームの顔を変えた。イタリアが非常に得意としているラックでの戦いで対抗するための戦略を試す」と説明した。

 BKに怪我人が出た場合の対応策として、リュキュがSOもゴールキックもできること、BKでプレーできるFLが2人(ブドゥアン、ジェグー)いることを挙げた。ガルチエHCが述べた以外に、デュポンはSO、ラモスはもちろん、ビエル=ビアレ、アティソグベもFBでプレーできる。モエファナは代表でWTBでも起用されてきたが、これは賭けである。

 昨年、イタリアとの対戦は、83分にイタリアのSOパオロ・ガルビシがPGを外して引き分けで終わった。

「前半にレッドカードが出て、取り返しのつかないことになってしまった。あのチームは私たちをミスに追い込んだ。ケサダHC就任以来、彼らはボールの所有時も、守備時も、全てのボールに対して非常に闘争的だ。それが私たちを苦しめた。常に全力で挑む彼らの姿勢は、対戦する全てのチームを苦戦させている」と、ガルチエHCはイタリアの脅威を改めて強調した。

 さらにケサダHCはフランスで選手として7年、コーチとして13年の経験を持ち、フランスを熟知している。フランスの今回の大きなメンバー変更、そして「7+1」のベンチ構成がどのような結果をもたらすのか、注目が集まる。

 ところでこの試合、フランス代表チームの23人中11人がトゥールーズの選手になった。イタリア代表にもWTBアンジュ・カプオッゾがいる。SHマルタン・パージュ=レロも2年前からリヨンでプレーしているが、13歳でトゥールーズのジュニア部門に入団し、ンタマックと共にトゥールーズで育った選手だ。

 またこの試合に先立ち、イタリアラグビー界のレジェンドで(142キャップ、キャプテンとして94試合、W杯5大会出場)、フランスのトップ14で17シーズン戦い、現在トゥーロンでラインアウトコーチをしているセルジョ・パリッセのキャリアを讃える式典が行われる。

フランス代表チーム イタリア戦メンバー

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