国内 2025.01.02

初の選手権決勝行きへ。京産大・石橋チューカ、歴史を変えるための日常。

[ 向 風見也 ]
初の選手権決勝行きへ。京産大・石橋チューカ、歴史を変えるための日常。
LO石橋チューカ[京都産業大学](撮影:向 風見也)

 ラグビー選手にとっては食事もトレーニングだ。

 京産大2年の石橋チューカは、炭水化物をこまめに摂る。毎日の激しいトレーニングで痩せてしまわないようにするためだ。

 2024年に選出された20歳以下日本代表、次世代の日本代表を鍛えるジャパンタレントスコッドで受けた栄養指導をもとに、エネルギー源を口にする「回数とタイミング」にこだわる。

「朝400グラム、昼は600グラム、練習前に200グラム、練習後にゼリー。夜に600グラム。夜食で(米を)1合…」

 おかげで春から秋にかけ約6キロ増。かねてハードワーカーとして鳴らす石橋はいま、公式サイズを身長190センチ、体重97キロとする。FW2列目のLOを主戦場とする。

 ’25年以降はジャパン入りも期待される。しかし本人は、あえてそれとは違う指針を掲げる。

「(試合ごとに)目標を立てて、それに集中する。試合の時に変なことを考えてしまうと、(よい)プレーが出せないので」

 この思考法を得たのは11月頃。折しも参戦していた関西大学Aリーグで関西学大、天理大に連敗し、連覇を3で止めた。

 万能型BKで共同主将の辻野隼大は、当時のチームはまとまりを欠いていたと見る。例年よりもタレントが揃う一方、それぞれが各自の解釈でプレーして連携を乱していたようだ。

 まとまりをもたらすべく、辻野は「自分が一番、身体を張ることにフォーカス」。仲間に言葉で訴えるより、あるべき姿を行動で示した。首脳陣に直談判し、控え組にあたる「Bチーム」のゲームにも出た。

 石橋もまた、苦境を抜け出すために課題を限定した。ひとつひとつのゲームに際し、自身がすべき働きを項目化。当日はそれをやり切る。

 いまは「キッカーにプレッシャーをかける。インパクトタックルに入る。キャリーでゲイン(突破)する」などがメインテーマだ。

 12月から大学選手権に参戦する。青学大、大東大を順に撃破し、4シーズン連続での全国4強入りを決めた。新年1月2日に東京・国立競技場である準決勝では、はじめてのファイナル行きを目指す。

 対するは早大。昨季は準々決勝で破った相手だが、今季は関東大学対抗戦Aで1位と充実している。チャレンジングなカードを前に、石橋は改めてタスクを整理している。

 ひとつめの「キッカーにプレッシャー」は、向こうの新人司令塔である服部亮太を念頭に置いてのものだ。

「僕がチャージでプレッシャーを与えることを、イメージしてきた」

 ふたつめの「インパクトタックル」を成立させるべく、12月31日の全体練習後は4年生FLの日吉健と1対1でタックルセッションをおこなう。いつも欠かさないメニューだそう。本番では、強烈な一撃で防御を引き締める。

 さらには、日本代表になった、対するFBの矢崎由高へ組織的に圧をかけるつもりだ。持ち場のスクラムやラインアウトでも、プレッシャーを与え続けたい。

「突破できなかった壁を乗り越える…。歴史を塗り替える…。そういう試合にしていきたいです」

 出身の兵庫・報徳学園高では3年時、クラブ史上初の全国大会決勝を経験している。その頃にあったわくわくした感情を大学でも味わうべく、己の仕事を全うする。 

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