王者ブレイブルーパスが開幕2連勝した日にわかったこととは。
神様、仏様、リッチー・モウンガ様。もしそんな空気があるのだとしたら、払しょくしなければいけなかった。
国内リーグワン昨季王者の東芝ブレイブルーパス東京が動いたのは12月29日。本拠地の東京・味の素スタジアムにスターダストプロモーション所属の『私立恵比寿中学』を興行に招いた午後のことだ。
三菱重工相模原ダイナボアーズ戦と開幕2連勝を争った。入団初年度の昨季にリーグMVPとなったモウンガはこの一戦で、ゴールキッカーの座をFBの松永拓朗に託した。
トッド・ブラックアダーヘッドコーチはこうだ。
「きょうは、特にパフォーマンスが悪かったからといって替えた選手はひとりもいません」
権限移譲はそれに止まらない。各自のポジショニング、立ち位置を適宜変えながら49-8とリードして突入のハーフタイムに、ニュージーランド代表の司令塔だったこの人はお役御免。後半からは、この秋日本代表となったばかりの松永がモウンガの位置を埋めた。ブラックアダーは説く。
「モウンガは、今週を通して足に張りがあったのです」
隊列に手を入れてからも、ブレイブルーパスは攻めの鮮やかさとセットプレーの優位性を保った。ただ、フィニッシュに至るのが難しくなった。
リスタート早々に繰り出した連続フェーズは、敵陣22メートル線上での反則で止めた。56-8としていた後半10分頃には、自陣深い位置から大胆にアタックしながらハーフ線上右でインターセプトされた。
次第にダイナボアーズは、レッドカードで空いた穴を埋めるなどして息を吹き返してゆく。ブレイブルーパスは守りでペナルティーを重ね、トライラインとほぼ背中合わせの状態になることが続いた。
フィールドには各国代表経験者を多く残しているのに、大量点差をつけた前年度9位の伏兵に何度も好機を作られた。
ブレイブルーパスは61-8で白星を得ながら、希代のプレーメーカーの存在感、本当の意味で全選手が息を合わせる難しさを再認識できたと言える。
ゴールキックを9本中8本決めた松永が「相手にボールを獲られるシーンもあった。蹴るタイミング、サインチョイスを見直したいです」と話す傍ら、この日が今年度初陣のLO、ワーナー・ディアンズは集団の意思決定についてこう提案した。
「アタックができないところでアタックしていた。もう少し敵陣に(キックで)ボールを入れて、ディフェンスで我慢してターンオーバーする(より敵陣ゴールラインの近くで球を奪う)ほうが…(いい)と僕は思っていて」
18分を残して退いたNO8のリーチ マイケル主将は、こう述べる。
「(消化不良をなくすべく)アタックコーチと話して、修正していきたいです」
指揮官は、思うままに事を運べなかったことさえ財産になると言いたげだ。
「リザーブにゲームタイムを与えられた。今後、怪我が出た場合への準備もできました」
今季は第2節までの全12試合中7試合が10点差以内で終わり、同5試合において前年度の順位で下回る側が勝っている。何せ各2節分増とスケジュールは長期化。枢軸を欠いて勝てるだけの戦力強化は、優勝を目指す全てのクラブにとって急務となる。
リーチは「今年のリーグワンは非常に面白く、タイトなゲームが多く、どんな相手にも真剣に準備しないといけないと感じた。(次戦でも)いいプレッシャーをかけられるようにしたいです」と、年明けの第3節を展望した。