国内 2024.10.30

将来は選手を「食」で支えたい。中村隼人[坂出第一/LO]

[ 明石尚之 ]
将来は選手を「食」で支えたい。中村隼人[坂出第一/LO]
ラインアウトのジャンパーで活躍。豊富な運動量でキックチェイスなど泥臭いことも愚直にこなす(撮影:BBM)

 香川県代表として4度の花園出場歴を持つ坂出第一には、普通科のほかにユニークなコースがある。
 そのひとつが食物科だ。

 ホテルやレストランのシェフ、管理栄養士などを目指し、1年時から専門的な指導を受けられる。有名ホテルの総料理長が、各学年で毎週おこなわれる調理実習を担当するそうだ。

 今夏に菅平高原でおこなわれた「ビッグマン&ファストマンキャンプ」に参加した中村隼人も、その食物科に学ぶ。

 188センチ、64キロの2年生。背の高いトールマンの枠で招集された。
 小学6年ですでに172センチあった身長は、いまも伸び続けている。

 地元の大阪から、海を渡った理由を話す。

「お父さんが堺ラグビースクールのコーチをしていた影響で、自分も年少からラグビーをやっていました。それからはずっと日本代表になることが夢で頑張っていたのですが、中学に上がっても体重があまり増えなくて…。自分と同じような悩みを持っている選手がいたら、そのサポートに回れる人になりたいと思いました」

 食物科では日本料理だけでなく、スペインやイタリアなどの西欧料理も学ぶ。
 得意料理を問えば、いま学んでいる最中のフランス料理から「ムニエルですかね」とはにかむ。

 卒業したら大学を経由せずに就職する生徒がほとんどだから、先生たちの指導にも熱がこもるという。
「調理実習は厳しいです。時間通りに動くであったり、大人の対応を求められます」

「大阪よりも空気がおいしい」と笑う香川での生活は、学生寮が拠点だ。
 近年はコロナ禍の影響で部員集めに苦戦し単独で組むのがやっとだが、2年生には大阪の中村に加えて福岡から1人、1学年下の後輩には兵庫から2人、愛媛から1人の県外生も入部している。

「ご飯は基本、自分たちで作っていますが、昼の弁当は食物科の生徒が入る料理研究部が作ってくれるんです。一日に摂らないといけない野菜など栄養を細かく考えてくれていて、おかげで練習や学校を体調不良で休むことはほとんどありません」

 その甲斐もあってか、中学ではなし得なかった肉体改造に成功している。
 まだまだ線は細いが、入学時からは体重は約10キロ増量した。

「入学したときは55キロでした。今、64キロまできたので、高校の間に80キロまであげたいです。身長がある分、80キロでもスピードを落とさずに走れると思っています」

 ビッグマン&ファストマンキャンプに参加して、目線はまた一段上がった。
「こういう場所に呼んでいただいたので、大学まで続けて、代表選手も目指したいです。(卒業とともに取得できる)調理師免許は消えないので、ラグビーのキャリアを終えた後に料理の道に進めたらなと」

 目下の目標は3年ぶりの花園出場だ。西の聖地は毎冬、足を運んでいた憧れの場所でもある。
「3年生は2人だけですが、2人ともコベルコのU18四国代表にも選ばれていてめちゃくちゃ上手いです。今年こそ狙えると思っています」

 3校で争われる香川県予選は11月3日から始まる。合同チームとの初戦に勝てば、ライバル・高松北と決勝でぶつかる。

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