海外 2024.10.16

【トップ14】トゥールーズに復帰のデュポン、いきなりの大活躍で期待に応える。

[ 福本美由紀 ]
【トップ14】トゥールーズに復帰のデュポン、いきなりの大活躍で期待に応える。
久しぶりの15人制ながらさっそく大活躍を見せたデュポン。あざやかに連敗を止めてみせた(Getty Images)


 トップ14の第6節。トゥールーズ対クレルモンで、後半5分に背番号21をつけたアントワンヌ・デュポンがピッチに入った。スタンドから「デュポン! デュポン!」の大歓声が起こる。

 みんな待っていた。トゥールーズのチームバスがスタジアムに着くと、8台のカメラがデュポンを追った。そこで選手を待っていたサポーターの拍手も、デュポンが通ると一段と大きくなった。ウォーミングアップの時も、カメラはデュポンを追い続けた。

 デュポンの15人制の試合は、6月28日のトップ14の決勝以来。最後にホームのエルネスト・ワロンでプレーしたのは、さらに4月27日まで遡る。地元のファンも期待を膨らませながらこの時を待っていた。

 デュポンは期待を裏切らなかった。出場して4分後、相手の一瞬の隙を突きゴールラインを越えてまずひとつ。その6分後にWTBアンジュ・カプオッゾからパスを受け取りもうひとつ。さらに3分後にカプオッゾがキックしたボールに猛スピードで追いつき、そのままゴールに持ち込んでまたひとつ。9分間で3トライを挙げ、スタジアムを大いに沸かせた。何よりも、本人が心底プレーを楽しんでいるのが感じられ、見る方にとっても痛快だった。

「最初のトライの状況は前半にもあった。ナオト(齋藤)がトライを取れなかったと言っているんじゃない。ナオトもボールにピッタリついて、勢いを与え、いいゲームをしていた。目の前にチャンスがあっても、多くの選手はチームの戦術の中でプレーしようとするけど、アントワンヌは戦術から離れてチャンスを掴みに行くことができる。いるべき時にいるべき所にいて、味方のプレーを得点に繋げる。あとは全体の連携を取り戻して、もっとチームでプレーできるようにならなくては」と言うのは、スキルコーチのダヴィッド・メレだ。

 この1〜2年、15人制では周囲を生かすことに徹していたデュポンだったが、この日は自らどんどんトライを取りに行った。7人制のオリンピックの試合の勢いのままだった。

「彼が大きく成長したセクターを挙げるとすればラックでのプレー。7人制では正確さと速さが求められる。また、ボールキャリアーのサポートや、アクションを次から次へと続ける能力、そしてスピードもアップした」とメレコーチ。さらにコンプリートな選手になった。

 敵にとっては脅威だが、味方にとってはデュポンがそこにいるというだけで安心だ。この試合の前にユーゴ・モラ ヘッドコーチは、「アントワンヌから他の選手が自信を得て10〜15%アップする」と言っていた。チームは前半2トライを取った。1本はカプオッゾの個人技、もう1本はゴール前のモールから。しかし、ハーフタイムにFLフランソワ・クロスが現地中継局のマイクに「20-0でスコアはいいが、少なくとももう2つチャンスがあったのに取りきれなかった」と反省していたように、決め手に欠けていた。「僕たちのミスとペナルティーでトゥールーズに得点をプレゼントしているようなもの」とクレルモンのSHセバスチャン・ベジーも裏付ける。

 しかし、デュポンが入ったことで、それまで繋がらなかったパスが繋がった。チームが引き締まった。勢いが出た。

 試合後、PRダヴィッド・アイヌウがその変化を説明する。

「アントワンヌが入って、僕たちのテンションが上がったんだ。彼がいると、大胆にプレーして攻めることができて、全員にトライを取るチャンスが来るってわかってるから」

 48-14で快勝した。チームに欠けていたピースが揃い、連敗も止まった。11月のテストマッチで代表選手が招集されるまでに、いい流れを作れそうだ。

 気になるのは、前半の終わりにふくらはぎの痛みを訴えて負傷退場したSOロマン・ンタマックだ。肉離れと診断され、復帰まで少なくとも3週間は必要と見られており、11月9日のフランス対日本には間に合わないだろうと報じられている。

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