同世代の日本代表入りも刺激。京産大・石橋チューカ、快勝にも満足せず。
京産大2年の石橋チューカは、日を追うごとに逞しくなる。
初めて日本代表の候補合宿に呼ばれたのは今年2月。その後、エディー・ジョーンズヘッドコーチら代表首脳の訓示、若手育成機関のジャパンタレントスコッド(JTS)でもらった助言もあり、食事とトレーニングに注力してきたのだ。6月の時点で「5~6 キロ」増だ。
9月22日、東大阪花園ラグビー場。以前よりも胸板を厚く、腰回りを太くした20歳が赤と紺の6番をつけて関西大学Aリーグの開幕節に登場した。公式サイズを「190センチ、97キロ」とし、FLで先発フル出場を果たした。
再三、接点へ身体を差し込み、対する同大を97-24で下した。リーグ4連覇と初の大学日本一へ好発進も、満足はしない。勝負の流れが傾いていた終盤に、モールで失点したのを引き合いに出して述べた。
「いい内容で勝てたんですけど、モールディフェンスのところが課題かなと。(向こうの塊の隙間を見つけて)入るところの判断が遅くて。そこを改善できたらもっとよくできる」
元ジャパンで名キッカーだった廣瀬佳司監督は、「前半から攻撃的に、いいスタートが切れた」。シーズン前には、計5名の部員が正代表関連のキャンプやJTSへ参加している。指揮官は喜ぶ。
「いい経験をして、トップ選手が何をしているかも学んで帰って来てくれました。練習へ取り組む姿勢を含め、チームにいい影響を与えてくれています」
そのひとりが石橋だ。トップのスタンダードに触れて身体作りへの意識を高められたのは、シーズンイン時の体躯から明らか。さらに現代表主将のリーチ マイケルからは、計画的に準備することの大切さを教わったという。
7月に20歳以下(U20)日本代表として臨んだU20トロフィーでも、「大きく成長できたと思います」。上位大会への昇格を逃したのは悔やまれるが、U20ウルグアイ代表との3位決定戦でゲーム主将を任されたのがよかった。この日は75-22で勝利した。
将来的にチームリーダーを任されたいとしていただけに、同世代の俊英たちの先頭に立ったことを前向きに捉える。夏に大学へ戻り、手応えを語った。
「それまでは(周りに)ついて行く側でした。引っ張っていく側になった時に『自分にできるのだろうか』と不安にもなりましたけど、(試合中に)自分の考えに沿って発言できるようになった。それをチームに帰っても継続できています」
まだまだ高みを見据える。
夏合宿中のある練習試合の直後、印象的なやりとりがあった。フィールドで堅実なタックルを重ねながら、記者にそのことを問われた石橋本人は「…タックル、決まってましたか?」と苦笑していた。
ちなみにこのゲームでは、危険地帯へ先回りするカバーリングを披露してもいた。ところがこの領域へも、本人は「ちょっとした(決断の)遅れを改善したい」と反省した。
自身に課すハードルの高さをうかがわせた。
視線の先には、ライバルの躍進がある。
同学年のFBで早大在籍の矢崎由高は、すでに代表戦デビューを飾っている。自軍の同期で報徳学園高時代から仲間だったSHの村田大和は、8~9月のパシフィック・ネーションズカップに挑む日本代表の活動へも加わっている。
その隊列に並ぶには、もっとパワーで相手を圧倒するのはもちろん、もっと素早く起き上がれて、もっと素早く判断できて、もっと素早く次の仕事に移れるようになりたい。石橋は誓う。
「同じ場所でプレーをしていた人(村田)がワンランク上の日本代表に入っていることには尊敬もしていますし、自分も『早く追いつきたい』と切磋琢磨できる。(矢崎は)凄い。ひとつ、遠い存在になったと感じます。自分がもっと前に出て、チームを引っ張らないと(代表入りへの)チャンスはないと思っています」
簡単ではないかもしれぬ目標を叶えるべく、真っ先に育みたいのは力強さだ。
同大撃破へ4トライを奪った味方NO8のシオネ・ポルテレのようなインパクトを、攻守で示したい。かくして桜のジャージィに迫る。
「フィジカルがないと言われるのはだめです。特にディフェンスの部分で、身体を当てて頑張っていきたいです」
29日には奈良・天理親里競技場で摂南大とぶつかる。