レジェンドも太鼓判。日本代表・藤原忍の収穫と課題
動く。仕掛ける。意表を突く。
パシフィックネーションズカップに参戦中の日本代表にあって、8月下旬からの予選プール2戦すべてでSHに先発したのは藤原忍だ。
身長171センチ、体重76キロの25歳。攻守の出足に強気な性格をにじませ、2連勝を下支えしている。欲しい結果を積み上げるこの人は、かねてこう語っていた。
「試合終盤のしんどいなかで、最初(開始早々)にできていたことができるか。どんどん精度を下げるんじゃなく、最初の精度を80分間、続ける。それには練習から(意識)。目に見えないところですけど、そこを高めていきたいです」
敵陣の深くでもらったペナルティーキックから速攻を仕掛け、HOの原田衛のトライをおぜん立てしたのは前半38分だ。直後のゴールで24-10とするまで、速いテンポでパスをさばいた。一方、味方からのコールを踏まえて高い弾道のキックもチョイスした。
約9年ぶりに復帰したエディー・ジョーンズヘッドコーチが『超速ラグビー』というコンセプトを打ち出す中、集団的なスピードを意識しながら適宜、緩急をつけようとした。
31-24と7点差に迫られた直後の後半20分頃は、敵陣中盤での連続攻撃をリード。向こうの反則を誘い、SOの李承信のペナルティーゴールで34―24とした。
勝負どころで動きの「精度」を保ったのだ。
24分で退き、41-24で2連勝を決めるのを見届けた。収穫と課題を聞かれれば、このように答えた。
「球出しのところは集中して、コミュニケーションを取って、やりたいことができる。あとは『いま、どういう状況なのか』といったところの判断ができたら、より流れを変えられるのかなと思っています」
勢いよくフェーズを重ねる際の連携、パスワークには満足している一方、勢いをつけるべきか、自重すべきかの判断にはまだ改善の余地があると言いたげだ。
圧力下における冷静さを獲得したい。
「ラック(接点)にプレッシャーが来ているからといって少し焦って、(攻撃布陣上に)ひとりしかいないところに(球を)放ることもあった。落ち着かせるところは落ち着かせないと。僕が急いでいたら、それを(相手や味方にも)感じさせてしまう」
今年初めて代表に入った藤原へ、期待を口にするのが堀越正巳だ。現立正大監督で、おもに1990年代にジャパンのSHとして活躍。今回のアメリカ代表戦前には、登録メンバーのジャージィ授与式を任されていた。ジョーンズ側からの要請による。
高速展開が持ち味だった堀越は、ジョーンズの目指すスタイルに概ね賛同。攻めの起点となるSHが自在に駆け回るのを好む。件のセレモニーの折、ゲームに臨む後輩たちには「お願いだから、藤原を止めるようなことをしないで欲しい」とリクエストを出した。
藤原の周りとの関係性を観察したうえで、こうエールを送る。
「いいキャラクターですね。普段は皆からいじられていて、試合になったらちゃんとファイターになっている」
齋藤直人、福田健太といったワールドカップ経験者が不在のいま、スターターを担う藤原は「しっかりオーガナイズ(全体を統率)してやっていかないといけない」。グループ内での存在感を高めたい。15日、決勝ラウンド準決勝のサモア代表戦でも9番をつける。