日本代表 2024.09.07

本拠地でゲーム主将。日本代表の坂手淳史が感じる新鮮味。

[ 向 風見也 ]
本拠地でゲーム主将。日本代表の坂手淳史が感じる新鮮味。
会見に臨む坂手淳史(撮影:向 風見也)

 強くて大きな相手へ、鋭く、速くクラッシュしたい。ここ数日で整備した防御で向こうのストレートな攻撃を跳ね返し、キックの蹴り合いを経てテンポよく継続できたらよい。

 ラグビー日本代表の、それが青写真か。9月7日、埼玉・熊谷ラグビー場でパシフィックネーションズカップの予選プール2戦目をおこなう。世界ランクで5つ下回る19位のアメリカ代表と、決勝ラウンドへの首位通過を争う。

「アメリカ代表は身体が大きい。フィジカルを全面に押し出して、日本代表にプレッシャーをかけるところは想像がつく。それに対してFWはしっかり(自軍)ボールを出して、スピードを持ってアタックし続ける。もしプレッシャーがかかったときにどうするかも含め、チームに落とし込んでいきたいです」

 こう意気込むのは坂手淳史。前日の会場練習後に話した。

 攻めては25歳の藤原忍、23歳の李承信といった若き司令塔団が指示を出し、守っては25歳でFLの下川甲嗣が組織を統括。空中戦のラインアウトでは、22歳の長身LOであるワーナー・ディアンズがサインを出す。

 このように若手の多い隊列にあって、31歳の坂手はHOで先発する。

 現地時間8月25日のカナダ代表戦(バンクーバー/〇55-28)に続き、ゲーム主将も担う。勝負の綾を逃さないよう、全体に目を光らせる。

「ゲームのスタートでどう勢いをつけさせられるか。勢いを失ったり、流れが向こうに行ってしまったりする時間をどう作らないようにするか。あるいは、もしそうなってしまった場合にどう改善し、チームを前進させるかを考えています」

 2016年から約8年続いたジェイミー・ジョセフ前ヘッドコーチ体制は昨年、解散した。今年からはエディー・ジョーンズヘッドコーチが、約9年ぶりに復帰。ジョセフ時代の常連組の多くが故障などで辞退するなか、引き続き選出の坂手が感じるのは「新鮮」さだ。

 周りのメンバーが目新しいからだけではない。既存のものとは異なるコンセプトのラグビーを味わえる意味でも「新鮮」なのだという。

 ジョーンズは『超速ラグビー』を謳う。坂手らFWには、攻防の境界線へ走り込む動きを求める。勢いをつけてパスをもらったり、効果的なおとり役として味方にスペースを与えたりするのが狙いだ。

 敵が視界に入る中で、かつ動きながら球を扱うのは、周りに誰もいないところで止まってボールを受け取るよりも難儀に映る。

 坂手も「最初は難しかったですね。9番(パスを投げるSH)もそれに慣れていなかった」。時間をかけ、新たな型になじむ。

「(6月の本格始動から)数か月、練習してきて、大分、うまくなってきた。僕らの(突っ込む)ところで少しのゲイン(突破)しかしなかったとしても、それを積み重ね、そこからいいボールを9番に出し、9番がさばき続けることによってアウトサイド(外側)、逆サイド、(守備網の)裏にオプションができる。ブラッシュアップしながら、教えてもらいながらやっている最中です」

 かねてハードタックラーとして鳴らしてきたが、『超速ラグビー』におけるランプレーに触れて原点に立ち返れたという。

「エディーさんのアプローチの仕方は『何が楽しくて、ラグビーを始めたのか』。それは、ボールを持って動くことだったと思い出させてもらって、もっとボールをもらいに行きたいようになるんじゃないかと(考えた)。初心に戻って、もっと前に行くことの楽しさを表現できるようにしたいです」

 今度の舞台は、主将を務める埼玉パナソニックワイルドナイツの本拠地でもある。普段の仲間は、近くのグラウンドでトレーニングしている。

「ワイルドナイツの皆にも頑張れと言ってもらったし、何人かはゲームを観に来てくれる。僕自身にとっては大事なゲームで、楽しみたい気持ちもあります。ただ、勝つために準備してきたものを出さなくてはいけないプレッシャーも感じています。まずは、自分のパフォーマンスを発揮します」

 こう語るファイターは、ナショナルチームにあっては3大会連続でのワールドカップ出場が期待される。もっとも本人は「ラグビーがうまくなりたい、もっと研ぎ澄ませたいと思ってやっている」。日ごとの進歩にフォーカスする。

PICK UP