日本代表ジョネ・ナイカブラの進歩。「連携がよくなった」
物静かな30歳。参加するラグビー日本代表では、9年ぶりに復帰のエディー・ジョーンズヘッドコーチからこう要求される。
「もっと隣の選手とコミュニケーションを取ろう」
ジョネ・ナイカブラ。身長177センチ、体重95キロの俊足WTBだ。指揮官の要求に応え、より周りと繋がるよう意識する。
6~7月のサマーキャンペーンでは、テストマッチ3戦に先発して1トライを挙げた。ジョーンズの掲げる『超速ラグビー』のコンセプトに倣い、ラック周辺の隙間へ鋭く走り込んだ。
キーワードに掲げるのは「ゴールドエフォート」。常にプレーをやめない心掛けを指す。
「自分にとっての『超速ラグビー』はスピード、テンポ、フィジカリティ。トレーニング中のメインフォーカスは、ゴールドエフォートです」
話をしたのは8月15日。宮崎での代表キャンプの6日目にあたる。
ワールドカップオーストラリア大会を約3年後の2027年に見据え、地に足をつけていた。
「まず直近のゴールは毎週、毎週の試合に向けてベストを尽くすことです。長い射程での目標は、常にフィットさせた、怪我のない身体作りです。自分の身体をマネージメントし、ひとつひとつ、試合を積み重ねていく」
‘14年に来日した。最初に入った摂南大では怪我に泣かされ、ポテンシャルを発揮しきれなかった。
それでも大学4年生だった’17年、7人制日本代表に選ばれた。好ランを連発した。すると、いま所属している東芝ブレイブルーパス東京(現名称)で採用をしていた望月雄太氏に資質を見込まれた。事実上のセレクションを受けられることとなった。
その年の夏、長野県上田市菅平高原でのチーム合宿を終えると、大阪の寮へ戻らず望月と府中に出向いた。ブレイブルーパスの練習に混ざった。それをテストの代わりとした。
人生を決める季節。本人は、道中でごちそうになったカレーの味が忘れられないという。’18年にブレイブルーパスの一員となってからは、グラウンド近くの定食屋で「ブリカマ」か「鮭カマ」を注文する。
日本代表になったのは‘21年だ。そのおよそ2年後にはテストマッチデビューを飾ったうえ、ワールドカップフランス大会で健脚を披露した。
帰国後の国内リーグワン1部でも、要所で活躍した。埼玉パナソニックワイルドナイツとのファイナルでは、勝負どころにおけるフィニッシュ、ジャッカルで24-20と白星を掴んだ。クラブにとって14季ぶりの優勝に喜んだ。
「周りに助けられた部分もありますが、ワールドカップでの経験はリーグワンでの働きをよくすることに繋がっています。今後もフィットネスを高くして、いいパフォーマンスをしたいです」
今年6月に本格始動したジョーンズ体制の日本代表は、若手を登用する。複数のフランス大会組が辞退する中、大学生を含めたフレッシュな顔ぶれとなっている。
ここまで非テストマッチを含め1勝4敗と負けが込んでいるが、ナイカブラは今後が楽しみと言いたげだ。
「過去の代表とのもっとも大きな違いは、若いメンバーが増えていることです。次のワールドカップに向けてビルドアップしているところ。いまもっともやるべきことは、選手ひとりひとりがエディーのゲームプランに適応すること。またチームビルディングです。もっとお互いが知り合い、学び、ワークするようコーチングされています」
自身の役目や技もアップデートする。
「いまのジャパンのキャンプで学ぶことで、ボールを持っていない時のワークレート(仕事量)が上がり、それによってボールタッチ数が増え、9、10番(味方の司令塔団)との連携がよくなったと思っています。また、キックもうまくなったかなと」
現地時間8月25日、バンクーバーでカナダ代表とぶつかる。環太平洋、北米の国々とのパシフィック・ネーションズカップのプール初戦にあたる。