国内 2024.07.28

九州大学ラグビークリニック with 伊都ヤングラガーズ。伊都に広がるラグビーの輪

[ 李 鍾基 ]
九州大学ラグビークリニック with 伊都ヤングラガーズ。伊都に広がるラグビーの輪
クリニックを終えた九州大学ラグビー部と伊都ヤングラガーズの全体写真(撮影:李鍾基)

 7月27日、来年で創部100周年を迎える九州大学ラグビー部が、地元の伊都ヤングラガーズ(以下、伊都YR)を迎えて、ラグビークリニックを開催した。
 同じ伊都地域を拠点とする両チームが、このような協業をするのは今回が初めてだった。

 開催場所の九州大学伊都キャンパスのグラウンドは、子供たちから大人まで多世代の笑顔で溢れた。
 午前9時から開始したクリニックは、伊都YRが主導する1部、九大ラグビー部が主導する2部、そしてこの日イベントサポーターとして招かれた築城昌拓氏(元セブンズ日本代表)によるふれあい交流会の3部構成でおこなわれた。

イベントサポーターの元7人制日本代表の築城昌拓氏(右端)。現在ラグビースクールの運営の他にも、アジアのラグビー普及事業を展開している

 今年で創部50周年を迎える伊都YRは、地元では「伊都ヤン」の愛称で親しまれる。
 10年前は小学生全学年で15人に満たない時期もあったが、現在は中学生も含めると総勢125名の大所帯のラグビーチームだ。
 過去2回のワールドカップにおける日本代表チームの快進撃が追い風となり、チーム関係者の地道な活動が実を結んだ。

 伊都YRの浦伊三夫会長は、「九州大学の素晴らしいグラウンドでラグビーができることはとても有難い機会です。大学生と触れ合えることも子供たちにとっても大切なこと」と目を細めた。

2021年に全面改装された伊都キャンパスの総合グラウンド。小学生低学年も大学生と一緒にタグラグビーを楽しんだ(撮影:李鍾基)

 九大の伊都キャンパス移転計画は、2005年から段階的に始まり2018年に完了した。ラグビー部は以前までの箱崎キャンパス(福岡市)から約10年前に移転した。
 現在、九州学生ラグビーリーグBに所属し、Aリーグへの昇格と全国地区対抗大学ラグビー大会への出場を目標に掲げている。
 毎年7月に東大、12月に京大との定期戦がおこなわれ、今年からは鹿児島大との定期戦を復活させた。日本でも有数の歴史を誇る国立大学のラグビークラブだ。
 現在、選手29名とマネージャー8名が所属し、主に学生主体で部を運営している。

 今回のクリニックでリーダーを務めた山田顕次郎(浦和高校出身、工学部4年)は、「子供たちとラグビーができて初心に帰ることができました。準備するにあたっては大学や伊都YRのコーチの方々、そのほか多方面との調整は大変でしたが、とても貴重な経験でした」と顔を綻ばせた。

手前で小学生のタックルを受けるのが山田顕次郎。ラグビークリニックのリーダーを務めた(撮影:李鍾基)

 九大ラグビー部の堀内恭彦監督は、「大学生が子供たちをコーチングすることや、ラグビースクールとの協業を通じて、視野を広げて成長に繋がることを期待しています。今後も地域との連携や社会貢献に継続的に取り組んでいきたい」と抱負を語った。

 クリニック終了後には、次の日に試合を控える中学生チームが大学生の胸を借りて、約30分程度のアタック&ディフェンスがおこなわれた。
 伊都YRの片山航大(中学2年)は「大きくて速い大学生を相手にすることで、全員で前に出てディフェンスしないといけないことを学べました」と話した。

九大ラグビー部の久保田健大キャプテン(農学部4年/右)と伊都YR中学チームの片山航大。閉会式ではお互いのチームに記念品が渡された

 CSR(企業の社会的責任)という言葉があるように、USR(University Social Responsibility: 大学の社会的責任)という言葉がある。

 近年、大学を取り巻く環境が大きく変化している中で、今後も大学と地域社会が連携することの重要性が増していくだろう。
 伊都地域におけるラグビーを通じた連携も、そのための有効な手段の一つになりそうだ。

グラウンド横の5連風車と伊都YRの垂れ幕が熱風に吹かれていた

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