各国代表 2024.07.09

フランスラグビーに衝撃。アルゼンチン遠征中の代表FBジャミネが人種差別発言でチームから追放

[ 福本美由紀 ]
フランスラグビーに衝撃。アルゼンチン遠征中の代表FBジャミネが人種差別発言でチームから追放
6月20日の国内でのトレーニングセッションに参加していた際のジャミネ。ショッキングなニュースはただちに世界中に発信された(Photo/GettyImages)



 7月6日(日本時間7月7日)、昨秋のワールドカップで4位のアルゼンチンから若いフランス代表が敵地で勝利を収め(28-13)、幸先良いスタートを切った矢先のことだった。遠征に参加していたFBメルヴィン・ジャミネが、自身のインスタグラムのアカウントに人種差別発言をしている動画を投稿した。

「道で最初にすれ違ったアラブ人には、頭突きをくらわせてやる!」

 アグレッシブなトーンで何度も繰り返して言っている。あまりにも露骨で、AIで合成されたものかと疑ったほど、ショッキングな映像だった。

 本人はすぐにアカウントから削除したが、時すでに遅かった。フランスの強硬左派「不服従のフランス」党のセバスチャン・ドゥロギュ議員がXにその動画を投稿し、「ラグビー選手、メルヴィン・ジャミネの発言は言語道断、フランスラグビー協会とラグビー・クラブ・トゥロネにより厳しく罰されるべきだ」とコメントした。フランス時間19時33分だった。

 みるみるうちにリポストされ、世界中にその動画は拡散された。

 まず反応したのはトゥーロンだった。
「SNSに投稿されたメルヴィン・ジャミネが関与する動画について、ラグビー・クラブ・トゥロネはその発言を強く非難し、一切の関わりを否定いたします。開始された内部調査の結果は公表いたします」
 動画が投稿されて約1時間半後、フランス時間21時1分であった。

 続いてフランス協会も動いた。
「フランスラグビー協会は、メルヴィン・ジャミネの発言を断固として非難する。このような発言は私たちのスポーツの基本的な価値観に反するものであり、決して容認できない。よって、メルヴィン・ジャミネは、現在アルゼンチンに遠征中のフランス代表グループから即刻離脱いたしました。内部調査を実施し、これらの極めて重大な発言について明らかにし、適切な措置をとるものとする」
トゥーロンの声明から45分後、フランス時間21時45分だ。

 ジャミネの発言に関しては残念としか言いようがないが、関係機関の素早い対応とレイシスト発言を断じて許さない姿勢が評価されている。

 本人も謝罪のコメントをインスタグラムに投稿した。
「深く反省し、自分の発言を恥じています。皆様にお詫びを申し上げます。多くの人を傷つけ、不快にさせたことを理解しています。これらの発言は、決して私の価値観や、ラグビーフランス代表チームの価値観を表したものではないことを皆様にお伝えさせていただきます。いかなる形態であっても人種差別は容認されず、それは私の信ずるものに反します。フランス協会の制裁を受け入れ、本件を明らかにするために、協会の調査に協力します」

 そして一夜空けた7月8日、現地時間午前8時46分、フランスのプロリーグ運営団体であるLNRが声明を出した。
「LNRはメルヴィン・ジャミネの受け入れ難い発言を断固として非難する。ラグビーは、尊重、グループスピリット、利他主義、多様性の価値観を掲げた共生のスポーツである。LNRは、それぞれのプロラグビー選手が、この共生のアンバサダーとして行動してくれることを期待している。LNRは、代表チームから即刻離脱させたフランス協会の決断を支持すると共に、協会による内部調査の結果を待つ」

 フランスの法律で人種差別は禁止されており、このような発言では、最高で禁錮1年、罰金4万5000ユーロ(約7800万円)の刑事罰が課される可能性がある。

 ジャミネは、2021年夏のオーストラリア遠征でフランス代表デビューを果たし、正確なプレースキックと飛距離のあるロングパントで代表チームの15番に定着。その秋のオータムネーションズシリーズでNZに勝利し、翌年のシックスネーションズでは全勝優勝に貢献した。しかし、2022年夏の日本遠征の2戦目より試合メンバーから外される。

 2022-2023シーズン、ペルピニャンからトゥールーズへ移籍するが、負傷してその年のオータムネーションズシリーズには参加できず、トマ・ラモスが代表の15番に定着した。トゥールーズでもラモスがいるため思うように試合出場機会が得られず、2023年11月、トゥールーズとの契約終了を待たずに、家族のいる生まれ故郷のトゥーロンへ移籍し、昨季は16試合に出場した。今年のシックスネーションズでは代表に招集されなかった。

 今回のアルゼンチン遠征で代表15番への復帰を狙っていたが、第1戦は今年のシックスネーションズでデビューしたレオ・バレが背番号15をつけ、ジャミネは72分からの途中出場だった。

 離脱したジャミネに代わり、今季まで2部のグルノーブルでプレーし、来季クレルモンに加入する右プロップのレジ・モンターニュ(23歳、0キャップ)が代表チームに招集された。

 フランス代表は、現地時間7月10日(日本時間7月11日)に、アルゼンチンのモンテビデオでウルグアイと交流試合を行い、現地時間7月13日(日本時間7月14日)にブエノスアイレスで再びアルゼンチンと一戦を交える。

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