国内 2024.07.08

「世界を知ったからこそ満足できない」。セブンズ日本代表キャッパー、杉野太陽[九共大4年/WTB]の野望。

[ 明石尚之 ]
「世界を知ったからこそ満足できない」。セブンズ日本代表キャッパー、杉野太陽[九共大4年/WTB]の野望。
西軍の14番で先発。前半までプレーした(撮影:福島宏治)

 6月30日に関東ラグビー協会100周年記念試合として開催された東西学生対抗戦。西軍学生代表は関西Aリーグに所属する各校の主軸で大多数を占める中、九州学生ラグビーリーグから2人が選出された。

 その一人が九州共立大4年のWTB、杉野太陽だ。
 初めて「東のラグビーの聖地」秩父宮ラグビー場に立った。

 5000人を超える観客に見守られてのプレーに、「試合をしていて楽しかった」と表情を崩す。

 24-63と西軍が敗れたゲームは、特に杉野が出場した前半に12-42と圧倒された。
 外側にいる杉野までボールが渡る機会は限られたが、粘り腰を見せて相手に絡まれながら前進するなど力を示した。

「あれが精いっぱいでした(笑)」

 敵味方関係なく、個々の選手のレベルの高さに感銘を受けた。
「九州リーグとはやっぱり違うレベルの選手がたくさんいた。プレー中にも見習うプレー、勉強になることがいっぱいありました。みんな自分の強みを持っていて、それをうまく生かしている。トイメンのWTBにもいっぱい動かれました」

 40分と限られたプレータイムでは見えにくいが、杉野の最大の強みはフィットネスだ。
「あまり強くない学校を歩んできたのもあって、そういう学校あるあると言いますか、練習量が多くて、とりあえず走ってきました」

 岡山県出身。小学1年から友人の誘いで岡山ジュニアラグビースクールに通った。高校は倉敷工に進んだ。

 潜在的に走るのが好きだった。
「保育園に行く時、他の子であればお母さんの自転車の後ろに乗ると思うのですが、なぜか走っていたと聞いています」

 中学では休日に楕円球を追い、平日のみの活動でも許されたハンドボール部に所属した。
 そこでタフさが磨かれた。

「(攻守の切り替えが激しい)ハンドボールは走るスポーツということもあり、コートの縦40メートルを何度も往復するランメニューがありました。試合にはほとんど出ませんでしたが、なんでも本気でやってしまう性格で…。それが良い意味で体力に繋がっているのかなと思います」

 その才能が見出されたのはセブンズだ。2022年に開かれた「男子セブンズTID発掘プロジェクト」に参加する。
 そこでのフィットネスメニューで光り、代表デビューを勝ち取った。

「フィットネスおかげと言っても過言ではです」

 それまで無印だった選手が突然、日の丸を背負って世界を転戦した。想像していなかった人生の連続に、「あまり実感も湧かないままとんとん拍子で来てしまった」と苦笑する。
 フィールドの外では、各国で異なる香辛料の違いに苦戦しつつ、異文化にも触れられた。

「世界のレベルをまったく知らない状態でしたので、その壁を感じたし、世界は広いなとも感じました。良い経験でした」

 約1年で5キャップを得た。
 最後の大会は年明けのワールドセブンズシリーズ・ロサンゼルス大会。そこで厳しい世界も知った。

「ロサンゼルス大会の後にそのままバンクーバー大会にも行く予定でしたが、アメリカでのパフォーマンスが悪過ぎて帰国しました。そういう(苦い経験)のも含めて良い経験。後悔が残らないように、今を大事にしようと思いました」

 卒業後はリーグワンでのプレーを志望する。セブンズの舞台でも引き続き戦いたい。
 OBには日本代表でPR竹内柊平がいる。「偉大な先輩です。15人制でも桜のジャージーを着たいと思えた」という。

「セブンズで世界を知れたことが本当良い刺激になりました。それまでは結構、足(の速さ)に自信があったんですけど、平気な顔で追いつかれたことがあって(笑)。心が折れかけたけど、上には上がいると知ったからこそ、まだ満足していません」

 まずは最後の学生ラグビーを全うする。九州リーグでは3年連続の2位。今年こその思いは強い。
「自分たちの代は1年から主力の選手がたくさんいます。ポテンシャルはある。あとはチームワークを磨けるかどうかです」

 5年ぶりの全国大学選手権出場を果たし、また大舞台に立ちたい。

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