日本代表 2024.06.25

選手が振り返る「6・22」。日本代表、イングランド代表戦大敗に見た光明。

[ 向 風見也 ]
選手が振り返る「6・22」。日本代表、イングランド代表戦大敗に見た光明。
スクラムでもイングランドに奮闘を見せた日本代表。若いフロントロー陣にとってこの経験は自信になる(撮影:髙塩隆)



 代表戦はシビアだ。挑む側にとってはなおさらである。

 ラグビー日本代表がその現実を思い知ったのは6月22日。東京・国立競技場で、非テストマッチを含め過去11戦全敗のイングランド代表に17―52で敗れた。

 チャンスを逃したのが悔やまれた。この日は前半に敵陣22メートルエリアに入った回数は両軍ともそう変わらなかったものの、その場で点を取った回数に差がついた。

 日本代表は6、9分頃にはトライラインの近くへ迫りながら、モールを阻まれスコアならず。FLとしてジャパンデビューのティエナン・コストリーはこうだ。

「(球に相手の手が届かないよう)長めのモールを作りたかったんですが、相手に捕まったり、倒れたり」

 何より手痛かったのは、3―7と4点差を追っていた20分頃の場面だ。

 敵陣中盤右中間のスクラムから、SOの李承信のピンポイントのパスで右の区画を攻略。ここで受け手となったWTBのジョネ・ナイカブラが、人垣にチャレンジしながら落球した。

 日本代表は、直後の守りでも反則を犯した。

 するとイングランド代表が、左のハーフ線を越えたあたりでのラインアウトから突破。用意されたムーブを繰り出す。14点目を刻んだ。

 日本代表は好機を逸した直後、イングランド代表に好機を活かされたのだ。

 以後はしばらく、イングランド代表の通常運転を許した。

 ハイボールとその落下地点での球の奪い合いでは、時間が経つほどに劣勢に回った。李は悔しがった。

「自分たちでキャッチしてからのアタックを準備してきたのですが…」

 SOのマーカス・スミスの「50・22」のキック、タックラーを引き寄せながらのパス、意表をついての足技にも手こずった。

 ハーフタイムの前後には自分たちの規律、防御のノミネートも乱し、後半11分で3-38と勝負をつけられた。

 それでも敗軍陣営は、前向きだった。LOのワーナー・ディアンズは言う。

「いいチャレンジができた気がする。間(ハーフタイム前後)の40分間がちょっと微妙だったし、スコアを見るとあまりよくないと思うけど、いい感じはするっす」

 日本代表は現体制発足から1か月足らず。有力候補が相次ぎ辞退したのもあり、初キャップの選手はメンバーの23名中8名にのぼっていた。イングランド代表は全選手がデビュー済みだった。

 経験値に差があったなか、ホスト国のチャレンジャーがコンセプトの「超速ラグビー」の一端を示せた。その事実が、負けた側をあまり落胆させなかったのだろう。

 前半5分頃。日本代表は中盤左のグラバーキック再獲得から勢いをつけ、ループ、オフロードパス、狭い区画での数的優位を活かす連係技でさらに加速する。敵陣22メートル線を通過後も、接点周りでの突進、防御の死角での繋ぎが冴えた。

 大差をつけられていた後半26、29分には、個人技をきっかけにフィニッシュした。後者のシーンでは、ディアンズの長い手を活かしたパスキャッチ、優雅なランニングが光った。

 同25分までプレーしたSOの李承信は、確信できた。

「ゴール前までに行くプロセス、モメンタム(勢い)にはいい手応えがありました。自分たちが積み上げてきたものが発揮できた」

 抜擢された面々が好感触を掴めたのも確かだ。

 攻防の起点となるスクラムでは、左PRの茂原隆由、HOの原田衛というこの日初陣の若者が試行錯誤を繰り返した。

 加えてスタンド下のミックスゾーンで、エディー・ジョーンズヘッドコーチに「ニホンデイチバン、ニンキノセンシュ」と肩を叩かれたのは竹内柊平。茂原、原田とともに最前列に入った先発の右PRである。今回で4キャップ目。

 長らく遠い間合いで組まされ、自立できずに崩れ落ちることもあったが、交替する直前の一本では押し込み、ペナルティーキックをもらえた。

 高さの微修正が奏功したと、本人は振り返る。

「(国内の)リーグワンの時のような低さで組むと(遠い間合いから押しつぶしたり、引っ張り込んだりしてくる相手との関係上)落ちる。それが、きょうの僕でした。(試合中に)衛、茂原と話して『軽く、高めに組もう』と。そうしたら、最後のスクラムになった」

 かねてNO8のリーチマイケル主将は、「言い訳なし」とこの午後の白星のみを見据えていた。いざ、欲しいものが手に入らなかったのを受けて…。

「この経験は、自分たちの財産になる」

 目の当たりにした現実が悪いものばかりではなかったと強調する。

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