日本代表 2024.06.12

【車いすラグビー日本代表/カナダカップ2024】パラリンピック前哨戦で日本が全勝優勝!大会2連覇を果たす

[ 張 理恵 ]
【車いすラグビー日本代表/カナダカップ2024】パラリンピック前哨戦で日本が全勝優勝!大会2連覇を果たす
カナダカップ2連覇を果たした車いすラグビー日本代表。(撮影/張 理恵、以下同)



 パリ2024パラリンピックの前哨戦となる車いすラグビーの国際大会「Wheelchair Rugby CANADA CUP 2024」(以下、カナダカップ)。
 大会最終日の6月9日、ディフェンディング・チャンピオンの日本は決勝戦に臨み、終始リードする展開でオーストラリアを54-46で下し、カナダカップ2連覇を果たした。

 6か国総当たりの予選ラウンドを5勝0敗で終え1位通過した日本は、予選2位・オーストラリア(3勝2敗)との決勝に臨んだ。
 世界トッププレーヤー、ライリー・バットがベンチでサポートに徹する中、両軍はティップオフ前からポジション取りで火花を散らした。
 立ち上がりから激しいボールの奪い合いが続く。その中で日本は、なんとか先制点を挙げた。日本の強いディフェンスに苦戦するオーストラリアは、立て続けにターンオーバーを許す。相手に流れを渡すまいと日本は選手交代を繰り返し、各ラインアップがそれぞれの役割を遂行した。

スピードスター・橋本勝也は豪州の新星・コノリーとデッドヒートを繰り広げた

 車いすラグビーでは試合前半、ベンチ側のコートに相手が攻めてくる。トライライン手前の「キーエリア」では、ひときわ激しい攻防が繰り広げられる。その時、トライを奪おうと躍起になる相手には日本ベンチから大きな声がコートに送られ、プレッシャーを与える、。
 一番障がいが重いクラスのローポインター、長谷川勇基がミスマッチを作る。相手ディフェンスが薄くなった隙に、ハイポインター(障がいの比較的軽い選手)の島川慎一がトライを決めた。
 14-10と日本のリードで第1ピリオドが終了した。

 第2ピリオド。オーストラリアはチーム最年少、19歳のブレイデン・フォックスリー・コノリーをコートに送り込む。コノリーは持ち味のスピードと高さで得点を重ねた。するとそこで、同年代のスピードスター・橋本勝也がコートに登場。コノリーを振り切る走りで意地を見せつけた。
 近い将来の日豪戦を想像させるヤングプレーヤーたちの競演に観客は沸き、25-23で試合を折り返した。

会場のリッチモンド・オリンピック・オーバルには日本の大応援団がかけつけた

 会場を見渡すと、日本の大応援団が観客席を埋めていた。カナダ在住の100人を超える日本人が訪れ、まるで「ホーム」のような雰囲気で日本代表を後押しした。
 この力強い声援、そして時差がありながらもライブ配信を見て日本から応援してくれるファンもいた。その期待に応えようと、選手は後半に向け集中力を高めた。

 第3ピリオド序盤、日本はわずか30秒ほどの間に5連続得点を挙げ、一気にオーストラリアを突き放す。勢いを増す日本は相手のディフェンスを振り払い、42-32で試合は最終ピリオドに入った。

 起死回生を図ろうとオーストラリアも決して手を緩めない。ただ、その心を折るように、チーム一丸となって戦う日本のハードワークが続く。会場には「ニッポン、がんばれ!ニッポン、がんばれ!」と大きな声援が鳴り響いた。
 そこで、岸 光太郎ヘッドコーチがクローザーとして起用したのは、橋本―中町俊耶―乗松聖矢―草場龍治と若手メンバーによるラインアップだった。

新鋭・草場龍治の台頭に、早くも世界が注目しはじめている。

 草場は昨年10月にフル代表デビューを果たし、今回のカナダカップが3回目の国際大会(次世代レベルの大会を除く)という新鋭。スピードを武器に、車いすラグビーの競技歴3年半とは思えないほどの高いパフォーマンスを発揮している。その急成長ぶりにベテランも危機感を覚えるほどだ。
 これまでの2大会で得た経験を活かしながら、今大会には「言われたことだけではなく、自分の判断でやろうという意識を持って臨んでいる」と草場。

 その言葉を象徴するようなプレーが見られたのが終盤のワンシーンだ。
 相手に囲まれた橋本が、転倒しながら苦し紛れにフロントコートにボールを放つ。それをローポインターである乗松と草場の二人が必死に追いかける。スピードに乗った草場が見事にキャッチしてそのままトライ。ベンチから「ナイスラン!」という掛け声が送られた。
 そうして、54-46で試合終了のブザー。
 日本は全勝優勝を果たし、大会2連覇を達成した。

 試合後、勝利を喜ぶセンターコートの円陣にキャプテン、池 透暢の声が響いた。
「4月の国際大会では苦しい戦いのなか優勝し、ひとつ自信がついた。世界トップ6が集まる今大会は、どこまで自分たちのラグビーが通用するのかと臨み、日本が一番強いということを証明できた。この2つの自信は、もし何か不安になりそうなとき、自分たちは成し遂げられるんだと支えてくれる。今回、悔しい思いをした海外のチームは強くなる。それをもう一個超えるということをやっていかなければ、簡単に追い抜かれてしまう。快勝した相手に次の大会で負けてしまった経験もある。そういうことが起きるからこそ、自分たちはこれからも変わらぬ努力をしていこう」

パリ・パラリンピック本番に向け心をひとつにした

 チームで勝ち取った優勝に加え、7つの障がいクラスごとに最も活躍した選手に贈られる「ベスト・イン・クラス」(個人賞)に、日本からは小川仁士(クラス1.0)と池崎大輔(クラス3.0)が選ばれた。
 そして、多彩なプレーでチームをけん引した池 透暢が、大会MVPに輝いた。

 パラリンピック前最後の国際大会を優勝で締めくくった車いすラグビー日本代表。しかし、今回の結果に甘んじる様子は一切ない。
 パリ・パラリンピック開幕まで、あと80日。
 ロンドン、リオ、東京のパラリンピック3大会に出場した池崎は、力強いまなざしでこう語った。
「パラリンピックではどのチームも化けてくる。だから自分たちもさらに化ける」

【カナダカップ2024 結果】
優勝   日本
準優勝  オーストラリア
3位   イギリス
4位   フランス
5位   アメリカ
6位   カナダ
【大会MVP】池 透暢

準優勝のオーストラリア代表
3位のイギリス代表


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