国内 2024.06.10

【関東大学春季大会】決勝の再戦 帝京大と明大は激闘の末にドロー。決着はシーズン終盤に持ち越し

[ 三谷 悠 ]
【関東大学春季大会】決勝の再戦 帝京大と明大は激闘の末にドロー。決着はシーズン終盤に持ち越し
昨季の大学選手権決勝の再戦は両者譲らず24-24のドロー(撮影/福地和男)

 第13回関東大学春季交流大会は6月9日、Aグループの帝京大と明大の一戦が小笠山総合運動公園エコパスタジアム(静岡県)でおこなわれた。昨季の大学選手権決勝の再戦となった注目の対決は、激闘の末に引き分け。決着はシーズン本番に持ち越された。

 小雨がパラつき、肌寒さを感じるエコパスタジアム。フィジカルに秀でた昨季のファイナリスト2チームが、その強みを前面に押し出した戦いぶりでスタンドを熱くさせた。

 前半、ペースをつかんだのは決勝で後塵を拝した明大。失点の多かった慶大戦(56〇45/5月26日)、早大戦(26●36/6月2日)の反省を活かし、集中力の高いディフェンスを見せる。5分過ぎから始まった帝京大の攻撃に、出足の鋭いタックルで対抗。約2分間、15フェーズ以上にも及んだアタックを規律を保ちながら止め続け、最後は攻め手がなくなった王者に渋々キックを蹴らせた。

 攻撃の原動力は、副将の秋濱悠太。今季初先発のCTBは、エディージャパンの代表候補合宿に召集された実力を遺憾なく発揮する。11分、敵陣22㍍内のラインアウトを起点に、FL利川桐生がゴール前中央へ豪快に突進。SH柴田竜成が高い運動能力を活かしてすばやくつなぐ。ボールをもらった秋濱は、ディフェンスの隙間を縫って左中間へ飛び込んだ(5-0)。

 27分には個人技で魅せる。BKのラインアタックの流れの中、タイミング抜群の飛び出しでパスを受け、一気に加速。空いた裏のスペースへパントキックで侵入し、跳ね返りをみずから収めてゴールエリアへと駆け込んだ(12-5)。

 さらに4分後には、巧みなハンドリングスキルで攻撃の勢いを加速させる。センタースクラムを得た明大は左に展開。CTB蓬田雄のグラバーキックは前方に大きく跳ねたが、秋濱は落ち着いていた。ジャンプしてキャッチすると、サポートに来ていたWTB坂本公平へすぐさまオフロードパス。快足が武器の左WTBは2人をかわし、ゴール左隅へとダイブ。この日、チーム3本目のトライを挙げた(19-5)。

前半31分、快速を飛ばしてチーム3本目のトライを挙げた明大WTB坂本公平(撮影/福地和男)

 その坂本はキックでも存在感を見せた。3本のコンバージョンはすべてポールの間を通し、41分にはゴール正面約20㍍のPGも確実に沈める。前半に獲得した4本のキックを難なく成功させ、明大が前半を19点差(24-5)の大量リードで折り返す立役者となった。

 しかし王者も黙ったままでは終わらない。反撃の糸口としたのはセットプレー。明大に対して常に優位性を保ち、20分には敵陣5㍍のラインアウトからチャンスをつくり出す。硬く重いモールでじわじわと押し込み、最後はNO8のカイサ・ダウナカマカマがゴールエリアにボールを押しつけた。

 スクラムでもハッキリとした違いを見せつけた。前半だけで奪ったコラプシングは3本。スコアは離されても、主導権を明確には渡さない。近年の帝京大を支える絶対的な武器が、後半はさらに火力を上げ、ゲームは前半以上に激しさを増していく。

 とりわけマイボールは圧倒した。13分、自陣中央やや左寄りの位置でのスクラムでは、左PR平井半次郎がグッと前に出て崩し、キックで敵陣に侵入。ラインアウトから右のオープンスペースへとボールを動かし、タッチライン際でWTB山本晴大、CTB生田弦己と立て続けにオフロードでつなぐ。最後はFLグアイニ優人が仕上げて反撃の狼煙をあげた(24-10)。

 24分には明治陣内5㍍ライン上で得た絶好の機会を活かす。大きく押し込んだあと、途中交代で入ったNO8倉橋歓太がサイドを強引に突破。ゴールラインを陥れ、チャンピオンチームはいよいよ勢いに乗る(24-17)。

 そして27分、またも自陣スクラムでペナルティを奪った帝京大が、タッチキックで明大陣内へ。ラインアウトを投げ入れたHO當眞蓮がタテを突いてラックを形成。そのボールを拾ったカイサが約20㍍を走り抜け、前半に続いてトライ。SO大町佳生のコンバージョンも決まり、ついに24-24のタイスコアに持ち込んだ。

後半28分、帝京大はNO8カイサ・ダウナカマカマのトライ、コンバージョンでついに同点に追いついた(撮影/福地和男)

 王者が見せる驚異的な底力。このままゲームをひっくり返すかと思われたが、ひとつの判断で流れが変わる。38分、敵陣5㍍ライン上のスクラムでコラプシングを奪取。相手の陣形が整っていないと見たSH上村樹輝がクイックスタートを仕掛ける。しかし明大は粘った。ゴールエリアまでボールを運ばれるも、何人もの選手が懸命に体を投げ出す。なんとかヘルドアップに逃れ、スコアをイーブンに保った。

 試合を通して8対8のセットピースを支配し続けた帝京大。主将のFL青木恵斗は、「焦らず、スクラムでもよかったかもしれない」と悔やんだ。一方、後半の多くの時間帯で押し込まれていた明大にとっては、勝利への意思を強く示した場面だった。ロスタイムは約8分。なんとしても勝利をもぎ取りたい両チームの間で、幾度となく攻守が入れ替わる。最後はお互いにノックオンでノーサイド。春シーズンとは思えない熱のこもった好ゲームに、スタンドからは大きな拍手が鳴り響いた。

 健闘したもののスクラムに課題を残した明大の主将、NO8の木戸大士郎は「だれも文句がいえないくらいの完成度をめざしたい」と決意を新たにした様子。神鳥裕之監督も「課題がクリアになったほうが、選手も『ここを修正すれば勝てる』とポジティブに捉えて取り組んでいける」と前を向いた。

 対する帝京大の相馬朋和監督は、「明大はケガ人も多く、(今回は)参考にならない」と喜びの表情は一切見せず。シーズン終盤に再び相まみえたとき、どんな結末を迎えるのか。今季の大学ラグビーを占ううえでも、大きな期待を抱かせる一戦となった。

文/三谷 悠

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