国内 2024.06.03

「リーグ戦2試合増」「プレーオフ進出6チーム」「クロスボーダーの開催可否」。リーグワン、来季の変更点。

[ 編集部 ]
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「リーグ戦2試合増」「プレーオフ進出6チーム」「クロスボーダーの開催可否」。リーグワン、来季の変更点。
プレーオフ前のカンファレンスで壇上に飾られた優勝トロフィー(撮影:松本かおり)

 リーグワンアワードが5月27日におこなわれ、会の最後に東海林一専務理事の会見が開かれた。今季の振り返りと来季から始まる「フェーズ2」の変更点などを話した。

 以下、会見のほぼ全文を掲載する。

「シーズンを通して115万人(114万2294人)、決勝には(リーグワン1試合最多入場者数の)5万6486人のファンの皆さんにご覧いただけたように、素晴らしいシーズンをファンの皆さんやチーム、リーグで作れたと思っています。特に進化したのは3点あると考えています。
 一点目は、ワールドカップの後に海外からたくさんの選手に来ていただき、日本人選手も非常に切磋琢磨したことで、ディビジョン1〜3、いずれにおいても非常に競技力上がり、ファンの皆さんに素晴らしい試合をお届けできました。
 二点目は、それぞれのチームの努力によってホストエリアの活動でファンを獲得できたことです。加えてリーグでもジャパンラグビーIDを通して継続的なアプローチをおこない、リピートを促進できました。
 三点目は、試合のオペレーションの改善です。地域協会も含めた非常に多くの方の努力のおかげで、ファンの皆さんに試合以外のところでも、より快適な観戦環境をご提供できました」

「来シーズンはすでに申し上げていた通り、ディビジョン1の試合数を18試合(従来の16試合から2試合増)に増やします。
 また議論中でありますが、プレーオフは(4チームから)6チームが参加し、準々決勝をおこなう形を計画しています。
 レベルの高い試合を増やし、リーグとして着実な成長を図ってまいります」

「課題はスタジアムの確保とラグビーの普及育成です。これらは継続的な課題ですので、解決に向けて着実な進化を求めて、その活動を続けていきます。
 また、クロスボーダーラグビーについてですが、『世界と繋がる』ことは非常に大きなテーマと考えています。現時点ではまだ検討中ですが、対戦相手のリーグ、協会とも継続的な議論を重ねており、非常に良い方向での議論ができています。かなり具体的に本格的なクロスボーダーができる可能性が高まっているのが今の状況です。
 世界と繋がり、地域に根付くことで、ファンの方に新しい価値を提供するリーグに成長していきたいと考えています」

――本格的なクロスボーダーというのは、各リーグの上位チームがチャンピオンシップを争うイメージか。

「(今季のように)シーズン中の2月に開催するのはチームへの負担が重いため、シーズン終了後にチャンピオンシップを争うようなクロスボーダーが望ましいと、現在いろんな話をしています。ただ、相手のリーグもわれわれもさまざまな調整が必要ですので、現時点で決まっていることはまだありません」

――来季からの開催可否は。

「カレンダーの観点からさまざまな調整が間に合わないということで、来季のシーズン終了後におこなう可能性はありません。一方でシーズン前に開催するかどうかは現在交渉中です。数か月以内に来季の方向性をご説明をさせていただきます」

――プレーオフを6チームとするのは。

「レギュラーシーズンで上位チーム同士の接戦が非常に多いこともあり、出場機会を増やすことでファンの皆さんにはより均衡した高いレベルの試合を多くご覧いいただけます。
 また、プレーオフに出場できることはチームにとっても非常に大きな目標になります。
 6チームになる場合は、準々決勝で3位と6位、4位と5位が対戦し、それぞれの勝者が準決勝で1位、2位と対戦する流れを想定しています」

――自動昇降格など入替戦についての議論はあったのか。

「これまでの入替戦でも、いろんな試合で均衡した試合が見られました。そのため自動降格、自動昇格よりも、入替戦をおこなった方がより実力が反映されてフェアではないかと考え、このやり方は維持していこうと思っています。試合数については検討項目ですが、来季に関しては少なくとも今のままの形を考えています」

――18試合に増えることで、より変則的になる。

「総当たり戦ではなく、現状のカンファレンス制でやる限り、不確定要素は存在します。それは18試合おこなう場合でもこれまでと同様ですが、(できる限りの)公平性を担保していきたいと考えています。
 18試合になることで、交流戦が2試合増えます。平均すると同じ順位になるような設計を考えています(例:A1位がB1位と6位、A2位がB2位と5位、A3位がB3位と4位…)。
 プレーオフの出場枠を増やすのも、そうした不確定要素を修正する機会とするため、というのも考え方のひとつとしてあります」

――総当たり戦ができるのはいつになるのか。

「ボトルネックになるのはスタジアムの確保です。スタジアムの建設に動いているチームもありますが、完全な形で実現するにはまだ数年を要します」

――ホストエリアでない場所でのホストゲーム開催に関して、リーグの見解は。

「今季でいえばダイナボアーズが長崎で試合をしたり、イーグルスはすでに始めていた大分での試合が増えたりと、それぞれのチームがゆかりのあるところでの試合をするのとはリーグとしても歓迎しています。何かルールを定めることはありませんし、チームが自主的に開催することですが、ホストエリア以外での試合数は全般的に増えていく傾向があります」

――来季の開幕はいつか。

「11月下旬に日本代表がヨーロッパ遠征をおこなうことが決まっていますので、なるべく選手のウェルフェアに配慮して、今季と同じ12月中旬か少し遅いくらいをターゲットにしています。
 シーズンの終わりは今季と同じ5月末を考えています。ただ、われわれが試合数を増やしたり、クロスボーダーの関係で、その範囲に収まらないケースもあるので、代表側ともさまざまな協議をしている最中です」

――新規参入チームについて。次の参入チームについての意向は。

「この先の数年を見通した場合、まだ増えていくのは明らかな方針です。一方で、来季については新しい3チームが入っていただくこともあり、さまざまな準備をしています。その兼ね合いで、来季も新規参入の門戸を開くかは検討しています来年開くのかどうかは検討中です。こちらも数か月以内に方針を申し上げたいと思います」

――エディー・ジョーンズ日本代表HCは、将来的にリーグワンでグラウンドに立つ選手の75%を国内出身選手にしたい意向をメディアに語っています。リーグとしての見解は。

「いわゆる日本人選手の枠をどう考えるかは、現在検討中です。しかしながら、来季から何かが変わるということはありません。チームの編成方針そのものに関わりますので、少し時間は置く必要がありますから。その方針を固めた上で、選手の契約のことなどを早めに各チームと相談できるように検討している状況です」

――サラリーキャップの導入について検討は。

「サラリーキャップについては、われわれもさまざまな研究をしています。社員選手が多く在籍している現在の状況では、統一したサラリーキャップは法律面で難しいという結論です。
 リーグの中におけるサラリーの見える化をおこない、生じた問題について個別に考える方向で検討しています。
 社員選手という形でのメリットは非常に大きいと考えていますので、選手をプロ化させたり、クラブに独立法人化するよう求めて、サラリーキャップを導入することは考えていません。
 ただサラリーが高騰してサステナブルでなくなるのは困りますので、現時点での情報をきちんと集めて、どこに課題があるのか、どう解決するかを見ていくフェーズに今はあります」

――今季初めてプロクラブが優勝しました。一方で親会社から多額の支援を受けても、強化と運営の両面で上手くいっていないチームもあります。

「一つの企業から独立して運営していくのも一つのやり方です。一方で、企業の中の一部門として企業と連携し、上手くいっている例もたくさんあります。それはチームの運営でも、強化でも両方です。ですので、すべてのチームに独立法人化を求めることは今の時点では考えていません」

――来季のリーグとしての目標は。

「観客数などの目標はすべてこれから決めていきます。これまでもワールドカップイヤーは非常に盛り上がっていて、今年もその影響がプラスに働いた部分はあると思いますが、冒頭に申し上げた通り、レベルの高い試合、面白い試合を提供でき、試合のオペレーションも改善できたことが観客数増に繋がっていると思います。ですので、過去を見ればワールドカップの翌年は観客数が落ち込んでしまっていましたが、来季はこの良い傾向をチームと一緒に維持していくことで、確実にファンの方にご覧いただける機会を増やしていきたいと思っています」

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