海外 2024.05.10

【スーパーラグビー・パシフィック】大一番のブルーズ×ハリケーンズは、代表入りを懸けた熱い戦いに。

[ 松尾智規 ]
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【スーパーラグビー・パシフィック】大一番のブルーズ×ハリケーンズは、代表入りを懸けた熱い戦いに。
好調なハリケーンズSH、TJ・ペレナラ。5月3日におこなわれたワラターズ戦のトライでスーパーラグビー通算63トライとなり、リーグの歴代最多トライスコアラーとなった。(Getty Images)


 スーパーラグビー・パシフィックは第12節(5月10、11日)を迎え、レギュラーシーズンも残り4試合となった。今週の大一番は、5月11日にイーデンパーク(オークランド)でおこなわれる、ブルーズ×ハリケーンズのカードだ。

 シーズンの終盤に差し掛かっても調子の上がらない昨年の覇者クルセイダーズを尻目に、首位のハリケーンズと2位ブルーズとの激突は、NZ国内のメディア、ラグビーファンの間で大いに盛り上がりを見せている。両者の勝ち点の差は僅か1ポイント。文字通りの首位攻防戦になるだけでなく、両チームの選手たちにとっては、オールブラックス入りをかけたセレクションマッチと言える。

 今季、第3節(3月9日)にウエリントンで対戦した時は、29-21でハリケーンズが勝利している。今回は、ホームのブルーズが、リベンジを果たして首位の座を奪取する事ができるだろうか。

◆ブルーズはリーコ・イオアネが欠場も、サリヴァン、アキラ・イオアネが復帰。

 両チームのメンバーが発表されている。 ブルーズは、NZ代表キャップを持つSHフィンレー・クリスティー、SOスティーヴン・ペロフェタが大一番には間に合わなかったものの、オールブラックスが7人先発メンバーに並んだ。
 FLアキラ・イオアネが背番号6で先発メンバーに戻ってきた事により7番ダルトン・パパリィイ、NO8ホスキンス・ソトゥトゥの迫力満点のFW第3列の布陣となった。

 ハーフ団は、SHタウファ・フナキ、SOハリー・プラマーのコンビが好調をキープしている。フナキは、クリスティーのケガで出場機会が増え、持ち前の攻撃力が試合を重ねるごとに成長している印象だ。一方のプラマーもペロフェタのケガで出場機会を得て司令塔の役割をしっかりとこなしている。好調ハリケーンズ相手にこの二人がどこまで通用するのか楽しみだ。

 先週のレベルズ戦で脳震盪により退場したCTBリーコ・イオアネは、数週間は欠場の見込みだ。その欠場が、大一番にどう影響するか。R・イオアネの代わりには、AJ・ラムが13番に入り、ブライス・ヒームとCTBコンビを組む。攻撃力のあるハリケーンズのCTBコンビ、ジョーディー・バレット、ビリー・プロクターに対してしっかりとしたディフェンスできるかがカギになりそう。

 その他では、ザーン・サリヴァンが6週間ぶりにケガから復帰となり、いきなり15番をつけて先発メンバーに入った。接戦の試合が予想されるだけに、最後尾でキック力のあるサリヴァンの復帰はベストタイミングになる。
 兄のCTB/WTBのベイリン・サリヴァンもハリケーンズでベンチ入りをしており、兄弟対決が実現しそう。そちらも注目したいところだ。

ブルーズのFLダルトン・パパリィイ(中央)。仕事の幅が広い。(Getty Images)

◆ハリケーンズは、リザーブがFW6人、BK2人の布陣へ。

 一方のハリケーンズは、前週のワラターズ戦から大きくメンバーを変えてきた。
 PRザヴィア・ヌミア、LOケイレブ・デレイニー、FLブラッド・シールズ、SHのTJ・ペレナラ、WTBキニ・ナホロ、CTBジョーディ・バレットのレギュラー陣を先発メンバーに戻した。

 上記の中でもPRヌミアの成長が目を引く。走力を活かしてのボールキャリー、スキルフルと、現代ラグビーにもってこいのフロントローと言える。課題だったスクラムも近年改善され、初の代表入りも十分にあり得そう。 ペレナラも引き続き良いパフォーマンスをしている。ケガで長期離脱となったSHキャム・ロイガードの穴をしっかり埋める。経験を活かしてチームを引っ張っている姿が印象的で、オールブラックス復帰も濃厚だ。

 この試合でバレットとCTBコンビを組むビリー・プロクターの存在も目が離せない。毎年活躍をしていながら、一度もオールブラックス入りしていないのが不思議なくらいだ。今シーズン凄みを増したラインブレーク能力と強いディフェンスを見ていると、オールブラックスに呼ばない理由が見当たらない。

 リザーブの割り当てをFW6人、BK2人の布陣は興味深い。FL/NO8デヴァン・フランダース、FLデュプレシー・キリフィの2人がベンチスタートとなり通常よりFW第3列を一人多くした。
 フィットネスが落ちる後半にブレイクダウンを含むFW戦で有利に戦いたい意図が見えてくる。

 2022年にNPC(NZ国内選手権)で、ウエリントンがカンタベリーを破って優勝した時のメンバーが今季のハリケーンズに多くそろっている。
 オールブラックス入りの現実味が出てきたFBルーベン・ラヴを始め、PRヌミア、LO/FLデレイニー、FL/NO8ピーター・ラカイなどの若いメンバーがスーパーラグビーのレギュラー、そして代表入りが見える位置まで成長している。それが今季のハリケーンズの好調を物語っている。

攻守にハードなプレーを見せるハリケーンズのCTBビリー・プロクター。(Getty Images)

◆注目マッチアップ、最注目はFW第3列とWTB対決。

 シーズン終盤に入っての首位攻防戦だけに注目マッチアップも盛りだくさんだ。

□ダルトン・パパリイ×ピーターラカイの7番対決
 今年こそオールブラックスの7番を確保するためにアピールしたいパパリィイと、ダイナミックなプレーが持ち味のラカイの対戦は、まさにオールブラックスのセレクションだ。

□ホスキンス・ソトゥトゥ × ブレイデン・イオセのNo8対決
 代表返り咲きを狙うソトゥトゥと初の代表入りが見えてきたイオセの対決は、この試合の最注目となる。
 スペースを与えると一気にトライする走力のある両者から目が離せない。

□ハリー・プラマー×キャメロン・ブレッドの10番対決
 大一番で重要となってくる司令塔のゲームメイクは試合のカギを握る。地味ながらも堅実なプレーをする両者にも注目を!

□ケイレブ・クラーク × ジョシュ・モービーのWTB対決
 クラークがオールブラックスで11番を奪還するには、この試合でアピールしたいところ。
 決定力だけでなく、仕事量も多いモービーが目立つ展開になればハリケーンズに勢いが出る。

□マーク・テレア× キニ・ナホロのWTB対決
 ワールドクラスのラインブレークの能力があるテレアと、破壊力抜群のナホロの対決は必見。両者のディフェンスがアタック以上に重要になってきそうだ。

 試合の展望は、基本のセットピース(スクラム、ラインアウト)の出来をまずは見極めたい。
 ハリケーンズは、アサフォ・アウムア、ジェームズ・オライリーのHOが揃って欠場(今回もこの二人は欠場)してからラインアウトが不安定になった。それが唯一の不安材料だ。ラインアウト次第では、一気にブルーズに流れがいくことになるかもしれない。
 両チームとも、ベンチを含め、FW第3列が充実している。彼らの仕事ぶりの優劣が試合に影響するだろう。フィジカルバトルは、テストマッチ並みの激しさになりそうだ。

 近年のレギュラシーズンでは、チケットが完売になることはまれだ。しかしこの大一番は、イーデンパークに多くの観客を集めそうだ。
 勝利の行方は予想がつかない。凄まじい試合になるだろう。


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