ジャパンXV、オーバーエイジ枠の秋濱悠太。明治を優勝へ導く経験値とエナジーを持ち帰る
副将になった。留守中のチームのことが気になる。
そう話すと、神鳥裕之監督は、「普段は経験できない環境。いい刺激をもらってこい」と送り出してくれた。
U20日本代表メンバーを核としたジャパンXVが4月5日、サモアへ向けて旅立つ。
4月10日、15日、20日にサモアのアピアで開催される『ワールドラグビー パシフィック・チャレンジ2024』に挑む。
その中に、この4月から4年生、明大ラグビー部の副将に就いた秋濱悠太(あきはま・ゆうた)の名前がある。
HO佐藤健次(早大)、LO青木恵斗(帝京大)、SH土永旭(京産大)らとともに、28人のツアーメンバーに含まれる4人のオーバーエイジ枠(U20外)の中のひとりだ。
2月に福岡でおこなわれた男子15人制トレーニングスコッド合宿に招集された。
しかし、今回の大会への参加メンバーに入るとは思っていなかった。
「驚きました。自分たちのチームがセブンズ(東日本大学セブンズ)や春の大会(関東大学春季大会)を控えています。そのタイミングで抜けるのは(リーダーとして)不安に感じました」
そんな気持ちを監督に話したら、冒頭のような言葉が返ってきた。気持ちを切り替えた。
「(チームとの時間の共有が)遅れた分は、(帰国後に)下級生とたくさん話してコミュニケーションを取ろうと思っています」と前向きに話す。
年下の選手たちに囲まれるジャパンXVでの活動。牽引役を求められていることを理解する。
「自分なりのアイデアをチームに入れていければ」と意欲を口にする。
サモアで屈強な男たちと戦って得るものはきっと大きい。その経験を八幡山のグラウンドに持ち帰るつもりだ。
練馬ラグビースクールがラグビー人生の始まりだった。兄に影響を受けた。
桐蔭学園高校の2年時、3年時と花園で連覇を果たした(2年時はFB、3年時は副将でCTB)。
U17日本代表に選出され、高校日本代表にあたる2020年度の全国高校大会優秀選手にも選ばれた(コロナ禍で代表遠征は中止)。
明大進学後も1年時から試合出場機会を掴んだ。2年時(WTB)、3年時(CTB、FB)と関東大学対抗戦の全試合に出た。
174センチ、86キロとがっちりした体格も、巧みなステップと急加速も可能なランニングで頼りになる。最上級生でリーダーを任される実績を十分に積み上げてきた。
2月の男子15人制トレーニングスコッド合宿では、いろんなことを学んだ。こちらも予想していなかった招集だったが、普段触れ合うことのないトッププレーヤーと同じ空間に身を置き、「吸収したい」とアンテナを張った。
福岡合宿での初日のトレーニングを終えた後、年上、初対面の選手、外国出身選手の存在に、「コミュニケーションを取るのが難しかった。もっと工夫して明日の練習に取り組みたい」と話した。
エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチとの面談を控え、自分の強みについて「これ、といったものがない」と謙遜するも、「コミットする力」をアピールしたいと自己分析した。
チームから求められること。BKラインの中での役割。そして、与えられたポジションへの適応。いろんな局面で責任を果たす力を持っている。
歩んできた道の中で、複数のポジションを経験してきた。いくつも引き出しを持っている。
トッププレーヤーに囲まれた時間は、引き出しの数をさらに増やすことに繋がりそうだ。
「パススピードや、ブレイクダウンへの寄りの速さもレベルが高かった」
ハドルの中で話す姫野和樹(2023年W杯日本代表主将)らの言葉の濃さに感心した。強い圧力の中でもプレーがぶれず、広い視野を持っている同じポジションの選手もいた。
将来はリーグワンでプレーしたい。そのレベルで長く活躍する希望を叶えるためにも、代表合宿で学んだことを自分のものにしていきたい。
昨年のW杯では、サモア戦で明大の先輩、SH福田健太(トヨタヴェルブリッツ)が初キャップを得るシーンをチームメートと見ていて盛り上がった。
国内シーンでの活躍の先に世界が待っているなら最高だ。
高校同期で、ともにサモアへ向かう佐藤と青木は、それぞれ早大、帝京大の今季のキャプテンを務める。
昨季、創部100周年の大学日本一はならなかっただけに、まずは旧友たちに勝ち、頂点に立ってから先へ進みたい。