国内 2024.03.21

横浜キヤノンイーグルスのマックス・ダグラス 母国レジェンドに学んだ「一貫性」

[ 向 風見也 ]
横浜キヤノンイーグルスのマックス・ダグラス 母国レジェンドに学んだ「一貫性」
長身を活かしてキックチャージに行くマックス・ダグラス(撮影:松本かおり)


 すでにインパクトがあり、さらに伸びしろがありそうだ。
 
 横浜キヤノンイーグルスのマックス・ダグラスは、24歳のラグビーマンだ。

 ポジションはLO。身長201センチ、体重112キロのサイズで攻めては快足を飛ばし、守っては高低のタックルで攻防の境界線を守る。空中戦のラインアウトでは、よく相手ボールをスティールする。

 加盟するリーグワン1部にあって、今季は第5節から6試合連続でスターターを務めた。レギュラシーズン6戦を残し、リーグ戦の先発回数は入りたてだった前年度を上回っている。2年連続でのプレーオフ行きへ、快調に飛ばしてきた。

 ただし先の3月15日は、東京・秩父宮ラグビー場で「がっかりしました」。ディフェンディングチャンピオンであるクボタスピアーズ船橋・東京ベイとの第10節で、概ねペースを握りながらも26-29と惜敗。終盤に自軍のラインアウトで被ターンオーバーを連発し、まもなく逆転された。

「自分はラインアウトのリーダーのひとりですが、そのエリアでスタンダードを上げられず残念でした。スピアーズの防御がよかった部分もありますが、しっかりとレビューしてスキルを高めたい。これからは、(ボール確保までの)プロセスをもっと準備していきます。また、ベーシックな部分を徹底的に練習する。そうすれば、獲得率はぐっと上がる」

 目下12チーム中5位。名誉挽回へ、「責任」を全うしたい。

「自分のプレーに満足はしていますが、ステップアップしなければならない。コーチたちからもそう言われています。たとえばキックオフ時も、エラーが多かった。責任を果たさねばならない」

 ワラターズの一員だった。オーストラリアからスーパーラグビーに参戦するクラブには、2020年から3シーズン在籍した。

 イーグルスへは、初めて4強入りする昨季に先立ち加わった。

 イーグルスは当時、21年度までの主軸が移籍したため若き大型LOを求めていた。かたや本人は、もっと実戦経験が積みたかった。双方のニーズが合致したわけだ。契約に先立ち、沢木敬介監督も渡豪し面談したという。

 かくして新たな物語が始まるのだが、自身は、古巣で得た財産も大きいと話す。

 このスポーツを仕事にするうえでの覚悟、倫理観だ。

 思い出されるのはマイケル・フーパー。ワラターズの先輩で、オーストラリア代表125キャップのファイターである。来日2季目の若者は言う。

「自ら勝ち上がらなければいけない厳しいプロの環境にあっては、日々――クラブハウス以外での食事やストレッチを含めて――ハードワークしなくてはなりません。そうして、週末のゲームへ自信を持って臨むのです。それに気づくまでには時間がかかりました。ただ、ワラターズにいたワールドクラスの選手が気づきを与えてくれました。フーパーはいい習慣があり、チーム内での自分の役割をクリアにし、一貫性を持って遂行していました」

 本物から得た知見を、いまの人生に反映させているという。

 週末の公式戦を見据え、ウィークデーの早いうちにチームメイト、首脳陣と討議。自分のタスクを明確化し、トレーニングで表現する…。本番前日の宿泊先では、時間をかけて身体をほぐす…。フーパーのありかたを目指す。

 イーグルスでもファフ・デクラーク、ジェシー・クリエルらと知己を得た。南アフリカ代表としてワールドカップ連覇の2人は、目下、けがで離脱中。ダグラスは「チャレンジングな状況になっている」と認めながら、「それをカバーすべく残った者が団結し、いい働きをしている」。特定の選手に依拠しない集団にあって、やりがいを感じる。

 継続居住年数が5年以上になったと認められれば、日本代表入りの資格が得られる。その切符をつかめば多くのファンに喜ばれそうなものの、「先のことは考えない。目の前の舞台でパフォーマンスを出すことにフォーカス」。まずは23日、秩父宮で現在3位の東京サントリーサンゴリアスへぶつかる。

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