国内 2024.03.19

『ポケットロケット』山口楓斗(静岡ブルーレヴズ)は、藤井雄一郎監督の作る男メシで育った

[ 編集部 ]
『ポケットロケット』山口楓斗(静岡ブルーレヴズ)は、藤井雄一郎監督の作る男メシで育った
第10節を終えてゲインメーターはリーグ8位の648メートル。(撮影/松本かおり)



 ボールを持つと必ず前へ出るポケットロケット。167センチ、76キロと小柄も、鋭いステップと、捕まってもなかなか倒れぬ腰の強さが魅力だ。
 山口楓斗(ふうと)は、いつもファンを楽しませる。

 3月16日(土)のリコーブラックラムズ東京戦で、静岡ブルーレヴズは久しぶりに勝った。
 3連敗中だった同チームは36-29と80分の戦いを制した。1月27日に花園近鉄ライナーズを50-12と下して以来、49日ぶりの勝利だった。

 後半30分過ぎまで2点差の接戦。粘る相手を最後に突き放した。
 山口は自らトライを挙げることこそなかったが、この日はチャンスメイクと周囲を生かすプレーで目立った。

 前半15分にWTBマロ・ツイタマが奪ったトライの前には、相手キックを受けたWTB奥村翔からのパスを受けて走った。
 狭いスペースに鋭く切れ込んで前に出て、その後の大きな展開に結びつけた。

 チーム2つ目のトライは前半20分。左スクラムから大きくボールを動かすアタックに加わり、ラストパスを出した。
 WTB奥村を完全にフリーにする絶妙のタイミングで球を離した。

 後半も敵陣でオフロードパスをつなぎ、PR伊藤平一郎らFWを前に出して好機を作った。サム・グリーンのPG、3点追加を呼ぶプレーだった(後半20分)。
 試合後の本人は「チームとしての結果は良かったのですが、個人的にはダメでした」と振り返るも、しっかり勝利に貢献していた。

 自身が反省点として挙げたのはフィールディング。キック処理などに安定を欠いたと感じたようだ。
 もらいたいタイミングでボールを手にできなかった感覚も残った。「もっとコミュニケーションを取り、もっとハードワークしないと」と反省する。

 2022年春の加入。今季は開幕からの全10試合に先発(FBで7試合、WTBで3試合)し、多くの試合で80分ピッチに立ち続けている。
 昨季はケガ人続出によりチャンスを掴んだ。第5節から4試合連続で出場機会を得る。
 しかしその後、腕の骨折で離脱を余儀なくされた。

 自分の強みを理解してプレーし、チームから求められていることを意識して動く。この日もそれを実践した。
 3連敗中、FWのセットプレーに不安定なところがあった。だからブラックラムズ戦は「BKがFWを助けよう」と準備して臨んだ。

 序盤の2トライは準備が奏功したものだった。
 両WTBがインゴールの左右の隅に飛び込んだのは、相手防御が内に寄ると分かっていたから生まれた。
「そこをうまく突けたと思います」

 ボールを持ったときには少しでもゲインする。周りを見てプレーする。それが自分に与えられた役割と理解している。
「そう意識して練習し、プレシーズンマッチでプレーしたことがシーズンにつながっていると思います」

 1対1のシチュエーションは見せ場だ。絶対に負けたくない。
 抜く。コンタクトが起こっても一発では倒れない。そう強く意識してプレーする。

「気持ちの強さも大事ですが、相手に思いっきり(タックルに)入られないようにしています。ポイントをずらすようにして前に出る」と、感覚を言葉にする。

「小さいから、この動きができていると思っています」と、小柄な体を武器と考える。
「背の高い人のことは、かっこいい、スタイルがいいな、と私生活では憧れますけどね」と笑う。

 福岡出身。剣道少年は、小学4年生のときに玄海ジュニアラグビークラブに入り、そこで中学までプレーを続けた。
 NECグリーンロケッツ東葛のSH藤井達哉は当時からの親友。だからブルーレヴズの藤井雄一郎監督は、幼い頃から知る「友だちのお父さん」だ。

「(監督には)よくご飯を作ってもらい、食べさせてもらいました」と記憶する。豪快に肉を焼く男メシがおいしかった。
 静岡の地で、同じチームの一員になるなんて。「びっくりです」と相好を崩す。

 藤井監督が山口を「運のいい男」と言うのは、人生の節目でことがうまく進んできたことを指す。
 家の近所の東海大福岡高校に進学。卒業後、当初は関西大学に進む予定だったけれど、その話がなくなった。そこから同志社大と縁ができて紺×グレーのジャージーを着た。

 大学4年時も偶然に救われた。
 もともとは愛着のある宗像サニックスブルースでプレーを続けるつもりだった。チーム練習に加わったこともある。
 しかしリーグワンが誕生。ブルースがD3スタートになると知り、進路を再考した。

「そんな時、日野さん(剛志/HO)が大学にスクラムのコーチに来られて、『明後日(ブルーレヴズの)トライアウトがあるよ。来る?』と」
 将来が決まった。

 U20日本代表の経験もある。しかしいまは日本代表より、ブルーレヴズの上昇と、チームに貢献することに集中したいと話す。
 鋭いステップで、わくわくするファンを増やす。


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