今季3度目のTMOも、ついにトライ。小泉怜史、ダイナボアーズとともに上昇の道を歩む
インゴールに入っても、毎度TMO(テレビ・マッチオフィシャル)で確認をされるケースが続いた。
三菱重工相模原ダイナボアーズのFB小泉怜史(さとし)は、3月10日におこなわれたコベルコ神戸スティーラーズ戦の前半25分、インゴールの左中間に飛び込んだ。
12番、カーティス・ロナがタックルを受けながらパスをつなぐ。ボールは小泉の左肩に当たって前に跳ねた。
相手選手が取り損ねたボールを小泉が掴み、インゴールまで走り切る。ノックオンか否か、TMOの判断を待つことになった。
ギオンスタジアム(相模原)の場内でも何度か映像が流された後、正式にトライが認められた。
リードを許していたダイナボアーズは5-12と差を詰めた。
小泉にとっては今季初めてのトライだった。
開幕戦(対花園近鉄ライナーズ/12月9日)の前半8分にアクシデントでピッチを出た。復帰戦は第7節(対静岡ブルーレヴズ/2月24日)だった。
その復帰戦にはWTBで出場し、後半28分にはインゴール左隅にボールを運んだ小泉。
しかしTMOの結果、ノートライとなった。
第8節、昨季王者のクボタスピアーズ船橋・東京ベイを34-28と破った試合にもWTBとして出場。後半12分にトライラインを越えた。
そのときも直前のプレーにノックオンがあったとされ、TMOの結果、取り消された。
喜んでは落胆するシーンが続いた数試合。
しかしスティーラーズ戦でのプレーはトライが認められ、「(ここ3試合の3つのトライシーンの中では)いちばんトライとは思わなかったのですが、よかった」と笑顔を見せた。
昨年4月に早大から入社した好ランナーは、2023年1月にアーリーエントリーでチームに加入した。
第15節(4月15日)の東芝ブレイブルーパス東京戦でデビュー。昨季は入替戦2試合を含む4戦に出た。
豊田自動織機シャトルズ愛知との入替戦初戦ではトライも奪った。
その試合、WTBで起用したグレン・ディレーニー ヘッドコーチは、「ポジションに必要なものを持っている」と、ルーキーに対して高い評価を与えた。
上位チームと比べると、決してビッグネームが並ぶ陣容ではないダイナボアーズ。しかし今季、前述のようにスピアーズを破るなど4勝を挙げている。
敗れた試合でも横浜キヤノンイーグルス(35-40)、東京サントリーサンゴリアス(34-36)と迫り、地力アップの印象だ(9節終了時で8位)。
ただ、スティーラーズ戦には14-43と敗れた。
反則数はダイナボアーズの3に対し、相手は20。何度も手にした好機を生かし切れず、効率よく得点することができなかった。
選手たちは、ブレイクダウンでの相手の激しさ、しつこさを排除できなかったと振り返った。テンポよくボールを動かし、プレーを継続させて走り勝つ展開に持ち込めなかった。
小泉も「相手から想定以上のプレッシャーを受けて修正できず、ズルズルいってしまった」と敗戦の体感を口にした。
分析はできていた。相手ディフェンスは上がってこない。ラインスピードをはやくしよう。そのイメージはFBとしてもやれた。
防御面については、フィジカルの強さを前面に出してくる相手を前で止められず、外を走られたことを悔やんだ。
ディフェンスについては「自分たちのスタイルを遂行できなかった」と悔やむ。
ただ、表情は沈んでいない。チームの向いている方向が正しいと感じているからだ。
日頃のトレーニングからハードワークがチームカルチャーとなっている。高めたフィットネスが攻守の土台となっている。
前ブレイブルーパス、カンタベリー代表(NZ)の指導経験もあるジョー・マドック アシスタントコーチが今季から加わった影響も大きいと感じている。
同コーチの指導のもと、「それぞれの選手のやるべきことが明確になった」と話す。その浸透度が試合を重ねるごとに深まっている。
小手先のプレーは求めない。ラグビーの本質を追求するコーチングと感じている。
ボールを持ったらハードに。相手の脅威になるように走らないと。シンプルな言葉で大事なことを伝える。
「それを試合で実践して、改善し、解釈を深めている」と小泉は話す。
ダイナボアーズに入って成長する自分を感じている。
「ディフェンス面もレベルアップできています。チームとしても強みにしているところですし。こういう状況のときはこうするとかノウハウを理解し、引き出しが増えました」
積み上げてきたフィットネスは、シーズン終盤にチームを支えるものとなるだろう。
昨季は開幕からの5戦を3勝1敗1引き分けと好スタートを切ったものの、最終的には4勝に終わり、10位だった。
今季こそは、春の訪れとともにさらに上昇する曲線を描きたい。