国内 2024.03.06

【連載】プロクラブのすすめ⑮ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] プロスポーツクラブの組織づくりとは。

[ 明石尚之 ]
【連載】プロクラブのすすめ⑮ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] プロスポーツクラブの組織づくりとは。
撮影:松本かおり

 日本ラグビー界初のプロクラブとしてスタートを切った、静岡ブルーレヴズの運営面、経営面の仕掛け、ひいてはリーグワンについて、山谷拓志社長に解説してもらう連載企画。

 15回目となる今回は、プロスポーツクラブの組織づくりについて語ってもらった。(取材日2月29日)

◆過去の連載記事はこちら

――今回は「プロスポーツクラブの組織づくり」をテーマに伺います。いわゆる一般企業とプロスポーツクラブの経営の違いは。

 スポーツビジネスは商材の種類や価格が多岐にわたり、ステークホルダーも多いので、柔軟な発想や対応力が求められます。それは他のビジネスとは違う部分なのかなと思います。
 一般的な企業ももちろん大変ですが、スポーツビジネスは原材料を仕入れ、モノを作って売るというようなシンプルなビジネスモデルではない。

 法人を相手にする高額な商材を扱うスポンサーセールスもあれば、個人(ファン)を相手にしたチケットセールスやグッズ販売もある。
 スポンサーセールスであれば、形として目に見えないモノ(広告)を何百万、何千万円で買ってくださいという企画提案力が問われるし、年に1度しか商談のチャンスがない中でお客さんとの関係をじっくり築きます。
 一方でチケットやグッズは、何百円、何千円のモノを目の前の人にできる限り買ってもらわないといけない。

 陸上の十種競技のような感じで、職種によって使う筋肉が全然違うんですよね。しかも、試合の勝ち負けや選手のケガ、試合時の天候などはコントロールできない。非常に品質が不安定です。そこに対峙していく取り組みや姿勢が大事になります。

――レヴズの経営者として3季目を迎えた、山谷さんご自身の評価を。

 正直、壁に当たっているというのが率直な心境です。というのも、ブルーレヴズに来る前にバスケのチーム(の社長)を2つやってきましたが、いずれも事業スタッフは30人未満の組織でした。
 しかも、チームをゼロから作るフェーズだったので、自分でガンガンやっていくスタイルでした。人数が少ないのでそうするしかない、ということもありました。つくばロボッツ(現・茨城ロボッツ)の初期には5人程度で回していましたから、試合の運営はもちろん、自分でマイクを持ってアナウンスしたこともあります。なので、妙に現場の細かいところまで目がいってしまって。
 社員は嫌がるかなと思いつつも、質を上げるため、ファンの皆さんのためにと、こうやった方がいい、こうやるべきと指摘してきました。それでも立ち上げの社長ということもあり、みんな付いてきてくれていたんですよね。

 ただブルーレヴズは、チーム自体は前からあったわけですし、ヤマハの社員だった方々が出向してきたり、僕が加わる前から立ち上げに関わってきたメンバーもいます。しかもはじめ社員は15人くらいでしたが、いまは30人を超え35人にまでなる勢いです。細かいところまで目を配ってきたこれまでのスタイルでは、逆にみんなのモチベーションを下げてしまっていると、この1年痛感しました。
 自分がこうだと思っても、任せるところは任せようと。社員のモチベーションは本当に高いですから、そこを信頼する。いまは自分の下にいるマネジャー(各部門のリーダー・管理職)までで完結するように伝えることも多いです。細かいところまでやってきた身としては、一抹の寂しさもあるのですが…(笑)。

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