各国代表 2024.02.21

イタリア代表SOパオロ・ガルビシ、モンペリエからトゥーロンへ移籍。

[ 福本美由紀 ]
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イタリア代表SOパオロ・ガルビシ、モンペリエからトゥーロンへ移籍。
イタリア代表キャップ33。今季トップ14のモンペリエの試合にも9試合出場していた。(Getty Images)



 先週末(2月17-18日)、シックスネーションズはお休みだった。
 代表チームから保護選手に指名されている19人のフランス代表選手以外は、それぞれの所属クラブに帰り、トップ14の試合に出場していた。
 1週間前にスコットランド戦で後半出場したPRセバスチャン・タオフィフェヌアはリヨンで58分、LOポソロ・トゥイランギはペルピニャンで80分プレーした。

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 他国の代表選手も例外ではない。
 スコットランド代表のSHベン・ホワイトはトゥーロンで67分、イタリア代表のFBアンジュ・カプオッゾもトゥールーズで80分プレーして、今週は再び代表チームに合流する。
 タフなスケジュールだ。

 イタリア代表SOパオロ・ガルビシ(23歳、33キャップ)も過去2年そうしてきたように、今年もモンペリエに帰ってプレーするはずだった。
 ところが先週木曜日に、彼のトゥーロンへの移籍が発表された。

 負傷のため長期離脱を余儀なくされた選手の補充要員としてのメディカルジョーカーではなく、契約を終了せずに、しかもシーズン中の移籍はフランス代表FBメルヴィン・ジャミネのトゥールーズからトゥーロンへの移籍に続いて今季2件目だ。
 しかもガルビシは今季もモンペリエで連戦していた。

 ジャミネの場合は、トゥールーズでも同じフランス代表FBトマ・ラモスに押され、思うようにプレー時間が得られず、生まれ育ったトゥーロンに帰って再出発したいという本人の希望が尊重された移籍だった。

 一方、ガルビシの場合はそうではなかったようだ。

「チームメイトやサポーター、またクラブで働いている人たちとの人間関係をここで築いてきたから、モンペリエを去るのは寂しかった。ちょっと混乱もしているけど、トゥーロンのようなクラブに加入できて嬉しくもある」と『レキップ』のインタビューに答えている。

 移籍に至った理由については、「HOトル・ラトゥーが(メディカルジョーカーとして)ラ・ロシェルに行ってしまい、モンペリエはHOを必要としていた。またクラブは『non-JIFF』(フランス養成機関出身選手以外の選手)の人数を減らさなくてはならなかった。だから今回のトレードになった」と答えている。

 ガルビシの移籍が発表される4日前に、トゥーロンのHOクリストファー・トロフアのモンペリエへの移籍が発表されていた。HOとSOのトレードだ。トロフアとトゥーロンとの契約は今季末までだった。JIFFのHOが必要なモンペリエは、トロフアに来季から3年契約の話を持ちかけた。トゥーロンもHOに負傷者が出ており余裕はない。今季終了まではと引き留めたが、「トゥーロンからは契約延長の話は出てこなかった」とシーズン終了前に移籍することを選んだ。トゥーロンも最終的にトロフアの意思を尊重した。

 でもガルビシはモンペリエを去りたくなかった。
「シーズンの途中で移籍したくはなかった。特に今季のクラブの厳しい状況では。クラブがトップ14に残留できるよう貢献したかった。2022年のトップ14での優勝も素晴らしい思い出だが、このクラブは僕という人間にとってとても大切なもの。初めて親元を離れ、ここに来て素晴らしい経験をした。でも、プロスポーツの世界では物事が一気に動くこともある」

 モンペリエは、開幕戦でラ・ロシェルに勝利した後、11月18日の第7節まで6連敗で最下位、降格の危機に面していた。そこでモンペリエのモヘッド・アルトラッド会長は、元フランス協会会長のベルナール・ラポルト氏をディレクター・オブ・ラグビーに迎えた。

 ラポルト氏は2022年12月に汚職の罪で有罪判決(執行猶予付き懲役2年、罰金75,000ユーロ、2年間ラグビーに関わる職務に就くことを禁ずる)が下され、フランス協会会長の職を辞任に追い込まれたが、現在控訴中で処分は保留となっている。

 またラポルト氏に賄賂を贈ったとされ、アルトラッド会長も有罪判決(執行猶予付き懲役18か月、罰金5万ユーロ、2年間会社経営に携わることを禁止)を受けたが、こちらも控訴中だ。

 ラポルト氏はトゥーロンでHCとして銀河系軍団を率い(2011-2016)、チャンピオンズカップで?3連覇を達成し(2013、2014、2015)、トップ14でも1度優勝(2014)している。
 またフランス代表HCを2期務め(1999-2007)、シックスネーションズで4度優勝(2002、2004、2006、2007)、参加した2度のワールドカップでは4位にチームを導いた経歴を持っている剛腕コーチとしても知られている。

 ラポルト氏がモンペリエのディレクター・オブ・ラグビーに就任したことで、それまでその職にあったフィリップ・サンタンドレ氏はチームを離れ、今季からモンペリエのヘッドコーチ(以下、HC)に就任していたリチャード・コカリルは解任された。
 また、2020年からBKコーチを務めていたジャン=バティスト・エリサルドも職を解かれた。

 2021年にガルビシが契約した時のコーチがいなくなってしまった。

 しかもモンペリエは『JIFF(フランスのプロクラブの養成機関出身選手)規定』の問題も抱えていた。トップ14では、シーズンを終了時にマッチシートに登録された23人の選手のうち、フランスのプロクラブの養成機関出身選手が平均16人以上になっていなくてはならない。
 規定を満たしていなければ、126500ユーロ(約2千万円)の罰金と、翌シーズンの勝ち点から6ポイント以上の減点という厳しいペナルティーが課される。

 モンペリエにはJIFFのSOの選手が2人いる。JIFFのHOが得られるのならJIFFではないSOを放出しても問題ない。
 トゥーロンにとっては、SOダン・ビガーやCTBワイセア・ナヤザレヴらの負傷もあり、どちらのポジションもカバーできるガルビシは好都合であった。

「クラブから直接、移籍しろとも残れとも言われていない。トゥーロンが僕に関心を示していると聞いた時も、『どうしたい?』と誰からも聞かれなかった。だからどのように話が進んだのかわからない。少し寂しかった。モンペリエの経営陣にも理由があったのだと思うから腹を立てているわけではないが、僕は契約が終わるまでここにいるつもりだった」というガルビシの言葉に、状況を受け入れつつも戸惑いが隠せない様子が窺える。

 新しい契約書にサインする前にトゥーロンのピエール・ミニョニHCと話し合った。イタリア人のアタックコーチからも電話があった。
 そして今年からトゥーロンでラインアウトコーチをしているイタリアのレジェンド、セルジオ・パリッセからも電話があり、トゥーロンについて色々な話を聞けた。

「クラブに他にもイタリア人がいるのは嬉しいね。シーズン途中での加入で、さらにダン・ビガーやエンゾ・エルヴェという2人の素晴らしいSOがいて難しいのはわかっているけど、この新しいチャレンジでパフォーマンスを立て直し、しっかりメンバーに定着したい。早く新しいチームメイトと練習がしたい。でも今はシックスネーションズがあるから難しいけどね。イタリアにとって、とても大切な大会だから」

 今週末、イタリアはフランスと対戦する。W杯では60-7で大敗した。

「今回はワンサイドゲームにならないようにしたい。前節のアイルランド戦のように15分で試合から出てしまうのではなく、もう少しフランスを追い込んで、もう少し長い時間点差を抑えることができればいいなと思う。フランスには各ポジションにとても才能のある選手がいるから勝つなんて言えない」

 フランスも先のアイルランド戦、スコットランド戦で思うようなプレーはできていない。このイタリア戦ですっきり勝って自信を取り戻したいところだ。
 さて、どんな試合になるのだろうか。

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